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東京地方裁判所 平成7年(ワ)6777号 判決 1997年4月28日

原告 安田信託銀行株式会社

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 赤松幸夫

同 霜鳥敦

被告 株式会社阪和銀行

右代表者代表取締役 B

右訴訟代理人弁護士 月山桂

同 田中祥博

同 月山純典

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告に対し、金二二九五万五七七六円を支払え。

二1  主位的請求

被告は、原告に対し、額面金額一億円の第四五五回長期信用債券(満期償還日平成七年一〇月二七日)及び額面金額五億円の第四八五回農林債券(満期償還日平成七年一〇月二七日)を返還し、金六億円に対する平成七年四月六日から右返還済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算による。)の割合による金員を支払え。

2  予備的請求

被告は、原告に対し、金六億二〇四六万円及びこれに対する平成七年四月六日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算による。)の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、阪和リース株式会社(以下「阪和リース」という。)に対して有価証券を貸し付けていた原告が、被告に対し、被告は右有価証券貸借契約に基づく阪和リースの債務について連帯保証をしていたとして、未払借用料金の支払いを求めるとともに、主位的に借用証券と同銘柄同額面の代り証券の返還を、予備的に借用証券の時価相当額(六億二〇四六万円)の支払いを求めている事案である。

二  争いのない事実等

1  原告は、平成二年一〇月三一日、阪和リースに対し、次のとおりの約定で、有価証券を貸し渡した(争いがない。以下、この貸借を「本件有価証券貸借契約」という。)。

(一) 対象

①銘柄・回 第四五五回長期信用債券

額面金額 一億円

満期償還日 平成七年一〇月二七日

(以下、当該債券を「本件債券一」という。)

②銘柄・回 第四八五号農林債券

額面金額 五億円

満期償還日 平成七年一〇月二七日

(以下、当該債券を「本件債券二」という。)

(二) 借用料

借用証券額面金額に対し、年八・七〇六パーセントの割合とする。

(三) 返還期限

平成七年一〇月二七日

(四) 返還方法

返還期限に借用証券と同銘柄、同額面の代り証券(利札付債券の場合には付属利札全部を含む。)をもって返還する。ただし、返還期限と同時に又は返還期限前に満期償還日が到来する借用債券については、当該満期償還日に、当該借用証券の額面金額相当額の金銭をもって返還する。

(五) 期限の利益喪失に関する特約

支払の停止又は破産、和議開始、会社更生手続開始、会社整理開始もしくは特別清算開始の申立があったときは、通知催告を要せずに当然期限の利益を失い、直ちに債務を履行する。

その他、債券保金を必要とする相当の事由が生じたときは、原告の請求によって期限の利益を失い、直ちに債務を履行する。

(六) 金銭賠償の特約

債務者が債務を履行すべき場合において、債務を履行できないときは、事由の如何を問わず一切債務者がその責に任じ、金銭をもって賠償する。この場合の賠償金額は、借用証券の額面金額か時価(返還すべき日に代り証券を市場等で取得するために必要な金額をいい、購入手数料を含む。)のいずれか高い金額とする。

(七) 遅延損害金

支払うべき金額(代り証券による返還が返還期限に遅れてされたときは、代り証券の額面金額)に対し、年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合の遅延損害金を支払う。

阪和リースは、経営不振に陥り、平成七年三月下旬ころ、特別清算開始の申立てをすることを決定し、原告に対し、同年四月一二日を目処として右申立てに及ぶ予定である旨通知した。

これに対し、原告は、阪和リースに対し、本件有価証券貸借契約の期限の利益喪失に関する特約に定める「債権保全を必要とする相当の事由が生じたとき」に該当するとして、同月五日、阪和リースに対し、直ちに代り証券を返還することを請求した(争いがない。)。

3  阪和リースは、平成六年一〇月二七日までの本件債券一、二の借用料を支払っており、次回の借用料の支払期限は翌七年四月二七日であるところ、同月五日に期限の利益を失ったから、前回支払日の翌日から期限の利益喪失日までの借用料は、本件債券一につき三八二万五九六二円、本件債券二につき一九一二万九八一四円の合計二二九五万五七七六円となる(弁論の全趣旨)。

4  本件債券一、二の平成七年四月五日における市場気配値は、本件債券一につき一億〇三四一万円、本件債券二につき五億一七〇五万円(いずれも購入手数料込み)であるから、本件有価証券貸借契約の金銭賠償の特約に従い、額面金額よりも高い右価額が履行不能の場合の金銭賠償額となる(甲六)。

三  争点

本件において、被告は、原告に対し、関連会社である阪和リース及び阪和ギャランティ・ファイナンス株式会社(以下「阪和ギャランティ」という。)の経営再建のための支援を要請するに際し、「弊行関連会社である阪和リース株式会社の後記借入有価証券については、期日到来まで契約金利の利払いを遵守させ、期日にはご返済申し上げます。」という文言(以下「本件文言」という。)の記載された確認書(甲三、乙一。以下「本件確認書」という。)を差し入れており、原告は、本件確認書をもって被告が阪和リースの本件有価証券貸借契約に基づく債務を連帯保証したものと主張するのに対し、被告は、本件確認書は被告が阪和リースに対して元本を返還期限に返還するよう指導することを約束したものにすぎないと主張して連帯保証契約の成立を争う。

この点に関する当事者の主張は、以下のとおりである。

(原告の主張)

1 本件文言の主語は被告であり、被告自ら返済を約束したものとしか考えられない。

2 本件確認書は、被告がその返済について責任を負ってほしいとの原告の求めに応じて作成されたものであり、右作成の経緯からしても、連帯保証の趣旨と解される。

3 阪和リース及び阪和ギャランティは、本件確認書と同旨の確認書を差し入れた他の信託銀行に対しては、すべて借入有価証券を返済しており、右返済の事実からしても、被告は、本件確認書により、借入有価証券の返済について連帯保証したものと推認される。

(被告の主張)

1 銀行間の取引において連帯保証する場合には、疑義の生じない文言をもって書面を作成するのが通常であり、本件文言から、連帯保証の趣旨であるということはできない。

2 本件確認書には、本件文言に続いて、期日到来時に返済資金相当額の新規融資を依頼する文言が記載されており、本件確認書の主眼は、この新規融資の方にあった。阪和リースは、本件有価証券貸借契約上の債務を原告からの新規融資により返済することになるのであるから、原告が本件有価証券貸借契約上の債務を連帯保証する必要性はなかった。

3 被告は、平成五年三月、原告などの信託銀行を含む阪和リースの各債権者に対し、被告の関連会社である阪和リースの再建のため、母体行として、自らの支援内容を示すとともに、平成五年三月末日の借入残高で平成一〇年三月末日まで返済の猶予を求める、いわゆる借入残高の維持及び金利の減免等の支援協力方を要請する文書(甲七と同旨のもの)を交付するとともに、その同意書(甲一〇と同旨のもの)を得ることとしたが、その際、信託銀行に対して、その同意書を得るにつき、引き替えに差し入れたのが本件文言の記載された確認書(本件確認書もそのうちの一通である。)である。被告が、各債権者の支援協力を得るため、阪和リースのために被告のする支援内容として示したものは、①被告の阪和リースら関連二社に対する金利を無利息とすること、②阪和リースの見込債権の肩代り等をして、不稼働資産の圧縮を図ること、③人件費を負担すること、④不良債権の管理、回収のための支援をすること、⑤関連二社の経営全般にわたる指導、管理をすることという五項目であり、債権者に対する債務の支払いの保証等は含まれていない。当時、監督官庁が指導していた母体行の関連会社に対する支援の内容は、これが限度であって、被告が関連会社の債権者に対する債務を引き受けたり、保証したりすることは、監督官庁の認めるところではなかった。

4 本件確認書と同様の確認書を差し入れられた他の信託銀行は、阪和ギャランティとの関係で、借入有価証券の返済後新規融資が実行される前に会社整理の申立てがされたため新規融資が実行されなかった三菱信託銀行株式会社(以下「三菱信託銀行」という。)を除き、借入有価証券の返済と同時に新規融資を実行しており、他の信託銀行に対する借入有価証券の返済の事実は、被告が阪和リースの債務について連帯保証していたことを示すものではない。

5 原告は、被告がその債務について連帯保証した旨明記した文書が作成されていた阪和ギャランティとの関係においては、同社の会社整理の申立後直ちに、被告に対して連帯保証債務の履行を請求していたのに対し、阪和リースとの関係においては、被告に対して損害賠償を辞さない旨の通知をしたにすぎず、右の事実からすれば、原告自身、被告が阪和リースの債務を連帯保証したと考えていなかったということができる。

第三争点に対する判断

一  本件文言について

原告は、本件文言をもって被告が阪和リースの本件有価証券貸借契約上の債務を連帯保証する旨約束したものであると主張する。

確かに、本件文言の「期日にはご返済申し上げます」との部分は、被告が自ら返済することを約束したように認めないわけではない。しかし、本件文言が連帯保証の約束であるとすると、「期日到来まで契約金利の利払いを遵守させ」との部分はいかにも不自然であり、被告が阪和ギャランティの債務について原告に対して保証した契約書(乙一〇、一一)と対比しても、銀行間の連帯保証契約書としては、その表現があまりに不明確であるといわざるをえない。したがって、本件文言から直ちに被告が連帯保証を約束したものと認めることはできない。

二  本件確認書作成の経緯について

1  次に、原告は、本件確認書は、被告がその返済について責任を負ってほしいとの原告の求めに応じて作成されたものであるから、本件文言は連帯保証の趣旨に解すべきであると主張する。

そこで、この点について検討するに、<証拠省略>及び証人Cの証言のうち、右認定に反する部分は、右に掲げた他の証拠に照らして採用できない。

(一) 阪和リースは、平成元年一二月二〇日、リース業務及び金銭貸付業務を主たる目的として、阪和ギャランティは、昭和五九年七月一二日、被告の行う貸付に対する保証業務を主たる目的として設立された会社であり、両社とも、被告の関連会社として大蔵省に届け出られている。

(二) 阪和リース及び阪和ギャランティは、いわゆるバブル経済当時、不動産業等において資金需要が高かったことから、各種金融機関から資金を借り入れてこれを不動産業者に貸し付ける等の方法で金銭貸付業務に力を入れるようになった。しかしながら、平成三年一月ころには不動産取引が沈滞してバブル経済が崩壊し、貸付先からの元金の返済や利息の支払いも滞り、担保不動産の価額も下落してきたことから、その財務内容は悪化し、資金の借入先から一括返済の要求を受けるようになって、資金繰りが困難な事態となった。阪和リース及び阪和ギャランティは、被告から資金の貸付を受けるなどして営業を維持してきたが、借入先からの一括返済の要求が厳しくなってきたことから、借入総額の一割相当額を返済することとし、平成四年三月から借入先各社に対して一割相当額の返済を実施した。

原告は、このころ、阪和リースから、右返済計画の一環として、一億二〇〇〇万円の弁済を申し出られたが、有価証券貸借の場合には一部返済金を受領することはできないとして、受領を拒絶した。

(三) 阪和リース及び阪和ギャランティは、その後も業績が回復せず、母体行である被告の支援協力も限界となり、平成五年三月には、元金の分割返済のみならず約定の利息の支払いも困難となったことから、被告とともに、その再建計画を立案し、被告は、借入先金融機関に対して、支援を要請する旨の書面を交付して、支援を要請した。この際、被告が原告に対して差し入れた文書(甲七。以下「本件支援要請書面」という。)の内容は、第二、三(被告の主張)3において、被告が主張するとおりであった。

右支援要請に対し、借入先金融機関、特に信託銀行においては、阪和リース及び阪和ギャランティに貸し付けた有価証券は顧客より信託された運用有価証券であり、運用により損失が発生しても損失はすべて信託者自身の損失に帰し、信託銀行がその損失を填補することは許されないものであるから、返済の猶予及び金利の減免に応じることはできないとして、強く反対した。しかし、阪和リース及び阪和ギャランティは、借入先金融機関の同意が得られないまま、平成五年三月末日以降は元金の返済をやめ、各金融機関に対し、右支援要請において減額した割合による利息金額を送金した。

原告は、金銭消費貸借契約を締結していた阪和ギャランティからは右減額した割合による利息金を、本件有価証券貸借契約を締結していた阪和リースからは約定どおりの利息金を送金されたが、右支援要請に応じていないことから、阪和ギャランティからの減額した割合による送金については利息金としての受取りを拒否し、別段預金として預かった。

(四) 被告、阪和リース及び阪和ギャランティは、原告を含む借入先金融機関との間で、前項で要請した支援について協議を続けていたが、被告は、平成五年六月一五日、阪和リースとの間で返還期限を同月二一日とする有価証券貸借契約を締結していた三井信託銀行株式会社(以下「三井信託銀行」という。)から、阪和リースは借入有価証券を返還期限に返済し、返済資金相当額の新規融資を三井信託銀行に依頼するという形で、阪和リースの借入金の残高維持についての被告の要請を受け入れることが考えられるとの説明を受けた。そして、三井信託銀行は、このような処理をする前提として、被告に対して、被告が、「(1)本件に係る借入金の元本については、その返済に懸念がないこと」、「(2)上記借入金に対する借入利息については、長期プライムレート以上での支払いを遵守すること」、「(3)阪和リース株式会社が借入金返済を行なう際には、当該借入金の優先弁済について十分な配慮をすること」を確認することを求めた(乙四は三井信託銀行が被告に求めた確認書の原案。)。右確認書の原案には、原告が連帯保証を約束した文言であると主張する本件文言とほとんど一致する「期日にご返済致します」という文言が記載されていた。

被告は、右確認書原案(乙四)について、近畿財務局等と協議した上、新規借入金の利率を長期プライムレート以上とすることを文面上明らかにすると他の債権者との均衡上好ましくないこと及び優先弁済の配慮の趣旨を明らかにするべく新規貸付金が借入有価証券の返済原資であることを明記すべきであることを理由として、原案の(2)を「(2)上記借入金に対する借入金利息については、別途協議の上決定しその支払を遵守すること」に、同(3)を「(3)(空欄)株式会社が借入金返済を行う際には、当該借入金は後記借入有価証券の返済のための新規融資であることを認識し、十分な配慮をすること」に訂正した案(乙五。以下「本件確認書案」という。)を作成した。

被告は、本件確認書案をもって、平成五年六月二一日に阪和リースとの間の借入有価証券の返還期限が到来する三井信託銀行及び同じく同月一九日に阪和ギャランティとの間で返還期限が到来する中央信託銀行株式会社(以下「中央信託銀行」という。)と協議を重ね、両社との間で、本件確認書案と同旨の確認書を差し入れることにより、借入有価証券の返済相当額について新規に融資を受け、もって借入金の残高を維持する旨合意し、そのころ、両社に対して各有価証券貸借契約に基づく返済をするとともに、本件確認書の文面を、さらに借入有価証券について期限に返済したと直した確認書(乙六)を差し入れて、右返済相当額について新規の融資を受けた。

(五) 被告は、三井信託銀行及び中央信託銀行との間で解決がついたことから、他の信託銀行に対しても、前二社との間で確認書を差し入れることにより借入金の残高維持について合意できたことを説明した上、本件確認書案を示し、同様の確認書を差し入れることを条件として支援要請に応じてほしい旨申し入れ、交渉を続けた結果、平成五年末ころには、原告との間でも、概ね先に被告が要請したとおりの内容の支援をする方向で合意ができた。

そこで、被告のD専務、E室長らは、平成六年一月一一日、原告大阪支店を訪れ、応対したF営業第四部長、C課長らに対し、本件確認書案及び同意書案(甲一〇の原案)を交付した。

原告の担当者は、交付を受けた本件確認書案及び同意書案を検討した結果、同月二一日、被告に対し、確認書案の頭書きの期日到来時の新規融資のお願いについて「返済資金相当額の」の部分を削除し、同案(2)の借入金利息について「長期プライムレートを下限とし」と加入し、さらに(4)として「新規融資については平成4年4月から平成5年3月迄のシェアー返済予定額120百万円及び今後の当社宛シェアー返済額を控除した後の金額とする。」と記入した文案(乙七)をファクシミリで送付した。

右文案を受け取った被告のE室長は、同日、原告大阪支店を訪れ、原告の担当者に対し、本件確認書案の文面は既に近畿財務局等の関係機関との協議を終えたものであり、他の信託銀行と同一内容の文面にする必要がある旨説明して、長期プライムレートを下限とすることは了承しているが、確認書で明文化することは避けてほしいこと及び原告の方で受取りを拒絶している一億二〇〇〇万円の返済金額の処理については、確認書の中ではなく、別途文書を交わして解決したいことを申し入れた。その後、同月二七日にも協議した結果、右一億二〇〇〇万円は定期預金で運用することとし、新規融資に当たって融資額を右金額を控除した金額とすることについては、確認書とは別に新規融資額を確認する旨の文書を交わすことで合意した。

(六) E室長らは、平成六年二月三日、原告大阪支店を訪れ、C課長らに対し、被告の代表取締役の記名捺印のある確認書二通(一通は本件確認書、もう一通は乙二。)を交付し、原告大阪支店支配人の記名捺印のある同意書(甲一〇)を受け取った。このうち、乙第二号証の確認書には、阪和リースが借入有価証券の期日到来時に原告から受ける新規融資額について、平成四年四月から平成五年三月までの按分返済未了額一億二〇〇〇万円を控除し、今後按分返済を実行する場合には原告宛の按分返済額を控除する旨の記載がある。

本件確認書を受け取ったC課長は、その場で、借入金利息について「長期プライム変動 6年2月3日○○E関連事業部長確約」と記載した(甲三)。

(七) 阪和リースは、その後も経営不振が続き、被告の資金援助等も限界に達したことから、平成七年三月下旬ころ、特別清算開始の申立てをすることとし、同年四月一二日、臨時株主総会を開いて解散決議をするとともに、同日、和歌山地方裁判所に対して特別清算の申立てを行い、同月二一日、特別清算開始決定を得た。

原告は、このころ、被告から、右特別清算開始の申立てをする旨の連絡を受け、被告に対し、同年三月三〇日、確認書、同意書等の作成、交付の経緯にかかわらず、被告や阪和リースが原告に事前連絡もなく特別清算手続に移行することになったのは、背信的行為であり、借入有価証券の性質にかんがみ、特別清算手続に移行する前に有価証券を返還するように求め、仮に返還がない場合には損害賠償請求をする考えである旨、内容証明郵便(甲五)で通知した。

2  以上の事実によれば、本件確認書は返済について責任を負ってほしいとの原告の求めに応じて作成されたものではなく、本件文言についても、新たに原告と被告の間でその表現を検討したわけではないことは明らかであり、本件確認書の主眼は、第二、三(被告の主張)2で被告が主張するとおり、新規融資の方にあり、原告の関心も、一億二〇〇〇万円の返済金の処理や新規貸付金の利息にあったものと認められる。したがって、本件確認書作成の経緯から、本件文言が連帯保証を約束したものと認めることはできない。

三  他の信託銀行に対する借入有価証券の返済について

原告は、被告が本件確認書と同旨の確認書を差し入れた他の信託銀行に対しては、すべて借入有価証券は返還されていることをもって、本件確認書は借入有価証券の返済について連帯保証したものであると主張する。

しかし、右二に掲げた各証拠及び右二で認定した事実によれば、そもそも三井信託銀行が提案した確認書による処理は、有価証券貸借契約である限り、信託者に損失が生じるために、被告からの支援要請に応じられないため、いったん契約に基づく返済を実行し、その返済資金を新規融資する形で支援要請に応じようというものであり、被告が第二、三(被告の主張)4で主張するとおり、三菱信託銀行については、阪和ギャランティとの有価証券貸借契約に基づく返済を受けた後、新規融資の実行前に阪和ギャランティが会社整理手続に入る旨発表したことから、新規融資を拒絶し、阪和リースについては、確認書を差し入れる前に特別清算の申立てが先行したため、確認書による処理ができなかったという事情があるが、他の信託銀行は、原告を除いてはいずれも借入有価証券の返済の後で新規融資が実行されていることが認められる。

そして、このように有価証券の返済の資金が新規融資によって賄われるものである以上、被告が主張するとおり、新規融資の返済について被告が保証するのであれば格別、有価証券の返済について被告が保証することは実益に乏しいといわざるを得ず、他の信託銀行への返済をもって本件確認書が連帯保証を約束したものと推認することもできない。

四  その他

以上のほか、被告が阪和リースの原告に対する本件有価証券貸借契約に基づく債務について連帯保証したことを認めるに足りる証拠はなく、前記二1(七)で認定したように、被告が第二、三(被告の主張)5で主張するような事実も認められるので、被告が、原告に対し、阪和リースの本件有価証券貸借契約に基づく債務について連帯保証したと認めることはできない。

五  よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却する。

(裁判長裁判官 福田剛久 裁判官 小林元二 松山遙)

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