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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)6849号 判決 1972年4月06日

原告 国

訴訟代理人 大道友彦 ほか七名

被告 富田ミヨノ

主文

壱 被告は原告に対し別紙目録記載の建物を収去して同目録および図面記載の土地を明け渡せ。

弐 被告は原告に対し金百八万弐干五百弐拾九円および

うち四万四千七百五拾六円に対する昭和参拾九年四月壱日から

うち各参拾壱万壱干四百六拾八円に対する昭和四拾年および同四拾壱年の各四月壱日から

うち拾八万九千百拾九円に対する昭和四拾弐年四月壱日から

うち拾九万九千六百円に対する昭和四拾参年四月壱日から

各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

参 訴訟費用は被告の負担とする。

四 本判決は仮に執行することができる。

事  実 <省略>

理由

一  原告が本件土地の所有者であり、被告が昭和三五年三月二八日から本件土地上に本件建物を所有して本件土地を占有していることは争いがない。

二  被告主張のように本件土地のもと所有者池田浜から瀧沢潔、松平史秀、玉山末守、富田昌代、佐藤貴美江、被告と順次本件土地が賃貸、転貸および転借権譲渡されたか否かを検討する。

<証拠省略>によれば、玉山末守が富田昌代に、富田昌代および佐藤貴美江が被告に対しそれぞれ被告主張のように本件土地を含む土地につき賃貸又は賃借権の譲渡をしたことが窺われる。しかし、さらにさかのぼつて池田浜から瀧沢潔、松平史秀、玉山末守、佐藤貴美江と順次賃貸されたことにつき、これに照応する<証拠省略>が真正に成立したことを認めるに足りる証拠はなく、また<証拠省略>は、<証拠省略>に照らし採用できない。

よつて被告の右抗弁は採用しない。

三  被告の賃借権時効取得の主張を検討する。

瀧沢潔および松平史秀が被告主張のように賃借の意思をもつて本件土地を占有したことを認めるに足りる確証がないから、右抗弁は採用しない。

四  被告の権利濫用の主張につき検討する。

原告の本件明渡および損害金請求をもつて権利の濫用に該当すると判定するに足りる事情は認められないから、右抗弁は採用しない。

五  よつて被告は本件建物を収去して本件土地を明け渡すべく、右事情のもとでは、被告は故意又は過失により本件土地を占有して原告の所有権を侵害していることに帰着するから、原告に本件土地賃料に相当する損害を与えているというべきである。

右賃料額を検討する。

<証拠省略>および弁論の全趣旨を総合すれば、原告主張の各年度の一年分の賃料額は本件土地の相続税課税標準価格に一〇〇分の四を乗じて得たもの(昭和三八年度は日割計算)であることが明らかである。一般に権利金の授受なき新規賃貸の場合の土地の相当賃料年額を算出するには、当該土地の更地価格に一〇〇分の五ないし八を乗じて得た額に公租公課管理費年額を加算する方式がとられており、土地不法占有者に対しこの意味における相当賃料に該当する損害を加えているものに外ならない。しかるに相続課税標準価格は更地価格を下廻るのが一般であるから、原告主張の賃料は右相当賃料以下であることは明白である。

よつて本件建物収去本件土地明渡のほか、昭和三九年二月一日から昭和四三年三月三一日までの右相当賃料相当の損害金の内金一、〇五七、一一一円、および右損害金の履行期は日々その日の分につき到来すると解されるから、当該年度中の日々の損害金に対するその翌日よりその年度末までの年五分の割合による遅延損害金の総額の内金二五、四一八円、合計一、〇八二、五二九円ならびに原告主張の各年度一年分の賃料相当損害金に対する各年度末の翌日(毎年四月一日)から完済まで年五分の割合による遅延損害金の各支払いを求める原告の請求は理由があり、認容すべく、民事訴訟法八九条一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 沖野威)

物件目録および図面<省略>

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