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東京地方裁判所 平成7年(ワ)25732号 判決 1998年10月30日

東京都台東区<以下省略>

原告

X1

右代表者代表役員

神奈川県相模原市<以下省略>

原告

X2

右代表者代表役員

右原告両名訴訟代理人弁護士

犀川千代子

犀川季久

東京都千代田区<以下省略>

被告

ユニバーサル証券株式会社

右代表者代表取締役

千葉市<以下省略>

被告

Y1

右被告両名訴訟代理人弁護士

浦田武知

米里秀也

主文

一  被告ユニバーサル証券株式会社は、原告X1に対し、金一二〇〇万三五三三円及びこれに対する平成八年一月二五日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告ユニバーサル証券株式会社は、原告宗教法人X2に対し、金三九二万四二五八円及びこれに対する平成八年一月二五日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、これを五分し、その四を原告らの負担とし、その余は被告らの負担とする。

五  この判決は、原告ら勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の請求

一  被告らは、原告X1に対し、各自、金六三〇一万七六六六円及びこれに対する平成五年五月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告宗教法人X2に対し、各自、金二〇六二万一二九三円及びこれに対する平成五年五月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  仮執行宣言

第二事案の概要

本件は、原告らが、被告ユニバーサル証券株式会社(以下「被告会社」という。)の社員である被告Y1(以下「被告Y1」という。)に、投資信託の運用を任せていた原告らの寄託金(原告X1六〇〇一万七六六六円、原告宗教法人X2(以下「原告X2」という。)一九六二万一二九三円)で、被告Y1が原告らに無断でワラント売買した寄託金の返還、無断売買又はワラント取引における適合性原則、説明義務違反及びワラント販売後の助言義務違反による、被告Y1につき民法七〇九条、被告会社につき民法七一五条の不法行為ないし債務不履行に基づく右寄託金相当額の損害及び被告らが任意支払に応じないための弁護士費用(原告X1三〇〇万円、原告X2一〇〇万円)の損害の賠償を求めている事案である。

一  争いのない事実及び前提事実

1  原告X1は、昭和二八年○月○日、東京都より認証を受けた宗教法人であり、設立以来住職であるA(以下「A」という。)が代表役員である(争いのない事実)。

原告X1の財政管理の実務は、主としてAの妻であるD(以下「D」という。)が担当し、被告会社との証券取引の実務は、主としてDを介して行われた(争いのない事実)。

2  原告X2は、昭和二九年○月○日、東京都による認証を受けた宗教法人であり、昭和四九年一二月一八日以降住職であるB(以下「B」という。)が代表役員である(争いのない事実)。

Bは、A及びDの長男であり、原告X2の財産管理は、Bが担当し、被告会社との取引はBを介して行われたものである(争いのない事実)。

3  被告会社は、証券取引法に基づく大蔵大臣の免許を得て有価証券の売買を業とする証券会社であり、被告Y1は、被告会社の社員で、原告らとの証券取引を担当した者である(争いのない事実)。

4  Dは、大正七年生まれで、○○高等女学校を卒業して、昭和一九年Aと婚姻し、X1の総務、財務の実務を担当してきた(甲第三六号証、証人D)。

Dは、昭和三八年ころ、野村證券で東京電力の株式五〇万円を購入しこれを保有していた以外、株取引はしていなかったところ、昭和四五年ころ、大和証券投資信託株式会社(後の被告会社)のセールスマンから投資信託を勧められ、以後、原告X1名義で、同社と投資信託取引をしてきたところ(甲第三六号証、証人D)、昭和五一年、担当が被告Y1に替わり、Dは、長男B、長女E及び次女Fに対し、被告Y1を紹介した(争いのない事実)。

そして、被告Y1に勧められ、積立投資信託のほか、より金利の良い中国ファンド、転換社債ファンドを購入するようになり、取引額が増していった(争いのない事実)。

原告X1は、昭和五八年から昭和六一年にかけて本堂を改築し、建築費について檀家から募った寄付を被告会社に預けるなどしていた(甲第三六号証、証人D)。

Dは、取引の都度チェックして決算まで一円の狂いもなく報告できていた(争いのない事実)。

5  Bは、昭和二三年生まれで、昭和四七年、○○大学第一文学部を卒業後、二年間○○寺で修行し僧の資格を取得し、昭和四九年一一月、原告X2の住職代表役員に就任した(争いのない事実、原告X2代表者)。

Bは、昭和五二年ころ、Dから被告Y1を紹介され、投資信託取引を開始した(甲第三九号証、原告X2代表者)。

6  大和証券投資信託株式会社は、昭和五九年、被告会社に吸収合併された(争いのない事実)。

7  原告X1は、被告会社との間で、別表X1ワラント取引一覧表のとおり、外貨建てワラント取引を行った(争いのない事実)。

原告X2は、被告会社との間で、別表X2ワラント取引一覧表のとおり、外貨建ワラント取引を行った(争いのない事実)。

(以下原告らの右ワラント取引を合わせて「本件ワラント取引」という。)。

8  ワラントとは、新株引受権付社債(ワラント債)のうちの新株引受権の部分をいい、ワラント債発行時に予め定められた権利行使期間(四ないし五年のものが多い。)内に、予め定められた権利行使価格(通常ワラント債の最終発行条件決定日の当該ワラント銘柄の株価終値の一〇二・五パーセントとなっている。)で、予め定められた権利行使株数(一ワラントの権利を行使した際に取得できる新株の株数)の新株を引き受けることができる権利(新株引受権)を商品化したものである(争いのない事実)。右権利行使期間内に権利行使をする時には、行使価格に行使株数を乗じた金額(行使代金)を新たに振り込まねばならないし、右権利行使期間を経過すると、新株引受権は消滅し、ワラントは無価値となる(争いのない事実)。

ワラントには、円建てで起債される円建てワラント(国内ワラント)と外貨建て(主としてユーロとドル建て)で起債される外貨建てワラントの二種類が存し、一ワラントの額面金額は、外貨建てワラントの場合、五〇〇〇ドルが一般的である(争いのない事実)。

ワラント価格は、債券面額金額に対するパーセント(通常「ポイント」と呼ぶ)で表示され、パリティ価格(株価と当該ワラントの権利行使価額の差額に引き受けられる株式数を乗じた額)とプレミアム(将来の株価上昇の期待値)によって決定されるため、現実の株価の変動に一致しない場合もある(争いのない事実)。しかしながら、原則的には、株価に連動して、その価格が上下し、ギアリング効果により、株式投資に比較して、投資金額に対応する利益は大きいものの、投資金額に限定されてはいるものの損失も大きく、株式の信用取引の決済期間(六か月)よりは長いといっても四年又は五年の権利行使期間を経過するとワラント自体無価値となるというハイリスクハイリターンの商品といえる(争いのない事実)。したがって、転換社債は転換期間、転換価格、転換株数の概念で類似性を有するものの、転換社債は、償還期日には償還される上、転換に当たり新たな資金の投資は不要である点で、ワラントとは異なる(弁論の全趣旨)。

外貨建てワラントでは、国内ワラントと異なり日本国内の証券取引所には上場されていないため、主として、国内の証券会社と店頭で相対取引を行う(国内店頭取引)取引方法で行われ、その価格も各証券会社がそれぞれ独自に決定していた(争いのない事実)。

そして、外貨建てワラントは、相対取引において、買値(ビット)と売値(オファー)との価格差が生じる(争いのない事実)。

被告会社においては、通常、外貨建てワラントの売買は、一二万五〇〇〇ドル単位で行っている(弁論の全趣旨)。

新株引受権付社債のうち、新株引受権部分だけ分離して独立の証券として流通している分離型ワラント債は、昭和六〇年一一月一日国内発行が認められ、昭和六一年一月一日、海外で発行された外貨建てワラントの国内持込も解禁された(争いのない事実)。

ワラント取引にあたり、証券会社から投資家に対し、説明書を交付すること、及び投資家から説明を受けたこと及び説明書を交付されたことの確認書を徴求することは、平成元年四月一九日、日本証券業協会の理事会決議において、外貨建てワラント取引を対象として定められ、平成二年三月一六日、国内ワラントを含むワラント取引全体を対象として同協会の「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」(公正慣習規則第九号)に取り入れられ、右決議及び規則に基づいて、各証券会社は、投資家に対して、右説明書の交付及び確認書への署名押印を得るようになった(争いのない事実)。

二  争点

1  被告会社によるワラントの無断売買の有無

(原告らの主張)

原告らは、被告Y1に対し、ワラントの売買を委託したことはなく、被告Y1からワラントについて説明を受けたことはなく、ワラントの売買について承諾したこともない。原告らは、寄託金が寺のお金であることから、株式の買付を禁止していたもので、ワラントの売買を委託するはずがない。

(被告らの主張)

本件ワラント取引については、運用益の確保に積極的な関心を持っていた原告らの意向を受けて開始し、売買報告書、預り証及び説明書の交付並びに確認書の署名捺印により、原告らの了解を得て執行している。

2  被告Y1の本件ワラント取引勧誘に際しての注意義務違反

(一) 説明義務違反

(二) 適合性原則遵守義務違反

(三) ワラント販売後の助言義務違反

3  過失相殺

被告らは、本質的に有価証券投資における自己責任のの問題で、原告らは、ワラント取引の説明書等を交付され、その知性から十分にワラントについて理解が可能であり、理解していたものであり、原告らは、宗教法人として財産目録作成等の法律上の義務も怠り、宗教法人としての財産管理義務を懈怠し、証券取引における売買報告書を全く見なかったとすれば、悪意に近い重過失がある旨主張する。

第三争点に対する判断

一  原告X1の被告会社との取引経緯

1  前記争いのない事実、甲第三六号証、証人Dの証言によれば、以下の事実が認められる。

昭和四五年ころから、大和証券投資信託株式会社(後の被告会社)において、原告X1名義で、同社と投資信託取引をしてきたところ、昭和五一年、担当が被告Y1に替わり、同人に勧められ、積立投資信託のほか、より金利の良い中国ファンド、転換社債ファンド等を購入するようになり、取引額が増していった。

2  乙第三号証の一ないし四三によれば、昭和五二年四月以降、各種投資信託などの取引がされていたが、原告X1が被告会社における右取引口座である原告X1口座へ現金入金しているのは、①昭和五二年六月二五日二万八三六〇円、②昭和五三年一一月二一日九二万五〇〇〇円、③昭和五四年三月一五日五四万七〇九〇円、④昭和五四年七月二四日八四万円、⑤昭和五五年二月二二日四九六万二五〇〇円、⑥昭和五五年五月二六日八一万八二七二円、⑦昭和五六年二月二六日一三万五一八三円、⑧昭和五六年四月一一日三〇〇二円、⑨昭和五六年六月三日五〇〇万円、⑩昭和五六年七月一四日六万八六八〇円、⑪昭和五六年七月一五日三〇〇万円、⑫昭和五六年七月二一日三万一〇〇〇円、⑬昭和五六年八月三一日一二万七五〇〇円、⑭昭和五七年二月二六日一二万円、⑮昭和五七年八月三〇日一二万七五〇〇円、⑯昭和五八年六月八日一二万七五〇〇円、⑰昭和五八年七月二一日五〇〇万円、⑱昭和五八年七月二三日一〇〇万円、⑲昭和五八年八月二〇日二〇二万七五九二円、⑳昭和五八年九月五日一〇〇万円、昭和五八年一〇月一四日一〇〇万円、昭和五八年一〇月二〇日一四八万六一三八円、昭和五九年八月二七日一二万円、昭和五九年一二月五日三二万二六五六円、昭和五九年一二月二〇日五三二万七六七五円、昭和六〇年二月二六日一〇〇万円、昭和六一年三月一四日六万三五三一円、昭和六一年六月一三日五〇〇万円、昭和六一年六月三〇日七〇一九円、昭和六一年七月二一日三〇〇〇円、昭和六一年九月八日一五〇〇万円、昭和六一年一一月一八日五〇〇万円、昭和六二年四月二七日一九九万九八四八円、昭和六三年一一月九日二四七二円の合計六二二二万一五一八円であることが認められる。

また、乙第三号証の四、一二、被告Y1本人尋問の結果によれば、③の入金は、株式債券ファンドの一〇〇万円の買付資金とされ、同ファンドは昭和五七年九月六日一四二万〇九〇〇円で売り付けられ、乙第三号証の二九、乙第一八号証及び弁論の全趣旨によれば、右のうち、の入金は、ワラントを買い付けるための資金の不足額に充てられていることが認められる。

3  乙第三号証の一ないし四三によれば、昭和五二年四月以降、原告祝言寺が右口座から現金ないし小切手等で出金しているのは、①昭和五二年六月二四日四四万七三六〇円、②昭和五三年二月二日一〇万円、③昭和五四年一月一六日五〇二万九一六〇円、④昭和五五年八月一日五〇万円、⑤昭和五六年七月二九日六万八六八〇円、⑥昭和五七年三月九日三〇五万九一四一円、⑦昭和五七年九月一〇日九〇〇円、⑧昭和五七年一二月二八日五〇六万八九六五円、⑨昭和五八年三月一五日六五万三八七〇円、⑩昭和五八年四月一日五〇〇万円、⑪昭和五八年七月三〇日一六〇〇万円、⑫昭和五八年七月三〇日九万四三七八円、⑬昭和五八年一〇月一日三〇〇万円、⑭昭和五八年一二月二六日三〇〇万円、⑮昭和五九年一月六日一八六万四〇〇〇円、⑯昭和六〇年九月一八日五四万二四五〇円、⑰昭和六〇年一一月一一日五五八万四五〇〇円、⑱昭和六一年三月二六日六万四〇〇〇円、⑲昭和六一年一二月一八日九〇〇万円、⑳平成二年一月三〇日一〇〇〇万円、平成二年二月二七日一〇〇〇万円、平成二年四月二六日二〇〇〇万円の合計九九〇七万七四〇四円であることが認められる。

右乙第三号証の二一、三六、三七、乙第一八号証及び被告Y1本人尋問の結果によれば、⑲の出金は、第二オープン、米国ストリップス債を売り付けた代金を、⑳の出金は、スーパーセレクトファンドのほかシャープのワラント等を売り付けた代金を、の出金は、ストックインデックス二二五を売り付けた一〇〇〇万円を、の出金は、九州松下ワラントを売り付けた九一四万九二二〇円、スーパーセレクトファンドを売り付けた五三四万七七〇三円、ストックインデックスF二二五を売り付けた一〇〇万円及び八八年二号ユニット株式型を売り付けた四七七万〇五〇〇円を充てている。

証人Dの証言、被告Y1本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、右⑳ないしの出金は、原告X1が、平成二年一月頃、Aらの自宅部分等を新築した際、その建築資金のうち四〇〇〇万円について、被告Y1に投資信託等の売却を依頼したことによるものと認められる。

ただし、Dは、いずれの投資信託等を売却するかは被告Y1に任せていた。

4  原告X1は、現金を入金し寄託して有価証券を購入する場合は、ある程度慎重に判断していたと自認するところ、乙第三号証の一ないし四三、乙第一八号証及び被告Y1本人尋問の結果によれば、右各入金額は、被告会社商品の買付けとほぼ対応しているところ、昭和五三年ころから、原告X1は、インカムファンド(株式投信)、株式債券ファンド、公社債株式ファンド、第二オープン(株式投信)、新株式転換社債ファンド、内外株式バランスファンド等を購入していたことが認められ、また、その中のの入金は、東京電力の株式を売り付けて得た三一一万〇四六六円と併せてユニファンド八五を四〇〇万円で購入していることが認められ、その他の取引は、被告会社に寄託されている原告X1の買付商品を売り付け、その入金された金員をもとに他の商品を買い付ける方法等でされていることが認められる。

証人Dの証言によれば、Dも、投資信託には株式が入っていることの認識はあった上、満期がくるものについては、被告Y1の方でどうするか訊ねてくるため、Dは、必要としない以上、被告Y1のいいと思うものに換えておいてくれるよう依頼していたこと、買い換えについては、被告Y1に対し、Dが預り証を出し、これを被告Y1の方で差し換えていったこと、被告会社から送られてくる報告書については、Dは封も切らず気に留めていないものもあったことが認められる。また、Dは、いろいろな投資信託が売買されているらしいことには気づいていたものの、被告Y1を信頼し、投資信託等の運用を黙認していたことは、原告らの自認するところである。

また、乙第三号証の二三及び二四、乙第二七号証の九によれば、原告X1は、昭和六二年七月一三日、NTT株五株を一二一二万一二五〇円で売り付け、同日、同株を一二四六万一四五〇円で買い付け、昭和六二年八月二五日、これを一三一五万八一二五円で売り付けていることが認められる。

5  甲第三七号証の一の二、甲第三七号証の二の一、二、甲第三七号証の三の一、二、甲第三七号証の四の一、二、甲第四三号証、乙第一九号証の一、二、被告Y1本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は、本件ワラントの取引期間中の昭和六三年、平成元年は直接原告らに対し、平成二年、平成三年は原告ら依頼の税理士に対し、預かり証券としてWRの記載と数量のある残高証明書を交付し、右残高証明書は、原告らの税理士により、原告らの毎年の決算期(三月末)に参考資料とされていたこと、平成元年度のものについては、右税理士から右残高証明書の記載の不明点について、被告会社にファックスでの確認がされていることが認められる。

二  原告X2の被告会社との取引経緯

1  前記争いのない事実、甲第三九号証、原告X2代表者尋問の結果によれば、原告瑞光寺は、昭和五二年ころ、Dから被告Y1を紹介され、投資信託取引を開始したことが認められる。

2  乙第四号証の一ないし二七によれば、昭和五五年九月以降、原告X2が、X2・B名義で開設する口座において、被告会社に現金ないし小切手入金しているのは、①昭和五五年九月一九日四九八万七五〇〇円、②昭和五八年一二月二八日四七〇万円、③昭和五九年四月一九日四万七一二四円、④昭和五九年六月二日一九五万三〇〇〇円、⑤昭和六〇年一月二九日三七〇万円、⑥昭和六〇年二月二〇日一〇〇万円、⑦昭和六〇年三月二七日一〇五万円、⑧昭和六一年一一月一八日四〇〇万円、⑨昭和六三年三月八日一五〇万円、⑩昭和六三年三月二八日一〇〇万円、⑪昭和六三年一〇月一九日二〇〇万円、⑫平成元年九月一三日四〇〇万円の合計二九九三万七六二四円であることが認められる。

乙第四号証の四、八、一四、一七によれば、右入金に対応する買付商品は、利付き国債、積立投資信託、中期国債ファンド等で、昭和六〇年三月二六日、一〇六万三〇七九円でインター・ボンド・トラストBを、昭和六一年一一月一四日、四〇〇万円でセレクション八六無分配を、昭和六三年一〇月二二日、二〇〇万円で、平成元年九月二〇日、四〇〇万円でスーパーセレクトファンドを買い付けしていることが認められ、その他の買付は、原告X1同様、被告会社に寄託されている原告X2の買付商品を売り付け、その入金された金員をもとに他の商品を買い付ける方法等でされていることが認められる。

なお、乙第四号証の一ないし二七によれば、昭和五五年九月以降、原告X2が右口座から現金、振込ないし小切手等で出金しているのは、①昭和五六年二月二六日七万一七二六円、②昭和五六年五月二八日一九万二五八八円、③昭和五六年一一月二五日二五万五〇〇〇円、④昭和五七年二月二六日八万五〇〇〇円、⑤昭和五七年五月二八日一七万円、⑥昭和五七年一二月一七日二五万五〇〇〇円、⑦昭和五九年三月一五日一〇〇〇万円、⑧昭和五九年一〇月四日一五〇万円、⑨昭和五九年一一月一日一〇八一万九七一五円、⑩昭和五九年一一月二日一九〇万六八八〇円、⑪昭和六〇年四月一九日五三万二七七六円、⑫昭和六〇年一〇月三〇日一七九万四一三四円、⑬昭和六〇年一一月二二日三五万円、⑭昭和六一年二月三日四〇〇万〇八〇〇円、⑮昭和六一年一〇月三日五〇〇万〇八〇〇円、⑯昭和六一年一〇月一四日五〇〇万〇八〇〇円、⑰昭和六一年一二月二六日四〇〇万〇八〇〇円、⑱昭和六三年四月一日一〇〇万円、⑲平成二年四月二六日一〇〇〇万円の合計五六九三万六〇一九円であることが認められる。

右証拠によれば、⑦の出金は、第二オープンを売り付けた一〇八五万六四〇〇円を、⑨及び⑩の出金は、利付き国債、第二オープン、積立Gコース及びディーン・ウィスター・トラストを売り付けた代金を、⑫の出金は、転換社債ファンドを売り付けた一九九万一七〇〇円を、⑭の出金は、村田製作所転換社債を売り付けた五七八万七〇八三円を、⑮の出金は、積立Fコースを売り付けた二〇〇万円及び転換社債ファンド八四を売り付けた二九六万七六〇〇円を、⑲の出金は、主としてAアルプスワラントを売り付けて得た四九〇万八六六七円とシステムオープンを売り付けて得た五二三万六二〇〇円を充てていることが認められる。

なお、原告X2代表者尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、右⑲の出金は、Aの自宅等の建築に際し、必要であったため、Bが、被告Y1に対し、投資信託等の売却を依頼したことによるもので、右売却商品は、被告Y1に任せていたものと認められる。

3  乙第三六号証の一、二及び原告X2代表者尋問の結果によれば、原告X2は、前記X2・B名義の口座のほか、宗教法人X2及びX2名義の二口座を保有しており、右宗教法人X2口座においては、中期国債ファンドを売り付けて、昭和六三年四月二三日一〇〇万円、昭和六三年五月一〇日二五〇万円、昭和六三年六月二九日二五七万円のそれぞれ各出金をしており、右X2口座においては、積立投資信託及びユニット株式型をそれぞれ売り付け、昭和六二年五月七日三八〇万八四三七円を出金し、スーパセレクトファンドを売り付け平成二年七月九日二六〇万円の出金をし、右売却残に中期国債ファンドを、スーパセレクトファンド及びストックインデックスファンド二二五を売り付け、平成二年九月二七日、三六八万一六五六円を出金していることが認められるが、これらの口座においては、ワラント取引はされていない。

4  原告X2は、買い付けた投資信託は、償還期まで保有するつもりであって、償還期前に売却して別の投資信託を買い付ける投機的な売買は、被告Y1がBに無断で行っていたものである旨主張する。

しかしながら、Bは、買い付けた投資信託が次々に変わっていくので、いろいろな投資信託が売買されているらしいことは気づいていたものの、投資信託の運用を黙認していたことは自認しているところであり、原告X2代表者尋問の結果から認められるように、償還前の証券の売却については、当然預り証の返却があることからすると、意思に反して行われていたと認めることはできない。

5  なお、原告X2は、原告X1と異なり、平成七年度以前は、課税対象となる収益もなかったことから、税理士に被告会社から残高証明書を送付させることはなかった。

三  本件ワラント取引について

1  前記争いのない事実及び被告Y1の本人尋問の結果によれば、原告X1のワラント取引は、昭和六二年七月三〇日から、原告X2のワラント取引は、昭和六三年二月三日から始まるが、被告Y1は、平成二年一月二三日の買付及び平成二年三月二八日の売付を最後に、株が暴落したため、原告らについてのワラントの取引は一旦控えた。

前記争いのない本件ワラント取引によれば、平成二年三月二七日の売付以降、原告X1が保有したままでいたワラントは、昭和六三年七月二九日四六四万〇八六二円で買い付けた富士通C、昭和六三年八月一八日四七六万〇五一二円で買い付けた富士通C、平成元年一二月一日一二六三万五六四八円で買い付けた東武鉄道、平成元年一二月四日一一〇九万三五三一円で買い付けた日本通運、平成元年一二月二一日六〇二万〇三二八円で買い付けた日本信販4、同日六五一万八二五〇円で買い付けた岩谷産業2、平成二年一月四日八一七万一九五三円で買い付けたヂーゼルキキB、平成二年一月五日七二五万五一〇一円で買い付けたトーメン2、平成二年一月一〇日六七一万三八二〇円で買い付けたケンウッド3及び平成二年一月二二日四五四万〇二三四円で買い付けた三菱商事4の九銘柄であり、原告X2が保有したままでいたワラントは、平成元年一〇月二七日買い付けた松下電工、平成元年一一月二九日買い付けた三井不動産及び平成二年一月二三日買い付けたシャープ2の三銘柄である。

乙第一六号証の一ないし九、乙第一七号証の一ないし三及び被告Y1本人尋問の結果によれば、平成二年一月末頃から株価が下落傾向を示し、一旦は、回復の期待感ももたれたものの、結果的には下落の一途をたどり、ワラントも買付値に気配値(ワラント価格の目安)すら戻すことなく、若干の変動はあるものの、気配値は下降線をたどっていったことが認められる。

そして、前記争いのない本件ワラント取引のとおり、原告X1については、平成五年三月三一日マルベニワラントを二九三二円及びダイドウコウワラントを二九三二円で、平成五年五月一七日、イトーチュウワラントを五万二三三五円でそれぞれ買い付けし、平成四年六月八日東武鉄道ワラントを一五六九円で、平成五年三月二五日トーメン2ワラントを一四四九円及び日本信販4ワラントを一四四九円で、平成五年四月一二日、昭和六三年七月二九日四六四万〇八六二円で買い付けた富士通Cワラント及び昭和六三年八月一八日四七六万〇五一二円で買い付けた富士通Cワラントをそれぞれ二二三三円で、平成五年五月三一日日本通運ワラントを一三二六円で、平成五年六月二五日ヂーゼルキキBワラントを一三四二円で、平成五年七月九日岩谷産業2を一三四一円で売り付けた。原告瑞光寺については、平成四年三月九日三井不動産ワラントを、平成四年九月四日、松下電工ワラントを、平成五年八月一〇日、シャープ2ワラントをそれぞれ売り付け、平成五年八月一〇日、イトーチュウワラントの買付をしたが、原告らのワラントの買付は、右買付ですべて終了し、結局、権利行使期間を徒過したワラントは、原告X1が三銘柄、原告X2は、一銘柄存することとなった。

2  前記争いの争いのない本件ワラント取引によれば、原告X1の本件ワラント取引は、昭和六二年の買付は八件であり、うち六件は、購入後一ないし一三日程度で売り付けて数十万円もの利益を上げ、うち一件は、半年程度保有して一〇〇万円近くの利益を上げ、全体として約二〇〇万円ほどの利益を得ている。さらに、昭和六三年は、一年で六〇件ほど買い付けており、うち三六件は一〇日間以下の短い保有期間で売り付け、昭和六三年九月二八日買い付け昭和六三年一一月四日売り付けた日本通運ワラントが一五四二円及び昭和六三年一二月九日買い付け平成元年一月一〇日売り付けた古河鉱業ワラントが一六万三一五三円の損失を出したほか、昭和六三年七月二九日及び同年八月一八日買い付け平成五年四月一二日売り付けた富士通ワラントが九三九万九一四一円の損失を出している以外は利益を上げ、五〇ないし七〇万円もの利益を上げたワラントも六、七件存し、八〇〇万円近く利益を上げたものの、右富士通ワラントの損失のため、昭和六三年中買い付けたワラントの全体は損となっている。また、平成元年は、一年間で八二件ほど買い付けており、うち五三件は一〇日間以下の短い保有期間で売り付け、平成四年六月八日売り付けた東武鉄道ワラントが一二六三万四〇七九円の、平成五年五月三一日売り付けた日本通運ワラントが一一〇九万二二〇五円の、平成五年三月二五日売り付けた日本信販4ワラントが六〇一万八八七九円の及び平成五年七月九日売り付けた岩谷産業2ワラントが六五一万六九〇九円の損失をそれぞれ出したのを含めて一七件が損失を出したほかは利益を上げているため、右四件の売付遅れ以外のものは差引き二〇〇万円程度の利益を出しているものの、平成五年までの売付による差引きをすれば、平成元年中の買付けワラントは右四件の損失が大きいため、全体として三五〇〇万円近く損を出したこととなる。さらに、平成二年は、一月中に九件買い付けたが、利益を上げたのは五件でその利益額は四〇万円であるものの、残四件は、平成五年以降の売り付けないし権利行使期間の徒過により約二六〇〇万円以上の損失を出した。

前記争いのない本件ワラント取引によれば、原告X2の本件ワラント取引は、昭和六三年の買付は三〇件で、うち三件で計一二万三八二六円の損失を出した以外は利益を出し、差引き三〇〇万円の利益となっている。平成元年は、五八件買い付け、平成四年九月四日売り付けた松下電工ワラントが五四六万一七八〇円の及び平成四年三月九日売り付けた三井不動産ワラントが一二二五万四〇五〇円の損失を出した以外は、差引き約三五〇万円の利益を出しているが、右二ワラントの損失が大きく、全体としては、一四〇〇万円以上の損失となった。平成二年は三件買い付け、差引き八五〇万円近く損失を出している。

3  乙第九ないし一一号証及び被告Y1本人尋問の結果によれば、原告X1は、平成元年四月二七日、原告X2は、平成元年四月二八日、分離型ワラントと題するパンフレットに添付されたワラント取引に関する確認書に署名捺印し、被告会社に交付しており、右確認書には、「私は、貴社作成のワラント取引についての説明書の内容を理解し、私自身の判断と責任においてワラント取引を行うことを確認します。」と記載されていること、右パンフレットには、ワラント、ワラント価格の生れ方、ワラント投資の性格及び外貨建てワラント等について、説明がされていることが認められる。

4  甲第一一号証の一、二、甲第一二号証の一、二、甲第一三号証の一ないし三、乙第二三号証一ないし一五二、乙第二四号証の一二三、乙第二五号証の一ないし九四、乙第二六号証一ないし八二、被告Y1本人尋問の結果によれば、その間の取引については、取引報告書が作成され、原告らに送付されていたこと、右報告書には、新株引受権証券ないし外貨建ワラントと記載され、銘柄名、(権利行使期限の)日付、部店、約定年月日、受渡月日、売買、取引、通貨単位、数量、単価、売買代金、為替レート等が記載されていることが認められる。

5  また、乙第二二号証の三ないし五、乙第二七号証の五ないし八、一〇ないし一二、一六、一八、一九、二二、二三、二五、二八、二九、三一ないし三三、三五ないし三八、四〇、四一、四四ないし五四、五八ないし六九、七一ないし七三、乙第三三号証、乙第三四号証の一、二、乙第三五号証の二六ないし二八、三〇、三五、三七、三八、四一、四二、四四ないし四六、四八ないし五一、五三、五五ないし六六、七〇、七二、七四ないし七七、七九ないし八二、八四ないし八六、証人Dの証言及び被告Y1本人の尋問結果によれば、発行されたワラントの預り証については(預り証は買付後一週間目ころから発行されるため、当日売りないし翌日売り等の場合預り証は発行されない。)、原告らに対し、被告Y1がある程度まとめて持参し、その交換をしていたものと推認され、右預り証には、銘柄(ワラントならWRの記載がある。)、金額、権利行使最終日、発行年月日、部店等が記載されていることが認められる。

甲第九号証の一ないし五によれば、被告会社から原告らに渡された右預り証のうち、権利行使期間近くまで原告らにおいて保管していたないし右期間を徒過した預り証は、その日付が平成四年六月八日付けであることが認められる。しかしながら、乙第三八号証の二ないし五、七ないし一一及び被告Y1本人尋問の結果によれば、被告Y1が亀戸支店から日本橋支店に移った後、被告会社の方から、平成四年六月八日付けで東京証券投資部取扱店の預り証と差し換え交換されたことが認められ、従前の預り証は、平成四年六月八日、日本橋支店で回収されている。ただし、一部同じ銘柄で実際取引した以外のものを回収し、実際の取引したものを回収し忘れていることも認められる。

また、甲第一〇号証の一、二によれば、原告X1は、平成五年三月及び平成五年五月に買い付け、原告らが権利行使期間を徒過して保有していた各ワラントの預り証も、それぞれ買い付け直後の各発行日に作成されたものを保有しており、これらを、そのころ、被告Y1から差し入れられていたことが推認される。

四  本件ワラント取引の無断売買について

1  前記認定事実、証人Dの証言及び原告X2代表者尋問の結果によれば、原告らは、それまでの投資信託などの運用については、特に原告らから指定するのではなく、被告Y1が持ち込む商品で任せていたこと、右投資でかなりの利益を上げていたこと、そこで当面必要のない寄託金については、運用を被告Y1に任せていたことが認められ、その中には、取引報告書などにより原告らが具体的に個別に承諾していない取引もある旨認識していたものの、特に、そうした取引などについて、平成五年ころまで、原告らが、被告Y1に対し、苦情等運用の仕方について文句や異議を述べることはなかった。

また、前記認定のとおり、ワラントのWRが銘柄欄に記載され、権利行使最終日の記載もある被告会社で発行された預り証については、被告Y1が、随時まとめて、原告らに持参し、又は持ち帰る等している際も、右預り証の数もある程度多数になっていたものと推認されるが、それについても、特に異議等がされたと認めるに足りる証拠はない。

さらには、被告Y1本人尋問の結果によれば、ワラントは短期で高額の利益が出ることがあるので、これを報告すると、Dが喜び、さらによろしくお願いする旨依頼されていたこともあったことが認められる。

2  なお、前記認定のとおり、原告X1については、被告会社は、本件ワラントの取引期間中の昭和六三年、平成元年は直接原告らに対し、平成二年、平成三年は原告ら依頼の税理士に対し、預かり証券としてWRの記載と数量のある残高証明書を交付し、原告らの税理士により、原告らの毎年の決算期(三月末)に、参考資料とされていたこと、平成元年度のものについては、右税理士から右残高証明書の記載の不明点について、被告会社にファックスでの確認がされることもあったことが認められる。

3  甲第一四、四〇号証、証人Dの証言、原告X2代表者及び被告Y1本人尋問の結果によれば、取引明細の書類である受渡計算書は随時郵送され、甲第一八号証の一、二、甲第一九号証の一、二、乙第二〇号証の一、二及び被告Y1本人の尋問結果によれば、取引商品の銘柄名等が記載された「残高問い合わせ」に基づき、被告Y1が取引状況について、説明することもあったが、無断で売買されている旨の苦情が原告らからされたことはなかったことが認められ、また、D及びBは、売却に当たり、何を売却するかについて、被告Y1に任せていたと供述しながら、その報告がされていたかいないのか、記憶にない上 関心もなかった旨きわめて曖昧な供述をしている。

4  さらに、前記認定のとおり、原告らは、被告会社から交付された確認書に署名捺印している上、甲第四二号証によれば、Dもワラントについてその名称を聞いていた旨認めていながら、証人尋問においては、ワラントという名前も聞いていなかったと明らかに異なる証言をしていることが認められる。

5  以上の事実からすれば、本件ワラント取引を、原告X1は、約二年半の間行い、原告X2も、約二年間ワラント取引の報告が随時されいたのであるにもかかわらず、何ら異議もとどめず、黙認していたもので、もともと、運用を被告Y1に任せていたことから、本件ワラント取引が無断であったとまでは認め難い。。

五  本件ワラント取引の適合性原則遵守義務違反について

原告らは、被告らは、証券会社が顧客の利益を軽視して過当な勧誘を行うことを防止するため、顧客の意向、財産状態及び投資経験等に適合した投資勧誘を行うことを要求する適合性の原則を遵守する義務に違反した旨主張するので、以下、この点について検討する。

1  前記争いのない事実のとおり、原告らは、いずれも宗教法人であり、甲第四三号証、弁論の全趣旨によれば、被告会社との取引は、収益事業から生じた所得以外の所得として、税務申告されていない。

前記争いのない事実、前記認定のとおり、Dは、旧制府立○○高等女学校を卒業して、夫Aが住職をする原告X1の総務、財務の実務を長年担当してきたのであり、被告会社との取引においては、その都度チェックして決算まで一円の狂いもなく報告できていた。さらには、前記認定のとおり、原告X1は、税務上、決算報告をする必要から、税理士を依頼し、有価証券取引についても、税理士に対し、毎年残高証明書を送付し、どの程度の有価証券取引をしているか、報告してきた。

また、前記争いのない事実及び認定のとおり、Bは、昭和二三年生まれで、昭和四七年、○○大学第一文学部を卒業後、○○寺での修行後僧の資格を取得し、昭和四九年一一月から原告X2の住職代表役員となっている。

2  甲第一八号証の一、二、甲第一九号証の一、二によれば、昭和六〇年、六一年ころの原告X1の被告会社との取引残高は、額面で約七〇〇〇万円程度であり、その他、原告X1は、郵便貯金を約一〇〇〇万円、銀行預金等を約一一〇〇万円程度有していたことが認められる。

3  また、本件ワラント取引が行われた原告らの口座は、前記認定の出入金の状況からすると、常時出入金されているような資金ではなく、何か必要なときのみ動かすような資金であって、前記認定のように、その運用は、必要がない限り、被告Y1に任せていたものである。

その上、前掲甲第四三号証によれば、原告X1と被告会社との取引は、税務上、寺の収益事業から生じた所得以外のものとして、別会計処理されているものであり、他の所得と分離し税務申告もしていなかったことが認められ、随時取引商品、その収支等を把握するような帳簿も特に作成されていなかったことは、原告らの自認するところである。

4  原告らは、被告Y1に対し、お寺のお金は、個人のものではないから、絶対に株式のように値動きによって元本が安全でないものは、買わないよう指示していた旨主張し、右主張に沿うD及び原告X2の供述及び甲第四二、六四号証の会談速記録等が存し、また、Dの証言等によれば、確かに、Dの親が株式で損をしていたことから、株式売買にはほとんど手を出していなかったことが認められる。

しかしながら、原告らに、寺の金であるから安全な運用で確実に保管していく旨の認識があったとすれば、被告Y1を介して被告会社に預けている寺の金がどのように運用されているか収支の詳細について関心を抱いてしかるべきであるが、原告らはそのような帳簿類を作成していないことは原告らも自認している。さらに、前記認定事実及び前掲甲第四二号証によれば、原告らの購入している投資信託には株式投資を取り入れた必ずしも元本保証のされていない商品も存し、原告らはこれをも認識していたことが認められ、さらには、被告Y1の供述によれば、当初は積立投資信託等比較的値動きの少ない商品を購入していた段階では、そのような指示もあったものの、それから随時、株式ファンド、転換社債、外国投信等にも取引が拡大していき、原告X1で約五〇〇〇万円、原告X2で約七〇〇万円もの収益をあげていたことからすると、原告らもその認識が変化していったものと受け取られるべく対応していたことが認められ、本件ワラント取引をした各口座で寄託する金がお寺のお金だからとの発言を前提とする被告Y1に対する危険なものは一切やらないでほしい旨の指示が、被告Y1との当初取引から多数の利殖商品をすでに売買し多額の収益をあげていた後の昭和六二年ないし平成元年ころの取引まであったか認めるに足りる証拠もなく、かえって、前記認定のとおり、平成二年一月頃、Dは、自宅部分を新築する際、その建築資金のうち四〇〇〇万円について、被告Y1に原告X1の投資信託等の売却を依頼しているなど、寺のお金と個人のお金が節自体必ずしも分けて扱っていたものとは解し難く、本件ワラント取引の時点で、被告Y1において、原告ら主張のような認識で、原告らから当時までそのような指示がされていたと認識しうべきであったとは認められず、また、被告Y1がその運用で損を出しても特に原告らからその運用方法について異議などが述べられたと認める証拠もなく、かえって、被告Y1の供述によれば、多額の運用益が出ると、Dは喜び、食事代までも被告Y1に渡していたことが認められる。そして、前掲甲第六四号証によれば、Dも被告Y1と原告らの理解にずれがあったかもしれない旨認めているところである。

5  なお、甲第五六号証及び弁論の全趣旨によれば、AとDの長女で、勤務医と結婚しているEにおいても、Dの紹介で、昭和五五年ころから被告Y1を介して被告会社と夫名義で取り引きしているものの、同口座においては、ワラント取引は一切行われていないことが認められる。

6  以上の事実によれば、原告らは、一〇年以上の間、絶えず、被告会社との取引を継続し、その間、段階的に投資対象が拡大していき、株式投資も取り入れたファンド類や転換社債等利殖商品を買い付けてきていたもので、原告らは、これにより、多大な利益を得てきており、原告らも右利益を活用してきていたものであり、寄託されていた金額、甲第一六号証の一、二、甲第一七号証等から認められる原告X1の資産状況、また、D及びBの学歴、原告らにおける経理処理の実績、甲第四一、四二号証によるBの理解力等からすると、適合した投資勧誘を行うことを要求する適合性の原則を遵守する義務に違反した取引とまでは認められない。

六  本件ワラント取引の説明義務違反について

1  被告らは、昭和六二年七月ころ、Dから証券市場について質問されたことから、被告Y1は、株式市場が活況を呈しており、株価が上がるとの予想を述べて、ワラントの購入を勧め、ワラントの説明を行ったところ、Dがどの銘柄がよいか訊ねたため、後日、三菱地所ほか数社を選んで訪問し、購入してもらい、翌八月、売却を勧め、売却し、一〇日ほどで四二万四二〇八円の儲けが出たことを報告すると、Dは喜び、被告Y1が株価が上がった結果である旨説明し、また利益を得ていく旨話すと、Dはよろしくお願いする旨食事代として二万円ほどを被告Y1に渡した旨主張し、右主張に沿う陳述及びその際ワラントの内容、リスク、行使期限について、Dに対し、説明した旨の供述等(乙第一八号証、被告Y1本人尋問)が存する。

また、被告Y1は、昭和六三年二月ころ、Bに対しても、ハイリスク、ハイリターンであるけれど、株がこれからも高いと思うと説明して、ワラントを勧めた旨供述する。

2  しかしながら、甲第三九、四一、四二、五六、六四号証及び弁論の全趣旨によれば、平成五年二月一六日及び平成五年四月一九日、原告らは、被告Y1を呼んで事情の説明を受けているが、Dは、ワラントという名については記憶しているものの、その内容については十分把握していなかった旨述べ、その際、被告Y1の説明は、必ずしも、ワラントの行使期間等について少なくとも原告らが十分理解するほどに口頭で説明したとは認められず、被告Y1自身説明不足であったことを認め、確かに既に価値がゼロ近くになった責任を問われている者の対応としては致し方がないとしても、必ずしも適切明快なものとはいい難く、原告ら代表者らのやりとりとをあわせ考慮すると、それまでの取引についても、本件ワラント取引の買付が株価の上昇傾向にあった時期であるから権利行使期間を徒過するとは被告Y1において考えにくい時期であったとしても、ワラントがどういう仕組みでどのような値動きをするものか等について原告らに理解できるよう説明すべきであるのに、これを十分していなかったものと推認される。

3  確かに、前記認定のとおり、原告らは、ワラント取引についての説明書の確認書に署名捺印していることから、説明書を読む機会は存したものと推認されるが、ワラント売買を勧誘する以上は、右説明書を渡し各顧客にその理解を期待するのみではなく、右説明書と共にその意味内容を顧客が理解したか確認しながらの説明の補充を要するものと解される。前掲甲第四一、四二号証によれば、利行は、自己の取引商品について、理解する能力は十分備えていたにもかかわらず、何の取引をしているかの認識もなかったことが認められ、寺の金と言いながら、長い間、その取引内容に関心を持たなかった利行の方にも問題はあるものの、被告Y1の説明不足があったことは否めない。

4  また、乙第二〇号証の一、二及び被告Y1本人尋問の結果によれば、少なくとも、平成二年の売買中止後の平成三年七月五日、平成三年五月八日付けの「残高問い合わせ」を持参し説明報告して、右残高の確認のための原告らの署名を得ているが、右書類には、ワラントなどの銘柄の記載は存するものの、証券価額等の記載はないことが認められる。

なお、被告Y1は、右現状報告に行った際、ワラントの期日が近くなって消えてしまう旨説明し、損失が出ますが期限が来たら長いもので考えさせてもらいたい旨述べて、売却の承諾を得て、平成四年六月八日、東武鉄道ワラントを売り付けた旨供述するが、前掲甲第四一、四二、六四号証の平成五年二月一六日及び同年四月一九日の原告らと被告Y1の会談によれば、ワラントの行使期間などについて相手方に十分理解できるだけの説明をして、右売買の承諾を得たものとは認め難い。

また、乙第二九ないし三二号証、被告Y1本人尋問の結果によれば、平成四年中に、被告会社は、原告に対し、保有残のワラントの行使期限が近づいている旨の通知を発していることが認められるが、被告Y1が、右期間について、十分説明していない以上、原告らの理解を補足するものではない。

さらには、前記認定のとおり、原告X1は、平成四年六月八日、東武鉄道ワラントを一五六九円で売り付けているものの、被告Y1本人尋問の結果によっても、その売り付ける前提で、被告Y1が、具体的にいくらの損失が出るものとの説明をしたとは認められない。

七  なお、原告らの主張するワラント販売後適当な時期に売却を促すなどの助言義務については、本件ワラント取引のうち平成二年三月以降売付時期を失したものについては、株価の暴落により、売付時期の判断が極めて難しいものであったと推認できるから、本件においては、基本的には説明義務の問題と重なるものと解される。

八  損害及び過失相殺

1  右説明義務違反により、原告らは、本件ワラント全取引に運用された寄託金相当額の損害を受けたこととなる。

2  しかしながら、前記認定のとおり、原告らは、分離型ワラントの説明書を交付されていたことが、右説明書添付のワラント取引の確認書に、それぞれ署名捺印していることから推認され、また、取引報告書の送付を受け、原告X1は、残高証明書を自ら得又は税理士宛送付させ、原告らは預り証の交付を受け、適宜、「残高問い合せ」により、取引商品を確認することができ、かつ、これを持参した被告Y1から説明を受ける機会が十分存したこと、寺の金と言いながら、その取引にほとんど関心を抱かず、収支のみ関心を持って記録し、取引明細を記載した帳簿を作成する等の処理もせず、被告Y1に任せきりであったことが認められる。

なお、Dは、被告Y1から取引報告書などについて、見なくていい旨ないし破って捨てていい旨言われた旨供述するが、被告Y1の供述によれば、預り証との対比で保管しなくていい趣旨から冗談でDが言ったことに対し回収しない旨答えたことを指すものと認められ、従前、長い間、被告会社と取引をしてきて、原告らはその取引報告書を見てきていたもので、その送付される趣旨を理解していたものと推認されるから、被告会社から送られる取引報告書を原告らが開披せず、破棄していたとしても、まさに自己の責任と言わざるを得ない。

以上の事情その他、前記認定の事実を総合考慮すると、原告らの過失割合は八割と認めるのが相当である。

3  なお、確かに、前記争いのない事実及び認定事実によれば、被告Y1による本件ワラント取引は、きわめて短い保有期間で売却しているものも多く存し、被告Y1は、被告会社の外交員として、顧客である原告らに対する十分な説明を尽くしていなかったことは認められるものの、本件ワラントの全体の収支がマイナスとなったのは、株価の下落によるもので、それまでの買付売付行為自体は、昭和六二年ないし平成元年の株価が上昇していた当時及び平成二年一月末の株価の暴落後の取引として、これが不法行為を認めるほどの違法性を認めるに足りる証拠はなく、契約上の義務違反の程度に止まると解される。

よって、被告Y1本人に対する不法行為責任は認められず、被告会社に対して、弁護士費用相当額の損害を請求する理由もなく、遅延損害金は本訴状送達の日の翌日から発生する。

九  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 比佐和枝)

<以下省略>

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