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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)1143号 判決 1958年6月27日

原告 マツダ皮革工業株式会社

右代表者 松田一郎

右代理人弁護士 諏訪栄次郎

被告 督夫こと 中島正夫

右代理人弁護士 福士米次郎

主文

被告は原告に対し金一、一四三、七五〇円及びこれに対する昭和三二年一二月二六日より完済まで年六分の金員の支払をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

本判決は仮に執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

被告が株式会社中万の取締役社長という資格で原告主張の約束手形三通を原告あて振出し原告が現にこれらの所持人であることは当事者間に争がない。

右手形の振出人の住所として記載された東京都都台東区浅草聖天横町一五番地に株式会社中万の商業登記が経由されていないことは当事者間に争がなく、成立に争のない乙第一号証によれば、右会社は東京都中央区日本橋小網町二丁目一二番地を本店所在地として登記の存することが認められる。

被告は右手形の振出人の肩書地は株式会社中万の事実上の支店所在地であると主張するけれども、商人が数箇の営業所を有する場合本店所在地において登記すべき事項は支店の所在地においても登記しなければならないにも拘らず、その登記をしてないこと前記のとおりである。しかも、台東区浅草聖天横町一五番地に株式会社中万の支が設けられたことを原告が知つていたことを認めるに足る証拠がないから同所に営業所を設置したことを以て原告に対抗し得ないものといわなければならない。

従つて、原告との関係においては東京都台東区浅草聖天横町一五番地に支店を有する株式会社中万は存在しなかつたものというの外なく、この実在しない会社の代表資格を使用して、被告が本件手形を振出したのであるから、被告は手形法第八条の準用により自ら振出人としての責任を負担しなければならない。

原告がその主張の日に本件手形を支払場所に呈示したところ拒絶されたことは成立に争のない甲第一乃至三号証の各一、二により明かである。

よつて、原告が被告に対し本件手形金合計一、一四三、七〇五円及びこれに対する呈示の後たる主文表示の日より完済まで年六分の損害金の支払を求める本訴請求は正当として認容し、民訴第八九条、第一九六条に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 岡部行男)

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