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東京地方裁判所 昭和41年(行ウ)48号 判決 1970年2月13日

東京都中央区銀座西六丁目六番地の一

原告

鉄道工業株式会社

右代表者代表取締役

飯田清太

右訴訟代表人弁護士

秋山邦夫

真木光夫

東京都中央区新富町三丁目三番地

被告

京橋税務署長

津賀正二

右指定代理人

広瀬正

坂井正夫

横山茂治

長谷川謙二

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者双方の申立て

(原告)

一  被告が原告に対し昭和四〇年六月一八日付でなした昭和三八年五月一日から昭和三九年四月三〇日までの事業年度以降法人税青色申告書提出の承認を取り消す旨の処分を取り消す

訴訟費用は、被告の負担とする。

(被告)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

二 請求の原因

一  原告は、土木工事の請負を業とする会社であり、昭和二五年五月以降被告から青色申告書をもつて確定申告をすることの承認を得ていたものであるが、被告は、昭和四〇年六月一八日、原告に法人税法一二七条一項四号に該当する事由があるとして、昭和三八年五月一日から昭和三九年四月三〇日までの事案年度(以下「本件係争年度」という。)以降青色申告書提出の承認を取り消す旨の処分(以下「本件処分」という。)をなし、その項、これを原告に通知した。

二  そこで、原告は昭和四〇年七月五日、本件処分につき被告に対し「審査請求」と題する書面を提出したところ、東京国税局長は、昭和四一年二月二五日、原告の審査請求を棄却する旨の裁決をなし、同年三月四日、これを原告に通知した。

三  しかしながら、本件処分には、つぎのような違法がある。

1 原告は、昭和三六年五月一日から昭和三七年四月三〇日までの事業年度(以下「昭和三六年度」という。)以降本件係争年度までの各確定申告書についてその提出期限の延長の承認を受けるをなく毎年その提出期限までにこれを提出しなかつたのであるか、いずれも正当な理由がある。すなわち、昭和三八年三月九日、原告の主たる事務所の所在するビルデイングにおいて火災があり、原告の経理書類の一部が焼失したばかりか、その余の書類も殆んどがその際の消火水により汚染されたため確定申告に必要な書類の作成に多大の時間を要したので昭和三七年五月一日から昭和三八年四月三〇日までの事業年度(以下「昭和三七年度」という。)の確定申告書を提出期限内に提出することができなかつた。また、昭和三九年五月二四、五頃、原告の主たる事務所において盗難があり、原告の経理書類その他の書類が汚損、散乱又は破棄されて経理書類の再作成が必要となつたため、本件係争年度についても、提出期限までに確定申告を提出すすことができなかつた。

しかし原告は昭和四〇年三月二四日に昭和三七年度分の確定申告書を被告に提出し、しかも被告および東京国税局の係官にその  遅延の理由を説明したのであり、被告においてもこれを了解して右の確定申告書を受理したものである。

2 原告は、昭和三〇年四月一五日より会社更生法に基づく更生会社として更生計画を遂行してきたものであるが、この段階で青色申告書提出の承諾を取り消されることにより原告の蒙る損失は莫大であり、ひいては株主および更生債権者の利益を害すること甚しいものがある。これら原告、株主および更生債権者の失う利益と本件処分をなすことによつて得られる国案的利益とを比較衡量すれば、本件処分は権限の乱用であというべく、許されない。

四  よつて本件処分の取り消しを求める。

三  被告の答弁および主張

(答弁)

請求原因第一、二項の事異は認める。もつとも原告は、昭和四〇年七月一日、被告に対し「審査請求」を要する書面を提出したが、被告はこれを異議申立てとして受理したところ右異議申立ては、同年一〇月一五日国税適用法八〇条一項により審査請求とみなされたものである。同第三項の主張を争う。

(主張)

一  原告は昭和三八年度分の確定申告書をその提出期限である昭和三九年六月三〇日までに提出しなかつたものであつて、被告はこれを理由として法人税法一二七条一項四号に基づいて本件処分をしたものである。(なお、原告は昭和三六年度以隆本件係争年度まで確定申告書の提出期限の延長の承諾を受けることなく毎年その提出期限内に確定申告書を提出していない。)

二  仮に原告が本件係争年度分確定申告書の提出遅延の理由として主張するような事実があつたとしても、それはなんら本件処分をなすについての妨げとなるものではない。すなわち、災害その他やむ得ない理由により決算が確定しないため、申告書を提出することができないと認められる場合には、その提出期限の延長を申請することができる(法人税法七五条一項)のであり、原告は、同年六月一四日まで右申請することができないのである。しかるに原告はなんら正当の事由なくその申請をせす、しかも前記提出期限までに前記提出申請書を提出しなかつたものであるから、本件処分はもとより違法である。

第三証拠関係

(原告)

甲第一ないし三号証(ただしいずれも写)を提出、証人小田島与吉の証言を援用し、乙第一号証の成立は認める。

(被告)

乙第一号証を提出、証人出淵五郎の証言を援用し、甲号各証について原告の存在および成立はいずれも認める。

理由

一  原告は昭和二五年五月以降いわゆる青色申告の承認を受けた青色申告法人であつたところ、昭和三八年度(昭和三八年五月一日から昭和三九年四月三〇日まで)分の確定申告書をその提出期限(法人税法七四条一項の規定により事業年度終了の日の翌日から二月以内)までに提出しなかつたため被告において法人税法一二七条一項四号に基づき原告に対する本件処分をなしたことおよび原告が昭和三六年度以降昭和三八年度までの各確定申告書をその提出期限の延長を受けることなく毎年その提出期限までに提出しなかつたことは当事者間に争いがない。

二  法人税法一二七条一項によれば、青色申告の承認を受けた内国法人が確定申告書を提出期限までに提出しなかつた場合には、納税地の所轄税務署長は、当該事業年度までさかのぼつて、青色申告の承認を取り消すできるものとされており、右税務署長の権限の行使は、それが権限の濫用ないし逸脱にわたらない限り、適法のものと解するのが相当である。

ところで、本件において、各原本の存在および成立に争いのない甲第一ないし三号証と証人小田島与吉の証言によれば、昭和三八年三月九日未明、原告会社ビル六階に火災が発生しその水をかぶつて原者会社の書類が破損したこと、昭和三九年五月二四、五日頃に原告会社がロツカー破りの盗難にかかり、机の中がかき乱され、まとめた書類が散乱したことがそれぞれ認められるが、これらの事態は、いずれも決算の確定を不可能にしたり確定申告書の提出の遅滞を余義なくしたり、あるいは、法人税法七五条十項規定によつて認められている確定申告書提期限の延長の申請すらすることができない場合であるとは認められない。また原告が昭和三〇年四月より更生会社であつたことは当事者間に争いがなく、右当事者間に争いのない事実と証人小田島与吉の証言に弁解の全趣旨を綜合すると原告はその後会社更生法に基づき更生計画を遂行してきたものであることが認められ、本件処分により原告にその主張のような不利益が生ずるとしても、そのことのゆえに本件処分を権限の濫用ないし逸脱というのは当らない。

三  よつて、本件処分には原告主張のような違法はなく、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉本良吉 裁判官仙田富夫、同村上敬一は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 杉本良吉)

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