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東京地方裁判所 平成9年(ワ)7544号 判決 1999年9月30日

原告

甲野太郎

外二名

右三名訴訟代理人弁護士

二瓶和敏

酒井幸

被告

興亜火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

辰馬輝彦

右訴訟代理人弁護士

鈴木祐一

西本恭彦

野口政幹

水野晃

小林一正

主文

一  被告は、原告甲野太郎に対し、金一億一二五〇万円及びこれに対する平成五年一〇月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告甲野二郎に対し、金一八七五万円及びこれに対する平成五年一〇月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告甲野三郎に対し、金一八七五万円及びこれに対する平成五年一〇月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は被告の負担とする。

六  この判決は第一項ないし第三項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

一  被告は、原告甲野太郎に対し、金一億一二五〇万円及びこれに対する平成五年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告甲野二郎に対し、金一八七五万円及びこれに対する平成五年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告甲野三郎に対し、金一八七五万円及びこれに対する平成五年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は甲野花子(以下「花子」という。)及び甲野一郎(以下「一郎」という。)の両名がフィリピンにおいて殺害されたとして、右両名を被保険者とする保険契約に基づき、右両名の相続人である原告らが保険金の支払を請求した事案である。

一  前提事実(証拠を掲げない事実は、当事者間に争いがない。)

1  原告甲野太郎(以下「原告太郎」という。)は、花子の夫であり、一郎、原告甲野二郎(以下「二郎」という。)、原告甲野三郎は、それぞれ原告太郎及び花子の長男、二男、三男である。

2  花子は、第5項記載の一郎のフィリピン旅行に先立ち、一郎の代理人として、被告との間で、保険料七〇〇〇円を支払い、以下の内容の保険契約(以下「本件保険契約①」という。)を締結した。

旅行者(被保険者) 一郎

保険金受取人 法定相続人

契約タイプ

一四(死亡保険金七五〇〇万円)

契約証番号 〇九〇五二〇〇七六一

保険期間 平成五年三月二一日から同月二四日まで

契約日 平成五年三月一八日

3  花子は、第5項記載のフィリピン旅行に先立ち、被告との間で、保険料七〇〇〇円を支払い、以下の内容の保険契約を締結した(以下「本件保険契約②」という。)。

旅行者(被保険者) 花子

保険金受取人 法定相続人

契約タイプ

一四(死亡保険金七五〇〇万円)

契約証番号 〇九〇五二〇〇七六〇

保険期間 平成五年三月二一日から同月二四日まで

契約日 平成五年三月一八日

4  本件保険契約①及び同②(以下、両契約をあわせて「本件保険契約」という。)には、以下の約款(以下「本件約款」という。)がある。(乙九)

第一条 ① 当会社は、被保険者が保険証券記載の海外旅行の目的をもって住居を出発してから住居に帰着するまでの旅行行程中に急激かつ偶然な外来の事故によってその身体に被った傷害に対して、この約款に従い保険金を支払います。

② (略)

第三条 ① 当会社は、次の各号に掲げる事由によって生じた傷害に対しては、保険金を支払いません。

(1) 保険契約者または被保険者の故意

(2) (略)

(3) 被保険者の自殺行為、犯罪行為または闘争行為

(以下略)

② (略)

第二五条 当会社は、被保険者または保険金を受け取るべき者が第二二条(保険金の請求)第一項の手続をした日からその日を含めて三〇日以内に保険金を支払います。ただし、当会社が特別な事情によりこの期間内に必要な調査を終えることができないときは、これを終えた後、遅滞なく保険金を支払います。

5  花子と一郎は、平成五年三月二一日から同月二四日までの予定で、日通航空主催のフィリピン旅行に参加した。

6  一郎は、フィリピン滞在中の平成五年三月二三日未明ころ、フィリピン人C(以下「C」という。)の運転する旅客用車の車中または車外において、フィリピン人A(以下「A」という。)及びB(以下「B」という。)に刃物で刺され、同日午前九時ころまでの間に死亡した。

花子は、同日未明ころ、一郎が襲われた後、Cの運転する右旅客用車の中で、Bに刃物で刺され、同日午前六時ころまでの間に死亡した(以下、一郎及び花子が殺害された事件を「本件事件」という。)。

一郎及び花子の死亡の先後は不明である。

7  原告太郎は一郎の唯一の法定相続人で、原告らは花子の法定相続人である。花子の死亡による法定相続分は、原告太郎二分の一、原告二郎、原告三郎が各四分の一である。

8  原告らは、平成五年九月三〇日、本件保険契約に基づき、被告に対して保険金(以下「本件保険金」という。)の支払を請求した。

これに対し、被告は、同年一二月一四日付け書面で、保険金支払の可否の最終的決定は調査終了後になる旨の通知をした。(甲一一)

9  被告は、平成七年一月二〇日付け書面(以下「本件書面」という。)で、花子及び一郎の死亡は急激かつ偶然な外来の事故とはいえないため保険金の支払には応じかねる旨回答し、右書面は同月二七日、原告太郎に到達した。(甲一三、乙一二の一、二)

10  原告太郎は、平成八年一二月中旬、被告従業員古内道孝に対し、電話で本件保険契約に関する書類(以下「本件書類」という。)の返還を請求した(以下「本件電話」という。)。(証人古内、原告太郎本人)

11  原告らは、平成九年四月一七日、本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著である。)

12  被告は、平成九年六月二六日の第一回口頭弁論期日において、本件保険金請求権につき消滅時効を援用するとの意思表示をした。(当裁判所に顕著である。)

二  争点及び争点に関する当事者の主張

前提事実によれば、花子及び一郎が被告との間でそれぞれを被保険者とする本件保険契約を締結したこと、本件保険契約によれば、被告は、被保険者である花子及び一郎が平成五年三月二一日から同月二四日までのフィリピン旅行の間(住居を出発してから住居に帰着するまでの旅行行程中)に急激かつ偶然な外来の事故によって死亡したときは、法定相続人に対し、それぞれ七五〇〇万円の死亡保険金を支払う旨約したこと、花子及び一郎は、フィリピン旅行の行程中である平成五年三月二三日、第三者であるA及びBによって殺害されたこと、原告らは花子及び一郎の法定相続人であることが認められる。そして、右A及びBによる花子及び一郎の殺害は本件保険契約でいう急激かつ偶然な外来の事故にあたるというべきであるから、被告としては、本件約款三条の除外事由にあたることを主張立証するか、あるいは本件各保険金請求権の消滅事由を主張立証しない限り、本件各保険金の支払を免れることはできないと解すべきである。

なお、被告は、右偶然の事故であるとの立証責任は保険金請求者である原告らにあり、偶然の事故か故意による事故かが判明しない場合には、保険金請求は認められるべきではないと主張する。しかし、本件約款が、「急激かつ偶然な外来の事故」に当たることを保険金請求の要件として掲げる一方で、「保険契約者または被保険者の故意」あるいは「被保険者の自殺行為、犯罪行為または闘争行為」を保険金支払の免責事由として掲げていることからすると、ここでいう偶然性の立証としては、事故の外形からみて偶然な事故と認定することができれば足り、そのような立証がなされた以上は、保険者側で右免責事由の立証をする責任を負うと解するのが相当である。

そして以上のような観点からすると、本件の争点及び争点に関する当事者の主張は次のとおりである。

1  一郎及び花子の死亡は、花子が一郎の殺害をフィリピン人のいわゆる殺し屋であるAとBに依頼したことによるものか。

(被告の主張)

一郎の死亡は、花子が一郎の殺害を殺し屋に依頼したことによるものである。

そうすると、本件保険契約①については、花子が一郎の代理人として締結したものであるが、契約行為等はすべて代理人として花子が行ったものであり、実質的保険契約者は花子であるから、保険契約者(花子)が被保険者(一郎)を故意に殺害した場合に該当する。したがって、本件約款三条一項一号により、被告は免責される。

また、本件保険契約②については、被保険者である花子が一郎の殺害という犯罪行為を行い、その因果的連鎖の中で花子も殺害されたというものであるから、本件約款三条一項三号により、被告は免責される。さらに、被保険者兼保険契約者である花子は、治安の悪い、殺し屋が跋扈する場所でその殺し屋と同席し、その殺し屋と共に一郎を殺害したものであり、そのような行為は自ら事故発生の極めて高い状態に身を置き、危険を著増させるものである。したがって、商法六五六条により、本件保険契約は無効となり、被告は免責される。

(原告らの主張)

花子が一郎の殺害を殺し屋に依頼した事実はない。したがって、本件保険契約①及び同原告②のいずれの契約についても、被告が免責されることはない。

なお、本件保険契約①の契約者については、花子は一郎の代理人にすぎないのだから、保険契約者は一郎であって、花子ではない。

2  消滅時効は完成しているか。

(一) 消滅時効の起算点

(被告の主張)

保険金請求権の消滅時効の起算点は、本件保険契約事故発生時と解すべきである。花子と一郎が殺害されたのは平成五年三月二三日であるから、本件保険契約①及び同②のいずれについても、平成七年三月二三日の経過をもって消滅時効が完成している。

(原告らの主張)

本件保険金請求権の消滅時効の起算点は、被告において本件保険金支払の可否の調査が終了し、その最終的結論が原告らに到達した時点である。

本件においては、平成七年一月二七日に被告からの最終的結論を記載した本件書面が原告太郎に到達しているのであるから、消滅時効は同日から起算される。

(二) 本件電話による保険金支払の催告の有無

(原告らの主張)

原告太郎は、本件電話の際、被告従業員古内に対し、「保険会社で保険金を払ってもらいたい。払えないのならば弁護士の先生に相談してあるので、持っていった関係書類をみんな返してもらいたい。」と述べたものである。これは、本件保険金支払の催告にあたる。そうすると、本件訴訟は、本件電話から六か月以内である平成九年四月一七日に提起されているから、本件保険金請求権の消滅時効は中断している。

(被告の主張)

仮に、本件保険金請求権の消滅時効の起算点が本件書面が原告太郎に到達した平成七年一月二七日であるとしても、本件訴訟の提起は平成九年四月一七日であるから、やはり消滅時効は完成している。

原告らは、本件電話の際、原告太郎が本件保険金の支払を催告したと主張するが、そのような事実はなく、原告太郎は古内に単に本件書類の返還を請求したにすぎず、単に本件書類の返還を請求したことをもって「催告」とみることは出来ない。

3  被告の時効援用は権利濫用か。

(原告らの主張)

仮に、消滅時効が完成しているとしても、以下の事実に照らせば、被告の時効の援用は権利の濫用であって、許されない。

(1) 支払猶予期間の延長

ア 被告は、原告らが本件保険金を請求したのに対し、調査期間を明示しないまま、保険金支払の可否を判断するための調査が必要であるとして、調査終了後に結論を出す旨原告らに通知した。そのため、原告らは調査の終了を待つことを余儀なくされた。

イ 被告が最終的に原告らに支払拒否を通知する本件書面を送付したのは、本件約款二五条に定める三〇日の支払猶予期間を遙かに超える平成七年一月二〇日である。

ウ 被告は、平成五年一一月末には既に本件保険金の支払ができないとの結論に達していた。

(2) 時効期間の非通知

ア 原告らは、法律に関して何らの専門的な知識を持たない素人である。

イ 被告は、原告らに対して本件書面を送付した際、消滅時効の完成が間近いことを原告に知らせなかった。

(3) 申請書類の不返還

ア 原告らは、本件書面到達後、平成七年四月二〇日付け内容証明郵便をもって、重ねて本件保険金の支払請求をしたが、被告は何の対応もしなかった。

イ 被告は、本件書面等で支払拒絶をしてきたのみで、原告太郎が、本件電話で、保険金請求書に添付して提出した本件書類(保険契約書・死亡証明書・検視証明書・遺体通過許可証等)の返還を要求したのに対し、被告は、本社か顧問弁護士に請求してくれというばかりで、誠実に対応せず、本件訴訟の提起まで返還しなかった。

(被告の主張)

以下の事実に照らせば、被告の時効援用は権利濫用ではない。

(1) 被告が本件保険金の支払の可否について調査を完了したのは、平成五年一一月末ころではなく、その後も調査を継続していたものである。

(2) 被告は、原告らの平成七年四月二〇日付け内容証明郵便に対しては、同月二七日付け内容証明郵便をもって支払できない旨再度回答している。

(3) 古内が、原告らに対し、本件書類の返還を本社に請求するよう要求したのは、本件は重要案件であるため、既に本件書類が本社に送られていたためである。また、被告が、本件電話以前に原告らとの間で交わした書面においては、被告代理人弁護士がその発送人となっているのであるから、古内が、原告らに対し、被告の顧問弁護士に本件書類の返還を請求するよう要求したのは当然である。

(4) 本件事件の発生から本件訴訟の提起までは四年以上もあったのであるから、その間に原告らが訴訟を提起することも十分可能であった。

(5) 原告太郎は、教頭の地位にあるほどの知的水準にあるから、どのようにして訴訟を提起することができるかということも容易に知り得るはずであった。

第三  当裁判所の判断

一  争点1(一郎の死亡は、花子が一郎の殺害をいわゆる殺し屋に依頼したことによるものか)について

1  被告は、一郎の死亡は、花子が一郎の殺害を殺し屋に依頼したことによるものであるとして、本件保険契約①については本件約款三条一項一号を根拠に、本件保険契約②については本件約款三条一項三号または商法六五六条により、それぞれ免責されると主張する。そこで、花子が一郎の殺害を殺し屋に依頼したといえるか否かを検討することとする。

2  花子が一郎の殺害をフィリピン人の殺し屋であるAとBに依頼したことを窺わせる証拠としては、週刊誌の記事(乙一ないし六)、B、A及びCの宣誓供述書(乙一三ないし一五の各一ないし三)、被告代理人がA及びBと接見したうえで作成した報告書(乙一八)及び右接見の際の状況に関する被告代理人鈴木祐一弁護士の供述等が存するので、これらの証拠の信用性等について以下順次検討する。

(一) 週刊誌の記事(乙一ないし六について)

まず、乙第一号証ないし第六号証の週刊誌の記事について検討する。

右記事の内容は、いずれも本件事件に関するものである。このうち、「週間ポスト」平成五年一一月一二日号(乙六)には、フィリピン捜査当局の捜査官が本件事件を保険金殺人であると考えていることが記載されているが、花子が一郎の殺害に関与したとの点については触れていない。

「フォーカス」の平成五年一一月五日号(乙三)には、Aの供述として、花子が一郎の殺害に関与したことを窺わせる部分があり、また、「フォーカス」の平成五年一一月一二日号、同一九日号(乙一、乙二)には、報道陣に対する証言あるいはフォーカスの記者のインタビューに対するものであるとして、Bの供述が紹介されており、その中には、花子が一郎が殺されることを事前に知っていたとする部分があるが、そのことは第三者であるDから聞いたとされている。また、「週間文春」平成五年一一月一一日号(乙五)には、フィリピンの国家捜査局特捜部長の発言として、Aの供述によれば、花子が一郎の殺害を事前に知っていたとの部分があり、また、Aの供述として事前に花子から一郎の殺害を依頼されたとの部分がある。

しかし、これらのA、Bらの供述部分はいずれも伝聞であり、誰がどのような形で供述を聴取したのかは明らかにされていないし、花子が一郎の殺害に関与したとの右記事自体、その内容に照らして、推測によるものであることは明らかである。

そうであるとすれば、他に本件週刊誌の記事の内容を裏付ける確たる証拠がない限りは、本件各週刊誌の記事のみをもって、花子が一郎の殺害に関与したと認定することはできないというべきである。

なお、右各週刊誌の記事によれば、本件事件については、Bに花子及び一郎の殺害を指示したとされるD、Dに指示をしたとされるいわき市内の人材派遣業者F某、F某と親しく原告太郎の教え子である会社社長乙川四郎といった人物の関与の可能性が指摘されているところ、右Dについては、本件事件に関与したことを認めて逮捕され、フィリピン国内で殺人罪で起訴されたものの、無罪判決が出ているとされているし(甲一九)、日本人の関係者についても警察による事情聴取を受けたことは窺えるものの、現在に至るも刑事事件としては立件されていない(甲一九、弁論の全趣旨)。

(二) B、A及びCのフィリピン捜査当局に対する宣誓供述書(乙一三ないし一五の各一ないし三)について

(1) 右各供述書には、以下の内容の記載がある。

ア Bの一九九三年(平成五年)一〇月三一日付け宣誓供述書

① Dは、一九九三年(平成五年)三月一六日ころ、日本から私に電話で、ある日本人の母親と息子を空港で出迎えて殺すよう依頼した。私は、その依頼を承諾した。

② 一度、私がDと電話で話をしているときに、Dがある日本人から指示を受けているのが聞こえた。その日本人は、声に聞き覚えのある「F」だと思う。「F」は、Dが働いているクラブの上司で、フィリピンにもしばしば来ていた。

③ Aは、日本人の男女を乗せた車の中で、男性の方をナイフで刺し、私はそれを手伝った。日本人の女性のほうは、Aと私が日本人男性を刺しているとき、何もしていなかった。彼女は怖がっていない様子であったし、Aと日本語で言葉を交わしてもいた。その後、私たちがピナグカバリアンについたとき、Dの指示どおり、私がその女性を数回刺した。

④ 私たちが殺した日本人女性と日本人男性とは、血縁関係はないと思う。これはAが以前私に話してくれたことである。

⑤ 私は、日本人女性は私たちが日本人男性を殺そうとしていたことを知っていたと思う。

⑥ 私は二人を殺した報酬として、Dの義理の兄弟から六万五〇〇〇ペソを受け取った。

イ Aの一九九三年(平成五年)一〇月二〇日付け宣誓供述書

① 私は、一九八七年(昭和六二年)から一九九〇年(平成二年)まで日本に滞在していた。日本滞在中は、福島県いわき市のFの家に住んでいた。

② Bは、「Fの要請で日本人母子に会いに行く。」と言って、空港まで日本人の母子を出迎えにいった。Bの話では、母親のほうが息子を殺して欲しいとのことだった。

③ 一九九三年(平成五年)三月二二日午後、フィリピンプラザホテルで日本人女性と面会した。私が彼女に「コウノさんですか。」と聞くと、彼女は「はい、コウノです。」と答えた。それから私が「私はFさんのお友達です。」と言うと、彼女は頷いた。彼女は、私に日本語で、私が何をすることになっているか知っているかをを尋ねてきたので、私は「はい。」と答えた。彼女は、「フィリピンには三日しか滞在せず、その後はすぐに帰国する。」と私に話をした。

④ 日本人女性が、一人で帰国するといったのは、私たちが彼女の息子をここで殺すことになっていたので、彼女は一人で帰国することになるということである。

⑤ 私たちが日本人男性を刺しているとき、日本人女性は何もしなかった。

⑥ 私は、コウノ夫人がフィリピンを去るまで私の家にかくまってやろうと計画していたが、私たちがダンバリット橋に着く手前でBが女性を刺した。

⑦ Fが、友人である私でなくBに殺害を依頼したのは、私がFと一九九二年(平成四年)に仲違いしたためである。

ウ Cの一九九三年(平成五年)一〇月二三日付け宣誓供述書

① 私は、本件事件の際、殺害犯が使った車の運転をしていた。

② 日本人女性は、息子が殺されている間、何もせずに静かにそこに座っていた。

③ AとBが日本人男性を刺した理由は私にはわからない。

④ Bが日本人女性を刺した理由はわからない。

(2) Bの宣誓供述書について

Bの宣誓供述書には、右に認定したとおり、Dから一郎及び花子の殺害を依頼されたこと、Dの背後には「F」という日本人がいるのではないかと思うこと、一郎を殺害した際、花子は何もせず、怖がってもいない様子であったこと、花子は一郎が殺害されることを知っていたと思うことが記載されている。これらの供述内容からは、花子が一郎の殺害を依頼したことを明確に裏付ける事実は何ら見出だすことはできない。確かに、一郎が殺害された際、花子が怖がってもいない様子であったとの供述があり、甲第二四号証の一、二によれば、本件事件に対するマラボン地区裁判所での審理の検察官の冒頭陳述中にも、一郎が殺された際、花子が何の抵抗も示さずジープの座席に座ったままであったとの指摘があることが認められる。しかし、仮にそのような事実が認められたとしても、花子が恐怖の余り何ら行動できなかったとの推測もできるところであって、これをもって花子が一郎の殺害をあらかじめ知っていたことや、ひいては花子が一郎の殺害を依頼したとまで推認することはできない。その余の供述内容も、Bの推測に基づくものにすぎないのであって、これをもって花子が一郎の殺害を依頼したものと認めることはできないというべきである。そして、ほかに、Bの宣誓供述書中には、花子が一郎の殺害を依頼したことを認めるに足る供述はない。

そうすると、Bの宣誓供述書をもって花子が一郎の殺害を依頼したと認めることはできない。

(3) Aの宣誓供述書について

Aの宣誓供述書には、右に認定したとおり、Bの話では花子が一郎を殺して欲しいということであったこと、花子が一人で帰国するといったのは、Aらが一郎をフィリピンで殺害することになっていたので、花子は一人で帰国することになるということ、Aらが一郎を刺しているとき、花子は何もしなかったことが記載されている。しかし、一郎殺害の際に花子が何もしなかったことをもって花子が一郎の殺害を依頼したと認めることができないのは先に述べたとおりである。また、花子が一郎を殺して欲しいと言った点については、Bからの伝聞であり、Bの宣誓供述書にこれに沿う部分が存しないことからしてもその信用性には疑問が残るし、花子が一人で帰国することになるとの右供述についても、Aが自己の見解を述べたにすぎず、花子が「一郎を殺害することになっている。」との発言をしたものではないことは明らかである。そして、ほかに、Aの宣誓供述書中には、花子が一郎の殺害を依頼したことを認めるに足る供述はない。

そうすると、Aの宣誓供述書をもって花子が一郎の殺害を依頼したと認めることはできない。

(4) Cの宣誓供述書について

Cの宣誓供述書には、一郎が殺害される際、花子は何もせずに静かにそこに座っていたとの記載があるが、これをもって花子が一郎の殺害を依頼したものとはいえないことは既に述べたとおりである。そして、ほかに、Cの宣誓供述書中には、花子が一郎の殺害を依頼したことを認めるに足る供述はない。

そうすると、Cの宣誓供述書をもって花子が一郎の殺害を依頼したと認めることはできない。

(三) 被告代理人がA及びBと接見したうえで作成した報告書(乙一八)及び右接見の際の状況に関する被告代理人鈴木祐一弁護士の証言について

(1) 平成五年一一月二八日、被告代理人弁護士鈴木祐一(以下「鈴木弁護士」という。)は、フィリピン国家警察のマラボン警察署において、午後二時一五分から午後二時五五分までの間、A及びBの両名に接見し、右両名から通訳を介して概要以下の内容の供述を得た。(乙一八、証人鈴木)

ア 私たちは、フィリピン警察に、花子から頼まれて一郎を殺害したと話しているが、そのとおり間違いない。

イ フィリピンのマニラで、花子に直接会って、同人から一郎を殺してくれと頼まれた。花子から直接頼まれる前に、日本人のFという人からも頼まれていたが、花子から直接頼まれたことも絶対間違いない。そのとき、花子は報酬は一〇〇万ペソだと私たちに話してくれた。

ウ 私たちは、一郎を約束どおり殺したのに、約束のお金はFが日本から送金してくれた一二万ペソしかもらっていないので残金が欲しい。

(2) 鈴木弁護士及び野口弁護士がA及びBに接見して得た供述の内容は前項のとおりであるが、以下その信用性について検討する。

右に認定したとおり、接見の際、A及びBの両名は、マニラにおいて花子から直接一郎の殺害を頼まれ、一郎を殺害したこと、報酬は一〇〇万ペソであると花子から言われたのに、Fから一二万ペソしかもらっていないことを鈴木弁護士らに供述したものである。

しかし、乙第一八号証及び鈴木弁護士が証人として証言した結果によれば、鈴木弁護士らがA及びBに接見したのは通訳を介してわずか四〇分であり、しかもその間両名が電話で弁護士に相談するために席を外すこともあったこと、A及びBは供述の際、同室におり、一方が供述し、他方が頷くという状況の下で供述がなされたこと、鈴木弁護士らがA及びBから聴取した供述は、右両名が花子から依頼されて一郎を殺害したとフィリピン警察に話しているという点につきこれが間違いないかと質問し、間違いないとの答えを得たうえ、更に依頼の場所を質問して、フィリピンで花子から直接依頼を受けたとの答えを得たものであって、A及びBの答えは、結論部分のみであり、いかなる理由で花子が一郎の殺害を依頼したのか、報酬を支払ったFなる人物と花子はどのような関係にあるのか、なぜ一郎の殺害を依頼した花子も殺害されることになったのか等事件の背景事情については一切聴取していないこと、A及びBは、右供述を終え、鈴木弁護士に供述録取書への署名を要求されたところ、日本円で約一〇〇万円相当の金銭の支払を要求し、結局署名を拒否したこと、鈴木弁護士らが日本に帰国した後、A及びBの弁護士は、事件に協力するかわりに報酬を支払うよう提案する電話をかけてきたことが認められる。そして、右接見の一か月余り前に作成されたA及びBの宣誓供述書中には、右両名が花子から一郎殺害を直接、あるいは間接的にであるにせよ依頼されたとの記載はなく、なぜ捜査官に対する取調べの際に供述しなかった重要な背景事実について鈴木弁護士らに供述したのか合理的な理由が見いだせない。

これらの事情に照らせば、A及びBの鈴木弁護士らに対する供述は、報酬を得ることを目的として、被告代理人である鈴木弁護士らに迎合したのではないかとの疑いを拭えず、その信用性には疑問を抱かざるを得ない。

加えて、甲第二四号証の一、二によれば、一九九六年(平成八年)七月一七日、マラボン地区裁判所は、A及びBの両名に対し、一郎及び花子殺害の罪により、終身懲役刑の判決を言い渡したこと、その際、A及びBの両名は、公判廷において「一郎及び花子の殺害には一切関与していない。捜査段階の自白に際しては、捜査官によって肉体的かつ精神的な拷問を受けた。」との弁解を述べ、無罪を主張し、花子及び一郎の殺害に関与したことすら否定する供述をしているのであって、右両名が、鈴木弁護士らとの接見の際、どこまで真実を供述していたのかはなはだ疑問が残るところである。

以上によれば、鈴木弁護士らがA及びBに直接接見して得た右供述の信用性は乏しいものと言わざるを得ず、これをもって花子が一郎の殺害を依頼したものと認めることはできない。

(四) その他の証拠について

原告太郎の供述によれば、花子が本件フィリピン旅行をした目的は、エビの買い付けの下見であったこと、花子は事業欲が旺盛であり、金策等で苦労していたこと、花子及び一郎の死亡により、原告太郎は既に保険金として一億四〇〇〇万円余りの支払を受けたが、そのうち一億三〇〇〇万円余りは、花子の借金の支払にあてたことが認められ、これに弁論の全趣旨も考慮すると、本件フィリピン旅行をした当時花子がかなり多額の負債を抱えていたこと、一方で、本件保険契約の保険金の総額は一億五〇〇〇万円であり、花子及び一郎については、当時少なくとも三億円近い高額の保険金が掛けられていたことは事実として認めることはできる。しかし、一方で、甲第二二号証(原告二郎の陳述書)、甲第二三号証(原告太郎の陳述書)並びに原告太郎及び同二郎の供述によると、原告らと亡くなった花子及び一郎の家庭は、原告太郎が教員をし、花子が酒店を経営しながら、三人の息子たちを育て上げたもので、家族関係に特段問題があったとは認められない。また、息子達はいずれも大学教育を受け就職していること、本件フィリピン旅行については、花子は本件事件の前年の夏、二男である原告二郎をフィリピン旅行に誘って断わられたこともあり、長男である一郎を誘ったものであることが認められる。そして、花子と一郎の親子関係は特段の軋轢があったとまでは認められないのであって、多額の負債があり、しかも高額の保険金がかけられていたからといって、直ちに花子があえて実子である一郎の殺害を第三者に依頼するまでの動機があったと見ることは憶測の域を出ないものと言わざるを得ない。そして、ほかにそのような動機を窺わせるに足る証拠は存しない。

(五) 総合的検討

前記認定の事実によれば、本件事件は、一億五〇〇〇万円という高額の死亡保険金がかけられたうえ、四日間という短い保険期間中に被保険者である花子と一郎が旅行先であるフィリピンにおいて、フィリピン人のいわゆる殺し屋であるAとBに相次いで殺害されたというものであり、しかも、フィリピン人の殺し屋自身が被保険者である花子の犯行への関与を仄めかすような発言をするといった極めて異例なものであったことは明らかである。

しかし、以上(一)ないし(四)で検討したところによれば、花子が一郎の殺害をフィリピン人の殺し屋であるAとBに依頼したとの点に関しては、前記(二)及び(三)で検討したとおり、直接的な証拠である、AとBの供述自体の信用性に疑問があり、これによって、そのような事実を認めることは困難である。また、(一)で認定したとおり、週刊誌の記事はいずれも推測の域を出ないものであって、その後記事の内容に沿った刑事事件の判決が出されたというものでもないし、(四)で認定したとおり、花子が多額の負債を抱えていたことや花子及び一郎には高額の保険金がかけられていたことは認められるものの、原告らと花子及び一郎の家族関係に特段の問題があったとは認められないことを考慮すると、そのことを直ちに花子による一郎の殺害依頼の動機とみることもできない。

そうであるとすれば、他に証拠が存しない以上、本件事故に関し、花子が一郎の殺害をフィリピン人の殺し屋であるAとBに依頼したとの事実を認めることはできないというべきである。

二  争点2(消滅時効は完成しているか)について

1  消滅時効の起算点について

(一) 保険金請求権の消滅時効は、商法六六三条により二年の短期消滅時効にかかるところ、右消滅時効の起算点については、商法上明らかにされていない。そこで、消滅時効は権利を行使しうる時から進行するのが民法上の原則であるから(同法一六六条一項)、本件においていつから原告らが本件保険金を請求することが可能であったかを検討することとする。

(二)  この点、本件約款二五条ただし書きには、被告が特別な事情により、保険金の請求があった日から三〇日以内に必要な調査を終えることができないときは、その調査終了後に遅滞なく保険金を支払う旨規定されている。このような規定が存在する以上、現実の場面では、保険金請求者は、被告が「必要な調査」を終えるまでは、保険金の支払を受けることができず、被告が「必要な調査」を終えるのを待つしかない状況に置かれることになる。そうすると、右のような本件約款の規定に照らせば、保険金請求者が保険金を請求することが可能になる時点とは、被告において「必要な調査」を終え、保険金支払の可否に関する結論が保険金請求者に到達した時点であると解するのが相当である。

これを本件についてみると、原告らは、平成五年九月三〇日に本件保険金の支払を請求したところ、被告は同年一二月一四日付け書面で、調査終了後に本件保険金支払の可否を最終的に決定する旨を通知したのであって、被告の調査が終了し、本件保険金支払の可否に関する最終的な結論が原告らに到達したのは平成七年一月二七日である。そうすると、実際に原告らが本件保険金を請求することが可能になったのは、平成七年一月二七日からであって、本件保険金請求権の消滅時効は同日から進行すると解すべきである。

(三) これに対し、被告は、時効制度は当事者の主観や意思によって左右されるべきものではないから保険事故発生時より消滅時効が進行すると解すべきであると主張する。確かに、法解釈の問題としては、後述のように、原告らが保険金請求の手続をした日から、その日を含めて三〇日の経過により保険金支払の履行期が到来することは事実であるが、本件の場合、本件約款二五条ただし書きによって、保険金請求者は被告において必要な調査を終えるまで現実には保険金の請求をすることは困難であったというべきである。それにもかかわらず、その間にも保険金請求権の消滅時効が進行すると解した場合には、調査中であってもなお時効を中断するために保険会社に対し請求をすることが必要となるが、このような解釈は請求者に困難を強いるものであって、本件約款の解釈として相当でないというべきである。よって、被告の右主張は採用できない。

2  本件電話による保険金支払の催告の有無

(一) 右のように平成七年一月二七日から本件保険金請求権の消滅時効が起算されるとしても、本件訴訟が提起されたのは平成九年四月一七日であるから、平成九年一月二七日の消滅時効の完成以前に時効中断事由が存しない限り、本件保険金請求権につき消滅時効は完成していることになる。

そこで、平成八年一二月中旬に原告太郎が被告従業員古内にかけた本件電話が民法一五三条の「催告」と認められるか否かを検討する。

(二) 証拠によれば、以下の事実が認められる。

(1) 原告太郎は、平成六年一二月二七日付け書面によって、被告に対し、本件保険金の支払を請求した。

これに対し、被告は、平成七年一月二〇日付けの本件書面によって、原告太郎に対し、本件事件は、急激かつ偶然な外来の事故とはいえないため、本件保険金の支払には応じないとの回答をした。(甲一三、原告太郎本人)

(2) 原告太郎は、平成七年四月二〇日付け内容証明郵便によって、被告に対し、再度本件保険金の支払を請求した。

これに対し、被告は、同月二七日付け書面によって、原告太郎に対し、改めて、本件保険金の支払には応じられないとの回答をした。(甲一四、乙二二、原告太郎本人)

(3) 原告太郎は、本件保険金の支払について相談するため、平成八年中に、いわき市内の複数の弁護士に相談をしたが、事件を受任してもらえなかった。

原告太郎は、平成八年一二月五日、いわき市内の大学一弁護士(以下「大学弁護士」という。)に本件保険金の支払について相談した。大学弁護士は、原告太郎が持参した資料だけでは事案の概要が不明なので、保険会社に預けている資料を返還してもらい、資料を取りそろえて、後日改めて相談にくるよう同人に指示した。(甲一五、原告太郎本人)

(4) 平成八年一二月中旬、原告太郎は、被告従業員古内に対し、本件電話をかけ、本件書類を返還するよう要求した。(証人古内、原告太郎本人)

(5) 本件電話の後である平成八年一二月中旬ころ、古内は原告太郎に対し、本件書類は東京にあるので、そちらに返還を請求するよう指示した。(証人古内、原告太郎本人)

(6) 大学弁護士は、平成九年一月二八日付け内容証明郵便によって、被告に対し、本件保険金が支払われない理由について回答を求めた。(乙二一の一、二)

(三) 以上の事実をもとに、本件電話による「催告」が認められるか否かを検討する。

原告らは、本件電話の際、原告太郎が、被告従業員古内に対し、「保険会社で保険金を払ってもらいたい。払えないのならば弁護士の先生に相談してあるので、持っていった関係書類をみんな返してもらいたい。」と述べたと主張し、原告太郎もこれに沿う供述をする。これに対し、本件電話を受けた証人古内は、原告太郎に本件保険金を支払って欲しいといわれたことはない旨証言している。原告太郎の供述は催告による時効中断を意識している面があり、また支払請求が拒絶されてから一年半以上経過した後の電話の内容としては唐突な印象を禁じ得ず、必ずしもそのとおり認定することはできない。しかしながら、右に認定したとおり、原告太郎は、本件書面によって被告から本件保険金の支払を拒絶された後も、その請求をあきらめず、平成八年になっても大学弁護士をはじめとする複数の弁護士に本件保険金の支払について相談していた事実を前提とすれば、本件保険金を請求する準備行為と認められる本件電話において、原告太郎が、古内に対して、本件保険金の支払を請求する趣旨の何らかの発言があったと考えるのが自然である。そうすると、本件電話において、原告太郎は、古内に対して本件保険金の支払を請求する旨の発言をしたと認めるのが相当であって、これに反する前記古内証言は採用できない。また、仮に明示的に保険金の請求と受け取れる言葉がなかったとしても、原告太郎が本件書類の返還を求めたのは、今後裁判により保険金の支払を求めていくためであり、そのことは本件書類の内容やそれまでの原告太郎と被告との交渉の経過に鑑み古内あるいは古内から連絡を受けた被告の担当者においても理解が可能であったもので、これにより原告太郎がなお保険金請求をする意思を有していることが被告に伝えられたと認めることができ、民法一五三条の「催告」といいうるにはそれで十分と考えるべきである。

したがって、いずれにしても原告太郎が被告従業員古内にかけた本件電話は、民法一五三条の「催告」にあたるといえる。

3  以上によれば、本件訴訟の提起により、本件保険金請求権の消滅時効は確定的に中断したことになり、消滅時効は完成していないというべきである(なお、原告らのうち、被告に本件保険金の支払を催告したのは原告太郎だけであるが、原告太郎はその余の原告らの代理人として行動していたとみることができるから、原告太郎以外の原告らについても消滅時効は完成していないことはいうまでもない。)。

三  なお、前提事実記載のとおり、本件約款には、被保険者または保険金受取人が保険金請求の手続をした日からその日を含めて三〇日以内に保険金を支払う旨の条項があり(二五条本文)、右条項は、右三〇日の経過により保険金支払の履行期が到来することを定めたものと解すべきであるから(最高裁平成九年三月二五日第三小法廷判決・民集五一巻三号一五六五頁参照)、原告らが本件保険金請求の手続をした平成五年九月三〇日からその日を含めて三〇日を経過した同年一〇月三〇日から被告は遅滞の責を負うというべきである。

第四  結論

以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求は主文の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求については理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官西岡清一郎 裁判官金子修 裁判官武藤貴明)

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