大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和34年(むのイ)180号 判決 1959年4月01日

被疑者 太原徹

大一三・七・一六生 税務官史

決  定

(被疑者氏名略)

右の者に対する傷害被疑事件につき東京地方裁判所裁判官井上謙次郎が昭和三十四年四月一日なした勾留請求却下の裁判に対し、検察官から同日適法な準抗告があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件準抗告はこれを棄却する。

理由

本件準抗告の趣旨及び理由は記録に編綴してある東京地方検察庁検察官大石宏作成の準抗告申立書記載のとおりである。

よつて記録を調査するに、被疑者が勾留請求書に引用してある司法警察員事件送致書記載の罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることはこれを認めることができる。

そこで、さらに、本件勾留請求の理由となつている刑事訴訟法第六十条第一項第二号及び第三号所定の事由の有無につき判断するに、本件については、既に被害者である森田昌征の司法警察員に対する供述調書が作成されておりかつ同人作成の被害届及びこれに添付してある小林大乗作成の診断書もまた提出されているのであるから(なお右小林大乗が医師であり、当時、本件被害者を診断して右診断書を作成したことは裁判所書記官高月亮二作成の電話照会回答報告書により明らかなものと認められる)一応の捜査はなされているものと認められるし、また、被疑者は現在神田税務署の徴収課徴収係に勤務している公務員であつて、しかも国税局神田寮内に居住している事実も確認できるのであるから(裁判所書記官高月亮二作成の電話聴取報告書(二通)参照)、将来被害者や本件傷害事件の現場を目撃した者たちを脅迫して自己に有利な供述をさせようと企てるような言動に出るものとは思われないのみならず、いわんや逃亡すると疑うに足りる相当な理由も認められないといわなければならない。したがつてこれらの点と本般所犯の比較的軽微であることを思いあわせるときは右勾留請求を却下した原裁判は、相当であり本件準抗告はその理由がないものといわなければならない。

よつて刑事訴訟法第四百三十二条、第四百二十六条によつて主文のとおり決定する。

(裁判官 樋口勝 伊東秀郎 立原彦昭)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例