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東京地方裁判所 昭和30年(ワ)8017号 判決 1956年5月11日

事実

原告(熊谷益一)は、山崎幸雄の振り出した金額拾五万円の小切手を、その交付を受けた翌日支払人に呈示したが拒絶されたので、支払人に小切手裏面に呈示の日を表示し且日附を付した宣言を記載させて、山崎幸雄の父である被告(山崎六一郎)に善処を求めたところ、被告はその小切手金債務を引受け、毎月金壱万円宛月賦弁済する旨申し出たが、その旨の証書作成を肯せず、また申出を実行しないので、被告より小切手金並にこれに対する呈示の日より完済に至るまでの年六分の法定利息金の支払を求めると述べた。

被告は、原告主張の事実中山崎幸雄が被告の子であることのみ認め、被告が債務引受を為したとの点は否認し、その余は不知と述べた。

理由

被告が山崎幸雄の父親であることは当事者間に争がないが、小切手振出に関与しない以上その支払義務のないことは当然であるけれども、証拠を綜合すれば、被告は原告の意を承けた仲介人川端規平より小切手不渡り直後子幸雄の不始末に関し善処を求められ、原告とは不知の間柄であつても川端規平とは予て懇意であつた関係上、その要請を無下に拒否するに忍びず、その立場に同情してその支払を約し金壱万円宛の月賦による解決を申し出たことが窺われる。尤もこの支払申出は飽くまで妥協和解の趣旨で為されたもので、必ずしも山崎幸雄の債務を被告において全面的に引き受ける約定をしたものではないと解すべき節もないではなく、或は一般には斯く解するのを妥当とするのであろうが、証人川端規平の供述、被告本人の訊問等を綜合すれば、被告は原告の代理人川端規平より支払約定に関する確証を求められた際、山崎幸雄と謀ることなく、その名義を用いて川端規平宛に金額拾五万円の約束手形一通を作成し、その名下には自已の印顆を押捺してこれを川端規平に交付したことが明らかであり、従つてたとい被告の名義は表示せられず、原告が直接権利者となつていないにしても、被告に債務支払について責任を持つ即ち債務の引受を為す旨の表意を為し、原告も川端規平を通じこれを知つて満足したものと推定されるから、被告は原告に対し、被告の子山崎幸雄の振り出した小切手金債務拾五万円並にこれに対する法定利息金につき支払義務あるものと為すの外はない。従つて原告の本訴請求は正当であるとしてこれを認容した。

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