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東京地方裁判所 昭和42年(特わ)404号 判決 1970年7月18日

本店所在地

東京都台東区下谷三丁目四番四号

三輝工業株式会社

右代表者代表取締役

木村和雄

本籍

東京都台東区下谷三丁目八番地

住居

同都台東区下谷三丁目四番四号

会社役員

木村和雄

昭和二年一月九日生

右の者らに対する法人税法違反事件につき、当裁判所は、検察官屋敷哲郎・弁護人宮本佐文、千葉保男出席の上審理して、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金八〇〇万円に

被告人木村を懲役四月に

各処する。

被告人木村に対し、この裁判確定の日から二年間右

刑の執行を猶予する

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、東京都文京区下谷三丁目四番四号に本店を置き、パツキングの製造及び販売等を営業目的とする資本金三〇万円の株式会社であり、被告人木村和雄は、被告会社の常務取締役名下に実質上同会社を経営しその業務全般を統轄しているものであるが、被告人木村は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の除外、架空仕入の計上等により簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ

第一、昭和三八年八月一日から昭和三九年七月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が三二、四四四、八五〇円であり、これに対する法人税額が一二、一七八、七〇〇円であつたのにかかわらず、昭和三九年九月三〇日東京都文京区本郷五丁目一八番三号所在の所轄本郷税務署において、同税務署長に対し、所得金額は四一一、一四八円であり、これに対する法人税額は一三五、六六〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一二、〇四三、〇四〇円を免れ

第二、昭和三九年八月一日から昭和四〇年七月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二四、〇五四、七〇三円であり、これに対する法人税額が八、七一九、九〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四〇年九月三〇日前記本郷税務署において、同税務署長に対し、所得金額は一一八、七五二円であり、これに対する法人税額は三六、七九〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額八、六八三、一一〇円を免れ

第三、昭和四〇年八月一日から昭和四一年七月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二七、二九七、二五一円であり、これに対する法人税額が九、六三〇、〇〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四一年九月三〇日前記本郷税務署において、同税務署長に対し、所得金額は二四〇、七四九円であり、これに対する法人税額は六九、一三〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額九、五六〇、八七〇円を免れ

たものである。

(逋脱所得金額の確定内容は、別表一、二、三の各修正貸借対照表の、税額計算については同四の税額計算書の各記載のとおりである。)

(証拠の標目)

略語例 四一・一〇・一八=昭和四〇年一〇月一八日

一、被告人の当公判廷における供述

一、証人榊原礼次、板谷健一、木村真地の当公判廷における各供述

一、乙の各号証(頭の数字は、検察官請求証拠目録の番号に対応)

(一)  次の被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書

1四一・一〇・一八付、2四一・一〇・二五付、3四一・一〇・二六付、4四一・一一・五付、5四一・一二・一付、6四二・五・九付、7四二・五・一二付

(二)  次の被告人の上申書

8四二・一二・一二付、9四二・五・一二付、10四二・八・二八付

(三)  被告人の提出書(11ないし17)七通

(四)  次の被告人の検察官に対する供述調書

18四二・八・一一付、19四二・八・一二付、20四二・八・一六付、21四二・八・二五付、22四二・八・二六付、23四二・九・八付、24四二・九・二一付

(五)  25、26、27の各登記簿謄本

一、甲一の各号証(頭の数字は、検察官請求証拠目録の請求番号に対応)

(一)  次の大蔵事務官横田光信作成の調査書

19三菱/日暮里の銀行調査書(以下29まで同様)、20三菱/浅草橋、21三菱/上野、22三菱/三の輪、23三菱/王子、24三菱/雷門、25三菱/竹町、26三菱/三崎町、27協和/鶯谷、28協和/上野、29協和/雷門、30定期預金利息明細書、31普通預金利息明細書、32法人税額計算書(三八・八~三九・七)、33同(三九・八~四〇・七)、34同(四〇・八~四一・七)

(二)  次の各人の大蔵事務官に対する質問てん末書

35木村真地、36木村佳孜、37中島田鶴子、38島村富、39島村惣吉、40多田実治、41鈴木忠三郎、42榊原礼次、43木村真地(四一・一一・一八付)、44多田実治(四二・五・九付)、45益山太郎

(三)  次の各人の上申書

46中村常吉、井上一郎、伊藤光彦、山岡邦雄、50大塚忠男、51我山惇、52多田実治、53千村正博、54井上一郎、58小池平七、59平川武敏、60高橋信、61松山実鈴、79酒巻政実

(四)  次の各人の回答書

55橋本頴一、56武井巳千代、57野手幸雄

(五)  次の各人の検察官に対する供述調書

木村真地四通(62四二・八・二九付、63四二・九・五付、64同日付、65四二・九・一九付)66中島田鶴子、67谷古字二美江、68多田実治、69島村惣吉、70島村富、71木村佳孜、72榊原礼次、73吉川貞夫、74の1益山太郎、74の2菊地実

(六)  75ないし78の現金等現在高検査てん末書四通

一、弁の各号証(頭の数字は、弁護人請求書番号に対応)

9 板谷健一の株式売買メモ

19 固定資産評価証明書

45 協和銀行/鶯谷の残高証明書

53 木村和雄の領収証

54の1 板谷健一の総括表

54の2 同人の株式売却分内訳表

55の3 同人の受領配当金一覧表

54の4 同人の信用取引損益清算金一覧表

55 山丸証券株式会社の信用損益其他差引計算書

75 仮差押決定正本

88 裁判所書記官補の決定正本

89 千葉保男及び東京法務局供託官の証明申請書及び証明書

90 右同人らの証明申請書及び証明書

一、押収してある次の証拠物件(いずれも当庁昭和四三年押第四二〇号、番号はその符号番号に対応)

1、2、3 総勘定元帳各一綴

4、5、6 金銭出納帳各一綴

7ないし12 買掛帳各一綴

13、14 手形受払帳各一綴

15 決算書綴一綴

16 各社不渡債務関係書類綴一綴

17、18、19 総勘定元帳各一綴

20ないし23 別口売上帳各一綴

24 銀行関係メモ帳一冊

25 定期預金メモ(三枚)一袋

26ないし40 代金取立手形通帳各一冊

41 普通預金通帳一冊

41 普通預金通帳一冊

42 領収証等一袋

43 会社個人別資産明細(メモ八枚)一袋

44 一人別徴収簿一綴

45 給与源泉徴収簿等一綴

51 建築関係請求書等一袋

52、53 手帳各一冊

55 土地売買契約書等一綴

56 山沢正吉御願書等一綴

57 金銭消費貸借公正証書一綴

58 決算資料一袋

59、60 メモ書、空封筒各一枚

62 手帳一冊

63、64 領収証綴各一綴

70 金銭貸借メモ一綴

71ないし75 決算資料綴各一綴

76 債務関係預金名寄帳(三枚)一袋

77 得意先カード(一一枚)一袋

78、79、80 手帳各一冊

81 多田実治に対する手形割引明細一綴

82 不動産売渡証写一綴

83 登記済権利書写等一袋

84、85 登記済権利証写各一袋

86 売渡証書写等一袋

87 定期預金メモ一綴

88 普通預金メモ一枚

89、90、91 法人税申告書原本各一綴

92 買掛金帳一綴

93、94 売掛帳各一綴

95 当座、受取手形、支払手形記入帳一綴

96 別口売上帳一綴

97 信用損益差引計算書一綴

98 株式売買及増資一覧表一綴

99 株式手持高表一綴

100 定期預金名寄帳一綴

101 頭取名定期預金控帳一綴

102 定期預金増減日報綴一綴

103 ノートブツク(領収証含む)一冊

104 王子重工業株式会社新株式申込証拠金領収証一枚

105 株式売買メモ一綴

(免訴の裁判を求める主張について)

弁護人は、「被告会社に対しては、判示各年度の法人税の賦課及び加算税の賦課決定処分として、所轄本郷税務署より重加算税が科せられたが、重加算税はその実質において刑事上の処罰であり、従つて被告会社は本件公訴事実について既に確定判決に準ずる処分を経たものであるから、憲法三九条後段を適用又は準用並びに刑訴法三三七条一号を準用し、被告会社及び被告人木村に対し免訴の判決を言渡すべきである。」旨主張する。

しかしながら重加算税(国税通則法六八条)の賦課は、過少申告、不申告による納税義務違反の発生を防止し、以つて納税の実をあげんとする趣旨に出た行政上の処分であつて、憲法三九条にいう「刑事上の責任」を問うものではなく、その目的、手続、法的効果において刑罰たる罰金刑とは異質のものである。従つて右処分の確定は、刑訴法三三七条一号の確定判決に準ずるようなものではない。弁護人の所論は、重加算税も罰金もともに納税義務者に対する財産上の負担を科する点において似たところがある点をとらえて両者を同質のものに論じようとしているのであつて、採用できないものである。

(争点についての判断)

略語例

三八・七・三〇=昭和三八年七月三〇日

一九五三・七・一五=一九五三年七月一五日

協和銀行/上野=協和銀行上野支店

検察官主張の逋脱所得の内容中、当裁判所において修正した部分及び金額は、別表五ないし九の逋脱所得の内容の修正表記載のとおりである。以下に各勘定科目についての争点とこれに対する当裁判所の判断を示す。

第一、常務勘定を除く各勘定科目について

一、現金

(一) 弁護人の主張

次の過年度分を認容すべきである。

(1) 昭和三八年七月過年度簿外売上金受領二九、五〇〇円

(2) 簿外売掛金の現金入金分

入金日

入金先

金額

三八・七・三〇

太田工機

九、五〇〇円

三八・七・三〇

寺田(興国農機)

二〇、〇〇〇円

(二) 当裁判所の判断

(1) は認容できる。

検察官の主張額現金過年度九八〇、〇〇〇円は昭和三八年七月三〇、三一日の簿外普通預金の出入金差額によつて、期末の簿外現金在高を推計(三八・七・三一現在の出金総額一、七九〇、〇〇〇円と入金額八一〇、〇〇〇円との差額)しているが、この方法を貫くと、期末に受取つた簿外売上、売掛金の受領分が完全に把握されない(次表参照)。

簿外現金出納帳

<省略>

右表の簿外売上金受領分を認容、加算すべきである。

(2) の各金額は認容できる。

太田工機分は、符21号の記載と甲一62乙1により(売上を落とす場合、売掛金の一部づつしかくれないような得意先の分は落さず、金額が小さいところとか、時々しか売上のないようなところを落す旨の供述記載)認められる。

寺田(興国農機)分は符21号により受入れが認められ、その代金二〇、〇〇〇円は(検察官主張のとおり)、東海銀行/上野の小切手により受領している。この小切手は甲一28によると協和銀行/上野普通預金木村商店(木村繁二郎)口座に三八・八・一二に入金(小七二五〇7/31振東海/上野二〇、〇〇〇寺田恵男)されたことが認められる。

二、売掛金

(一) 弁護人の主張

(1) 次の過年度分を認容すべきである。

順号2

石井工場(三八・七・一五分)

八、四〇〇円

順号4

サクラプラスチツク

六、九〇〇円

(内訳)

三八・三・五分

(三、四五〇円)

三八・六・一分

(三、四五〇円)

順号5

多賀城工業所

四、九二〇円

(内訳)

三八・七・九分

(一〇、六一〇円)

三八・六月まで残

(四、三一〇円)

順号7

東芝電設(三八・六・三〇分)

八八、〇〇〇円

順号13

高砂製作所

一二、一六〇円

(2) 以下の売掛金は、相手方の所在不明や民法一七三条の消滅時効にかかり、金額も少く、取立不能で事実上債権とは考えられぬ状態にある。

順号14

東京特殊金属(三七・一〇・八より)

六、一〇〇円

順号17

高橋農機

五〇〇円

順号18

国際オイル

六六〇円

順号19

水戸内燃

三〇〇円

順号20

関ヤ窯炉

五、〇四〇円

順号21

今野ゴム

二、一〇〇円

順号22

電精茂木

四二〇円

順号23

日本低周波

一二五円

(二) 当裁判所の判断

(1) 過年度分について

順号2石井工場分は認容できない。

符21号の該当部分の年度は、鉛筆で上部に「38」と年度がうすく書き込まれているが、次の経過をみると昭和三九年七月中の売上、入金とみられるから、本件所得計算には影響がない。すなわち、八、四〇〇円は七月一三日に小切手にて支払を受けたが、この小切手は甲一22によると、三菱銀行/三ノ輪預金山下茂夫名義口座に三九・七・一七入金(小石井〇六九九九 7 15振日相/三の輪(資)石井工場)されたことが認められ、このことは、前記小切手受領が昭和三九年度であつたことを優に推測せしめるものである。

順号4サクラプラスチツク分は認容できる。

符21号の記載によれば、年度は昭和三八年度と推測される。ところで九月一六日の相段の記載欄には、その金額、対当債権の記載がなく、また本件売上は、三月五日分と六月一日分であることから、七月三一日以前に入金されていたと認められないでもない。しかし、他方八月一七日分売上三、九〇〇円に対する受入三、九〇〇円は、九月一六日相殺分とみる余地があり(ペンの色が同じ)残高がなくなつているところをみると、少くとも六月一日より九月一六日までの間に決済されたとみることができ、それが入金によるものか相殺によるものか判然としない。いずれにせよ、弁護人主張は確実な証拠に基づくものではないが主張どおりである可能性も十分あるので、認容する。

順号5多賀城工業所分は認容する。 七月九日分一〇、六一〇円は、符21号によると受領年月日が不明であるが、多賀城からの売上代金の受領期日をみると、受領はおおむね売上の翌月の中旬になつていることが多い。記帳状況からみて、年度は昭和三八年であり、七月の翌月に受領したものと認められる。次に六月までの残四、三一〇円は値引確定日が不明であるが、記帳上、右一〇、六一〇円の入金時に残高が〇となつており、値引は入金時か、七月一三日から右入金時(八月と推定)の間に行われたものと推定されるので、被告会社に利益に解釈し、八月入金時と認定する。

順号7東芝電設分は認容する。

符21号の東芝電設の頁の記載状況からみて、右売上は、昭和三八年度になされたのであり、六月三〇日売上一八八、〇〇〇円を九月五日に受入れたが記帳のさい受入金額が一行ずれたものとみるべきである。

順号13高砂製作所分は認容する。

符22号記載の(一二・二八小切手一六・一四〇受領)は甲一22によれば、三菱銀行/三ノ輪普通預金口座山下茂夫名義口座に三八・一二・三〇入金(小W井〇九〇八四12/28振横浜/溝の口(株)高砂製作所一六、一四〇円)されたことが認められるから、弁護人主張の各売上残、売上は昭和三八年度に入金されたことが明らかである。

(2) 債権取立不能等について

順号14号東京特殊金属同17ないし23の雑口は認容しない。

これらは昭和三八年七月三一日現在に売掛金として存在していたことは認められるが、被告会社が当時これら債権の放棄、債務免除の意思を表示した事実はなく、又消滅時効を援用されたこともないばかりか、帳簿上貸倒れ処理をしていないので、当然には売掛金債権の消滅又は取立不能事由を認め得るものではない。

三、受取手形

(一) 弁護人の主張

次の過年度分を認容すべきである。

(1) 簿外売上にかかる分

振出人

受取年月日

満期

金額

順号12

東進商工

三八・六・三〇

三八・一一・三〇

三二、七〇〇円

順号15

横浜造船

三七・七・二二

三八・一二・一五

五九、五〇〇円

(2) 公表分の買掛金の支払を裏賃金で支払つた分(公表分支払手形の否認となり、負債額の減少とみられる分)

振出人

振出日

満期

金額

順号2

三輝工業

三八・五・一五

三八・八・一〇

五〇、〇〇〇円

順号3

三輝工業

三八・六・一五

三八・八・一五

一〇〇、〇〇〇円

(3) 公表分の売掛金の入金分を他へまわしたように処理し、かつその支払は裏資金でその受取手形は簿外資産とした分

振出人

受取年月日

期日

金額

順号4

山洋電機

三八・七・二六

三八・一一・二五

四〇、〇〇〇円

(二) 当裁判所の判断

(1) 簿外売上分

順号12東進商工分は認容する。

右手形は、甲一27によると協和銀行/坂本普通預金小野信三郎名義口座に三八・一二・二に入金(CK約手一一・三〇BKNO二四七―三東進商工(株))されたことが認められる。

順号15横浜造船分は認容できない。

符21号の(株)横浜造船所の口座をみると、被告会社は、昭和三八年七月二二日同社より売掛金代金の一部として金額五九、五〇〇円の約束手形を受領したことがうかがわれるが、銀行調査等を精査検討しても右の入金事実は認められず、また右手形金額相当額が本件逋脱所得に混入したと認めるに足りる資料はない。

(2) 公表分の買掛金の支払いを裏資金で支払つた分

順号2、3の各三輝工業振出分は、認容する。

右二通の約束手形は、被告会社の公表当座預金より簿外普通預金に入金されている。甲一27によれば次のとおり。

出金(公表分からの出金)

(被告会社の公表当座預金)協和銀行/坂本三輝工業

三八・八・一五CL三八・六・一五振 現振一〇〇、〇〇〇

約手 日新ゴム製作所 滝川雄次郎 (出金)

三八・八・一六C三八・五・一五振 現振 五〇、〇〇〇

約手 日新ゴム製作所 滝川雄次郎 (出金)

入金(右出金が簿外へ入金)

(被告会社の簿外普通預金)協和銀行/坂本海老原誠

三八・八・二二AT C入 現金入金 一万札

出伝に該当なし 一四〇、〇〇〇

〆后当店日新ゴム宛ヤ

現振一五万より (入金)

(3) 公表分の売掛金の入金を他へまわしたように処理した分

順号4山洋電機分は認容する。

右約束手形は、甲一27によると、協和銀行/坂本普通預金東京アスベストゴム工業(株)口座に三八・一一・二七に入金(A T C K11/25キ 住友/日比谷 山洋電気(株))されたことが認められる。

四、営業外受取手形

(一) 弁護人の主張

振出

受取年月日

満期

金額

順号2

進和製作所

三八・七・三〇

三八・一一・三〇

六五〇、〇〇〇円

順号1

旭海運

三八・三・三〇

三八・九・三〇

九〇〇、〇〇〇円

順号3

中国船用品

三八・六・二七

三八・一二・二七

二〇〇、〇〇〇円

順号4

日信海運

三八・六・一七

三八・一二・一七

二〇〇、〇〇〇円

順号5

日信海運

三八・六・一七

三八・一二・一七

三〇〇、〇〇〇円

(二) 当裁判所の判断

順号2進和製作所分は認容しない。

右手形は、多田実治の依頼により簿外で割引き、満期に三菱銀行/上野須賀善一名義の普通預金口座で取立てたものであるが(符21号)、右手形の振出日が不明である。甲一44、52、68により、期間は一二〇日ものと認められ、満期から逆算すると、昭和三八年八月二日が振出日とみるべきである。

順号1、3、4、5の各手形分は認容しない。

右手形四通は、暁商会の割引依頼で入手したこと、満期、金額は弁護人主張のとおりであることは、符52号の記載により認められるが、その入手月日は不明である。そして簿外預金の各銀行調査書を精査しても、右各手形を取立た形跡はなく、又符52号には手形の消し込み記載はないが、消込みのないことは、むしろ暁商会の依頼で支払期日前に右手形を返却したが、他の支払に充てたため被告会社で取立をしなかつたことを推測させるのである。いずれにせよ、手形の入手月日について弁護人主張の支えは、被告人の供述以外になく、右情況からみると反証が十分とはいえない。

五、有価証券

(一) 弁護人の主張

昭和三九年七月期過年度四〇〇、〇〇〇円、当期減四〇〇、〇〇〇円を認容すべきである。

被告会社は、王子重工業(株)の株式八〇〇株単価五〇〇円合計金額四〇〇、〇〇〇円を昭和三五年一月二七日島村惣吉名義で払込んだ。これを昭和三八年一一月一四日ころ、四〇〇、〇〇〇円で売却し、同日協和銀行/坂本島村惣吉口座へ入金した。

(検察官は、右金額は、常務勘定に計上すべきである、と主張する。)

(二) 当裁判所の判断

右主張金額は認容する。

甲一27等によれば、右事実関係が認められる。そして関係証拠によれば、被告人は、投資のため各銘柄株式を保有しているが、本件の王子重工業の株式は、被告人の投資株式と異り、被告会社の取引先であるという関係から取得するに至つたものであるから、これを常務勘定に加えるべきでない。

六、貸付金、仮払金について

(一) 弁護人の主義

次の各金額を認容すべきである。

(1) 貸付金

昭和三九年七月期過年度一三七、五〇〇円、昭和四〇年七月期減少一三七、五〇〇円

(内訳)辻忠商店こと橋本頴一に対する貸付金残高

三〇・八・一四不渡発生時貸付額一、三三三、〇〇〇円

三六・九・三〇迄元金八一三、〇〇〇円支弁

三六、一〇・一~三八・七・三一元金三八二、五〇〇円支弁

三八・七・三一現在の元金残高一三七、五〇〇円

三九・一〇・二〇右元金残高と利息(五〇、〇〇〇円)

合計一八七、五〇〇円完済

(2) 仮払金

昭和三九年七月期過年度三〇〇、〇〇〇円、当期減少三〇〇、〇〇〇円

(内訳)

債務者橋本頴一に対してなした仮差押申請の供託金(昭和三〇年八月三一日東京法務局(供託)三〇〇、〇〇〇円を昭和三八年一一月ころ相手方の同意を得て還付された。

(二) 当裁判所の判断

(1)、(2)とも常務勘定で処理する。

関係証拠とくに弁75、89、90、符103によれば、右事実関係が認められるが、橋本頴一は、被告会社とは取引がなく、会社設立以前の被告人木村の学生時代から融資を受けていた関係(被告人の公判供述)にあり、被告会社との事実に関連ある貸付金、仮払金とは認められない。これらは、被告人木村が返済を受けたとき、常務勘定の貸方に計上すべきものである。

七、前受割引料

(一)  弁護人の主張

簿外営業外受取手形の割引料に関し、検察官主張の計算は、その利率、日数などを関係者の供述のみに基づいているものと考えられる。従つて未経過分について合理的な立証とはいえない。

(二)  当裁判所の判断

検察官主張の金額は認定できる。弁護人は、その供述証拠に基づくことのみをもつて算定が不合理であると論難するのみであるが、前受割引料の計算の

元金×利率(日歩)×未経過日数=前受割引料

の算式のうち、日数は銀行調査書(入金年月日)により確定でき、利率の点は甲一44、52、68、乙7(被告人の(大)四二・五・一二付)、20(四二・八・一六付(検))、21(四二・八・二五付(検))により十分認定できる。

八、簿外交際費(限度額超過)

(一)  検察官の主張

各期とも簿外交際費は二、五〇〇、〇〇〇円を認定すべきであり、公表交際費との合算額につき交際費限度額超過分を否認すべきである。(交際費損金不算入額、第一年度四〇九、〇一一円、第二年度七四、三二七円、第三年度一一三、八六五円)

(二)  当裁判所の判断

簿外交際費認定の根拠は、被告人の供述のみ(乙1、2、24)であり、右供述記載によれば、各期とも

イ 得意先紹介謝礼 年間 三〇〇、〇〇〇円

ロ 得意先中元歳暮 四〇〇、〇〇〇円

ハ 得意先リベート 一、八〇〇、〇〇〇円

年間合計 二、五〇〇、〇〇〇円

という止まり、その具体的な内容は明らかにされず、各期とも一率にこれを認定することも公表交際費の金額と考えあわせると不自然である。本件は、財産法立証による事案であり、右供述証拠を基にするかぎり交際費限度額を超過するが、限度額超過分は資産科目を構成するところ、右のような証拠のみでこれを認定することは困難である。従つて交際費損金不算入額はすべて認定しない。

第二常務勘定について

別表一〇ないし一三記載のとおりであり、以下に争点について補促説明する。

一、当初の個人資産

(一)  双方の主張

検察官は、「被告人木村の結婚当時の個人預金は六、〇〇〇、〇〇〇円である。」と主張し、確定資料として、乙1、18、甲一62をあげ、決算資料(符58号)は信用性がないと主張する。

弁護人は「当初の個人資産は七、八七五、二〇九円である。」と主張し、確定資料として符58号をあげる。

(二)  当裁判所の判断

(1) 認定資料について

検察官提出の各証拠は、事業内容、資産状態を把握していると思われる被告人及びその妻木村真地の任意になされた供述証拠であり、他に採るべき資料がない場合は、これをもつて認定資料とすることができるものであるが、その供述内容は概括的でかつ古い記憶に基づくものである。これに対し、弁護人提出の符58号決算資料は、被告人の公判供述とあわせ考察すれば、本件における個人資産の認定資料として、より価値あるものと考えられるが、その内容を個々に検討し、不当な数値を除いて個人財産の金額を確定する。

右決算資料の三枚目のメモ(決算資料メモ)は、被告人が個人財産調べをした内容を記載したものであり、その中央ならびに右側の記載部分は、一九五三年七月一五日に財産調べをしたときに記載したものであると認められる。この事項中一部分の記載を除き一桁切下げて記載しているかどうかを検討するに、右メモ下方右側に5.325.106.50と記載されている数字は、その一行上の左側の534.175.65を一桁多くして5.341.786.50と読みかえた上、その右の16.680の金額を差引きした額と思われること、右メモの各金額を一桁多くして読みかえていてもそれが当時の金額として不当に多額となることもないこと、の諸点と被告人の公判供述に照らして一桁切下げた金額を記載したものと考えられる。

(2) 決算資料メモの内容の検討(別表一四)

決算資料メモは右に述べたごとく、一応信用できるが、個別の内容についてはなお問題があるので以下に検討する。

(イ) 一九五三・七・一五の中央部分の記載中、浜津氏の投資貸付金、受取手形が短時間のうちに増加しているが(検察官は、これを不自然な増加であると指摘する。)事業の流れ、増加の金額、一九五二・一一・九現在の受取手形が一、四八〇、〇〇〇円に達すること等から考えて、右増加は不自然なものとは断定できない。

(ロ) 一九五二・一一・九現在の在庫、仮払金、運搬車両、電話加入権、機械(別表一四認定表該当欄)が、一九五三・七・一五現在の在高として、そのまま計上できるか、につき検討するに、自転車、電話、機械はそのまま存在したものとみるべく、在庫一般材料については多少の増減があるものと推察されるが、円滑に操業するためには、一定の在庫量を保有するのが普通であるとも考えられるので、他に特段の事情のない限り、同金額相当分が存在したものとみなければならない。しかし仮払一二、五〇〇円については、かような仮払金(前渡金、立替金)等が通常短期間に決済される性質の債権であるところから、一九五三・七・一五現在までそのまま存続するかどうか甚だ疑わしく、右決算資料一九五三分メモに記載がない限り、存在したものとは認め難い。

(ハ) 買掛金について、一九五三・七・一五現在の金額の記載がないが、同日現在それが存する以上、何らかの推計によらざるを得ず、そこで一九五二・一一・九現在の資産内容と一九五三・七・一五現在のそれとが甚しく異らないから、前者の資産比率(<省略>)〇・〇二九七を算出し、これを後者の資産合計額を乗じた額を買掛金と推定することは妥当である。

(ニ) 右決算資料には、買掛金以外のその他の負債科目(借入金、支払手形、未払金等)がないが、被告人は事業方針として自ら資金の融資を受けていなかつたと思われるから、その他の負債科目がなくても不自然ではない。

(ホ) 決算資料メモ右側記載の一九五三・六・二一~同年七・一五の売掛金、貸付金、受取手形合計一、三七八、九三九円(これを仮りに修正記載と呼ぶ。)を加えるべき(弁護人の主張)かについては、次の理由により消極に解する。すなわち、右修正記載分を増加額とみるならば、僅か一か月足らずのうちに一三七万円余りの資産増となることになり、これを一九五二・一一・九現在の資産合計五、三二五、一〇六円、一九五五・一・四現在の資産合計九、〇一五、一七〇円の増加状況と対比すると異常に高額ということができる。次に、右修正記載を新たに発生した資産増加分だとするなら、これにともない必然的に予想されるはずの資産減少金額の記載がなく、個別に金額を検討してみても修正記載分が含まれているとは考えられない。もし売掛金を六月二一日以後新たに発生したものと解するなら、材料の減少、買掛金の増加が予想されるし、貸付金の新たな発生は、現金、預金、売掛金(売掛金回収分を貸付に廻した場合)の減少をともなうであろうし、受取手形の新たな発生は、売掛金の減少をともなうこと等が考えられるはずである。右修正記載分は極めて短期間のうちにかかる増加があつたものとは考えられず、その増加、減少の双方が表現されているとも思われないから、この部分をも認定の根拠とすべしとする弁護人の所論は、他に反証のない限り採用できない。

(ヘ) 被告会社設立時に個人資産がどのように被告会社に受継がれたかを検討するに、被告会社の資本金は三〇万円の少額であり事業を円滑にすすめるためには、当然個人預金、売掛金、受取手形、機械等の持込みがあつたものと考えざるを得ない。しかし第一期中間ならびに確定決算書の財産目録(符15号)によれば、電話加入権、自転車はこれに記載がなく、従つて個人から被告会社に引継がれたものとは認められない。従つてこの分は常務勘定の貸方に計上すべきでないことになる。

(3) 結論

以上のとおりで別表一四記載のとおり決算資料メモによつて、当時の資産の在高を確定し、常務勘定の貸方に計上するが、この数額は、被告人及び妻真地の前掲供述証拠による六、〇〇〇、〇〇〇円に近似し、妥当というべきである。

二、株式売買益、信用取引益

(一)  弁護人の主張

次の金額を常務勘定の貸方に計上すべきである。

年度 株式売買益 信用取引益

自三三・八・一~至三八・七・一 二、九一七、五〇〇円 一五二、九〇〇円

(二)  当裁判所の判断

符43、58号によつて被告人の株式保有状況の推移をみるに、

三〇・一二・三一現在 一、〇八一、五五〇円

三一・一二・三一現在 一、三〇〇、〇〇〇円

三二・一二・三一現在 二、三五〇、〇〇〇円

三五・一二・三一現在 二三、六四三、〇〇〇円

三六・一二・三一現在 二六、三〇〇、〇〇〇円

三七・一二・三一現在 二五、九六五、三二〇円

三八・一二・三一現在 二三、八二〇、六七〇円

となる。

この保有株式の金額が取得価額で記載されているのが時価で記載されているかははつきりしないけれども、保有株式金額の飛躍的な増加は、株価の値上りによつて生じたものではなく、保有株式数の買増しによる増加とみるのが相当である。しからば、この保有株式数の買増し資金の源泉はどこにあるのかについて検討するに、弁護人主張のような株式売買益等をもつてその一部を充当したということも考えられるが、買増し前の株式保有状況から推察すると、その全部をまかなうことはとうていできないものと考えられ、その不足分は結局被告会社の簿外預金から支払われたものと認めざるを得ない。従つて弁護人主張のように、昭和三三年八月一日から昭和三七年七月三一日までの株式売買益ならびに信用取引益は、常務勘定の貸方に計上する余地がないというべきである。

三、不動産の取得費

弁護人は、名不動産取得費につき、認定資料が被告人及び妻真地の供述証拠のみであり、客観性に欠ける、と主張するが、これらの供述証拠(甲一63、乙2、3、5、18、21)は、信用性があり、特段の反証のないかぎり、右証拠によつて認定できる。

四、家族預金増

(一)  弁護人の主張

家族預金増分は、家族の正当な収入からの貯蓄である場合との正当な区別が明確でないし、家族名義の預金の増加と被告会社の簿外預金の関連性が明確でないから、これを除外すべきである。

(二)  当裁判所の判断

(イ)関係証拠により、被告人の収入(給料・賃料収入)と家族構成(家族七名)を検討してみても、収入は生活費をまかなうのが一杯であると思われる。従つて家族預金増分は、会社の簿外預金から出たものと認めるのが相当であり(ロ)検察官主張の常務勘定の借方計上額(当裁判所認容)は、甲一19、27によつて認定される家族名義の預金増加額より少いのである(別表一五)。よつて弁護人の主張は採用しない。

五、受取配当金

(一)  弁護人の主張

次の受取配当金を常務勘定の貸方に計上すべきである。

(1)  自三六・八・一至三八・七・三一 二、三七七、一〇一円

(2)  自三八・八・一至三九・七・三一 一、二二六、五三五円

(3)  自三九・八・一至四〇・七・三一 一、五一〇、七七一円

(4)  自四〇・八・一至四一・七・三一 一、二四四、九九六円

(二) 当裁判所の判断

当裁判所は、次の認定の方法による。まず各期の受取配当金については、弁54の1ないし3(認定資料として、特段の事情の認められない限り信用すべきものである。)によつてその金額を確定し、同時にこれに対応する各期の株式取得代金、増資払込金、簿外預金除外分を甲一19、27、符98号によつて算定し、これを比較して常務勘定貸方に計上すべき受領配当金を算出する。なお、常務勘定貸方に計上する受取配当金については、手取額をもつて計上すべきものであるから、源泉徴収税額控除後の金額を計上する。

(1)の受取配当金は認容しない。

<1>  受入額 三、九七六、五〇一円

(内訳)

売却代金(自三六・八・一 至七・七・三一) 一、四四六、五〇〇円

信用取引益(同右) 一〇七、七二二円

信用取引益(自三七・八・一 至三八・七・三一) 四五、一七八円

受取配当金(自三六・八・一 至三七・七・三一) 一、二四七、七八八円

受取配当金(自三七・八・一 至三八・七・三一) 一、一二九、三一三円

<2>支払額 七、一六七、〇三八円

(内訳)

取得代金(売却分)(自三七・八・一 至三八・七・三一) 一、三三〇、〇〇〇円

取得代金(保有分)(自三六・八・一 至三七・七・三一) 一、一五三、五一四円

取得代金(保有分)(自三七・八・一 至三八・七・三一) 一、七八四、六七四円

増資払込額(自三六・八・一 至三七・七・三一) 二、〇七五、六五〇円

増資払込額(自三七・八・一 至三八・七・三一) 八二三、二〇〇円

<3>支払超過額 三、一九〇、五三七円

(内訳)

<1>-<2>=三、一九〇、五三七円

右のように支払超過であるから、受取配当金を常務勘定の貸方に計上する余地はない。

(2)の受領配当金は認容しない。

<1>受入額(受取配当金) 一、二二六、五三五円

<2>支払額 一、六七一、一七一円

(内訳)

簿外預金除外分

協和銀行/坂本谷口正男名義 七四、六一五円

右同 島村富子 二三、三八七円

右同 佐藤弥三郎 七、九九七円

右同 松山美鈴 七、九九七円

三菱銀行/日暮里長田清 一、二〇四、一七五円

増資払込額 三五三、〇〇〇円

<3>支払超過額 四四四、六三六円

(内訳)

<2>-<1>=四四四、六三六円

右のように支払超過であるから、受取配当金を常務勘定の貸方に計上する余地はない。

(3)の受取配当金は、一五四、四七九円の限度で認容する。

<1>受入額(受取配当金) 一、五一〇、七七一円

<2>支払額 一、二七五、六九二円

(内訳)

簿外預金除外分

協和銀行/坂本島村富子 三〇、九四〇円

右同 佐藤弥三郎 一〇、七三一円

右同 松山美鈴 一〇、七三一円

三菱銀行/日暮里長田清 八三、三八〇円

増資払込額 一、一三九、九一〇円

<3>受入超過額 一五四、四七九円

(内訳)

<1>の受入額より源泉徴収税額を控除した手取額から、

<2>の支払額を減算

手取配当金<1>-源泉徴収税額=手取額

<省略>

注 配当所得に対する源泉徴収税率(租税特別措置法9条)

昭和40年3月31日まで 5%

同年4月1日以後 10%

手取額-支払額<2>=受入超過額

1,430,171-1,275,692=154,479

右の受入超過額を常務勘定の貸方に計上する。

(4)の受取配当金は九七六、九二二円の限度で認容する。

<1>受入額(受取配当金) 一、二四四、九九六円

<2>支払額 一四三、五七五円

(内訳)

簿外預金除外分

協和銀行/坂本島村富子 一五、二六五円

右同 一五、八七一円

右同 五、二二七円

三菱銀行/日暮里長田清 一七、二一二円

増資払込額 九〇、〇〇〇円

<3>受入超過額 九七六、九二二円

(内訳)

<1>の受入額より源泉徴収税額を控除した手取額から<2>の支払額を減算

受取配当金<1>-源泉徴収税額(10%)=手取額

1,244,996-124,499=1,120,497

手取額-支払額<2>=受入超過額

1,120,497-143,575=976,922

右の受入超過額を常務勘定の貸方に計上する。

六、不動産賃貸料収入

(一) 双方の主張

弁護人は、「検察官が否認する不動産賃貸料収入(別表一六)は、その不動産の真所有者は被告人又は妻真地であり、その収入は個人所得であるから、常務勘定の貸方に計上すべきである。」と主張する。

検察官は、右主張に対し、「これらの賃貸料は架空のものであり、否認されなければならないし、自己所有の工場、事務所等の賃貸料は、別途公表に計上ずみでまた公表計上分のみでは不当に安いとも思われないから否認すべきである。」と反ばくする。

(二) 当裁判所の判断

弁護人主張金額を認容する(別表一六)。関係証拠によれば、知人名義等の各不動産の真所有者は、被告人又は妻真地であるものと認められるが、他人名義を用いたからといつてこれを架空賃貸料として否認すべきでないし、その賃貸料も、公表分だけでは、その建物の規模、坪数からみて必らずしも十分とはいいかねるし、否認分の賃貸料が不当に高いとも思われない。

本件のような場合、(イ)被告人及び妻は、他人名義で賃貸料の収入を得その所得税の申告をしていない点が認められるが、この問題は別として、弁護人主張のように実質上同人らの収入があつたものとして常務勘定の貸方に計上を認めること、(ロ)右賃貸料は他人名義で被告人及び妻が個人所得として所得税申告をしていないから、これを認容しないかわり、これら物件の取得金額については、認定賞与の基礎金額より控除することのいずれかによるべきであろうと思われる。(検察官主張のように、物件取得金額について認定賞与を計上し、賃貸料を否認するのは、公平を欠く取扱いである。)実質を重視し、かつ認定賞与を計上する立場から、(イ)の方式によるべきものとする。(なお本件の場合、(イ)の方式による法が、(ロ)の方式よりも常務勘定の貸方金額が多く、被告会社に有利である。)

七、認定賞与

常務勘定が借方残になるので、認定賞与を計上する。被告会社の業態、使途その他経済取引界における通念に照らし、被告会社の貸付けにおける通常取得すべき利率を年一割と認定する。

(法令の適用)

一、被告会社

第一事実につき昭和四〇年法律第三四号、法人税法附則一九条により改正前の法人税法四八条、五一条

第二、第三事実につき右改正法人税法一五九条、一六四条

併合罪加重につき刑法四八条二項

二、被告人木村

第一事実につき昭和四〇年法律第三四号法人税法附則一九条により改正前の法人税法四八条

第二、第三事実につき右改正法人税法一五九条

以上につき各懲役刑選択

併合罪加重につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条

刑の執行猶予につき刑法二五条一項

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 小島建彦)

別表一 修正貸借対照表

昭和39年7月31日

<省略>

<省略>

別表二 修正貸借対照表

三輝工業株式会社

昭和40年7月31日

<省略>

<省略>

別表三 修正貸借対照表

三輝工業株式会社

昭和41年7月31日

<省略>

<省略>

法人税計算書

昭和39年7月期

<省略>

昭和40年7月期

<省略>

昭和41年7月期

<省略>

別表五

脱所得の内容の修正表

昭和38年7月31日現在

<省略>

<省略>

別表六

脱所得の内容の修正表

昭和38年7月31日現在

<省略>

<省略>

別表七

脱所得の内容の修正表

昭和39年7月31日現在

<省略>

<省略>

別表八

脱所得の内容の修正表

昭和40年7月31日現在

<省略>

<省略>

別表九

脱所得の内容の修正表

昭和41年7月31日現在

<省略>

<省略>

別表一〇

常務勘定

自 昭27.12.15

至 昭38.7.31

<省略>

別表一一

常務勘定

自 昭38.8.1

至 昭39.7.31

<省略>

別表一二

常務勘定

自 昭39.8.1

至 昭40.7.31

<省略>

常務勘定

<省略>

別表一四

決算資料

<省略>

別表一五

家族預金増加額

<省略>

別表一六

不動産賃貸料収入

<省略>

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