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東京地方裁判所 平成6年(ワ)19885号 判決 1996年5月09日

原告

清水彦一

被告

有限会社本国

主文

一  被告は、原告に対し、金六七三九万五九八二円及びこれに対する平成元年六月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その八を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

一  被告は、原告に対し、金三億二四二五万〇八〇九円及びこれに対する平成元年六月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用の被告の負担及び仮執行宣言。

第二事案の概要

本件は、もともと身体障害者であつた原告がシヤツターを閉めた車庫内にいたところ、シヤツターを破つて車庫内に進入してきた車両に衝突されてさらに重い障害を負つたことから、右車両の保有者である被告に対し、自賠法三条に基づき、右傷害による人的損害の賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実

1  本件交通事故の発生

事故の日時 平成元年六月二二日午後六時五五分ころ

事故の場所 東京都渋谷区東三丁目一六番七号所在の建物一階にある車庫内

被害者 原告

加害車両 訴外北島眞弓の運転する普通乗用自動車(品川五三さ九二九八。以下「被告車」という。)

事故の態様 原告が、シヤツターを閉めた状態の右車庫内で、駐車中の同人の自動車の後部トランク付近を歩いていたところ、突然被告車が、シヤツターを破つて車庫内に飛び込んできて原告に衝突し、原告は、自車と被告車とに狭圧された。

2  損害の発生

原告は、本件交通事故により、骨盤骨折、右大腿骨転子間骨折、左大腿骨内顆骨骨折、膝関節内骨折を伴う左下腿骨骨折、右下腿骨骨折の傷害を負つた。その治療のため、原告は少なくとも以下の損害を被つた。

(一) 治療費 九八九万五二四〇円

(二) 入院中の職業付添人付添費 二七六万六九五二円

(三) 入院雑費 五八万〇八〇〇円

(四) 通院交通費 二七万五七〇〇円

3  責任原因

被告は、被告車の保有者であり、これを自己のため運行の用に供していたから、自賠法三条に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任がある。

4  損害の一部填補

原告は、被告から、四五六一万九九六二円の支払を受けた。

二  争点

本件の争点は、前記一2に記載した以外の損害額であり、当事者双方の主張は以下のとおりである。

1  原告の主張

(一) 入院中の近親者付添費 一一一万六〇〇〇円

6,000×186=1,116,000

(二) 自宅療養中の近親者付添費 二九六万五五〇〇円

4,500×659=2,965,500

(三) 将来治療費

(1) 右大腿骨プレート抜去手術関係費

<1> 手術費 七万円

<2> 入院費、入院雑費 一四万七〇〇〇円

(2) 左下腿骨プレート抜去手術関係費

<1> 手術費 七万円

<2> 入院費、入院雑費 一四万七〇〇〇円

(3) 左膝人工関節手術関係費

<1> 手術費 三五万円

<2> 入院費、入院雑費 四二万円

(四) 将来付添費 二四〇五万一一二七円

4,500×365×14.643=24,051,127

(五) 自動車改造費 四五万九〇九〇円

原告は、車を不自由なく運転できていたところ、本件事故により、身障者用手動式運転装置が必要となつた。その取付け費用一八万円を、五年に一度、二七年間にわたり必要とし、中間利息の控除について、ライプニツツ係数を用いると、右金額となる。

(六) 家屋改造費 四九五万七九九六円

家屋改造費一四八九万〇五七〇円のうち、キツチン関係の費用三八七万二八〇〇円を除く改造費の四五パーセントである四九五万七九九六円が、本件事故と相当因果関係ある損害である。

(七) 休業損害 六三五七万一六六五円

原告は、司法書士を開業していたところ、本件事故により、司法書士業務を一切行うことができなくなつた。事故前三年間の平均年収は二一二八万九九〇八円であつたから、これを基礎収入とし、休業期間を二年三六〇日として計算すると、右金額となる。

(八) 後遺症逸失利益 二億一六五四万七七八七円

原告は、本件事故前から、身体障害者等級四級の交付を受けていたが、本件事故により改めて二級の認定を受けた。また、原告は、本件事故による後遺障害により、司法書士業務を再開することが不可能となつた。原告の後遺症逸失利益につき、前記平均年収二一二八万九九〇八円を基礎収入とし、本件事故による労働能力喪失率を九二パーセントとし、六七歳までの一六年間の後遺症逸失利益につき、中間利息の控除についてライプニツツ係数を用いて計算すると、右金額となる。

(九) 慰謝料

(1) 入通院慰謝料 四六〇万円

原告が、本件事故により、突然被告車が飛び込んできた恐怖、二度衝突されて死を覚悟したときの恐怖、苦痛、事故直後の傷の痛み、手術の痛み、ベツド上での長期間の牽引固定治療の苦痛等、筆舌に尽くしがたい苦痛を被つたことからすると、右金額が相当である。

(2) 後遺症慰謝料 一四五〇万円

原告の身体障害者等級二級の後遺障害は、自賠責保険等級四級に相当する。

なお、前記(三)の将来治療費及び(六)の家屋改造費については、仮にそれらが認められない場合には、慰謝料の斟酌事由とすべきである。

(一〇) 弁護士費用 二九〇〇万円

前記(一)から(一一)までの損害額に、前記一2の当事者間に争いのない損害額を加え、前記一4の既払分を控除すると、三億三〇八七万一八九五円となるが、原告は、被告に対し、右合計額の一部である。三億二四二五万〇八〇九円の支払を求める。

2  被告の主張

原告主張の損害は、いずれも不知ないし争う。特段の主張は次のとおり。

(一) 休業損害

原告が司法書士を開業していたことは認めるが、基礎収入は、事故前の三年間を基準とすべきではなく、前年度の昭和六三年度の所得金額である六四四万八二二一円を基準とすべきである。

(二) 後遺症逸失利益

原告が、本件事故前から、身体障害者等級四級の交付を受けていたところ、本件事故により改めて二級の認定を受けたことは認めるが、原告の後遺障害は、骨盤変形の一二級五号と右股関節及び右膝関節の機能障害による九級により併合八級と認定されており、実質的な労働能力喪失率は、九級の三五パーセントとするのが相当である。また、基礎収入は、事故前の三年間を基準とすべきではなく、前年度の昭和六三年度を基準とすべきである。

(三) 慰謝料

原告が二度衝突されたことは否認する。

第三争点に対する判断

一  損害額

1  原告の後遺障害、労働能力喪失率

前記争いのない事実及び証拠(甲一ないし六、一四、一八、一九、乙一、四ないし六、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 原告は、昭和五六年一一月二日、骨軟化症による両股関節機能障害により、東京都から、身体障害者等級表第四級の認定を受けた。原告は、本件事故当時、その歩行には二本の杖を用いていた。

(二) 原告は、平成元年六月二二日、本件事故により、<1>骨盤骨折、<2>右大腿骨転子間骨折、<3>左大腿骨内顆骨骨折、<4>右下腿骨骨折、<5>膝関節内骨折を伴う左下腿骨骨折、<6>腰部挫傷の傷害を負つた。原告は、右治療のため、同日から同年一〇月一一日まで、駿河台日本大学病院に入院し、同年八月三日には、右<2>から<5>の治療のため、観血的整復固定術を受け、左大腿骨骨折については骨移植術を受けた。同人は、同年一〇月一一日から平成二年八月二九日まで、日本大学医学部付属稲取病院に入院し、同月三〇日から同年一〇月一八日まで、再び駿河台日本大学病院に入院し、同年九月六日、右下腿のプレート及びスクリユーの抜去術を、左下腿の一部スクリユー抜去術を受けた。また、<3>の骨癒合不良のため、スクリユーの入れなおしを同時に行い、さらに、異物反応による右下腿外側の腫瘤摘出術を受けた。原告は、駿河台日本大学病院を退院した翌日である平成二年一〇月一九日から平成四年六月一七日まで、同病院に通院し(実通院日数二二日)、同年三月二三日、<3>の入れなおしたスクリユーの抜去術を受けた。

(三) 原告の症状は、平成四年六月一七日に固定したが、本件事故により、右大腿骨転子間骨折に伴い、右股関節に著しい機能障害が、右下腿骨骨折に伴い右膝関節に機能障害が、左下腿骨骨折により左膝関節に著しい機能障害が、骨盤骨折及び骨盤から採骨して左下腿骨骨折部位へ移植したことによる骨盤骨の変形が、そして、左腓骨神経麻痺による知覚障害が、それぞれ残つた。具体的な動作としては、杖を二本用いて歩行することが可能であるが、腰椎、股関節、膝関節の運動制限が著明なため、大便後の後始末ができない、平面に座れない、転んだら立ち上がれない、四つんばいになれない、足の爪が切れない、パンツ、靴下をはいたり脱いだりできない、靴のひもが結べない、ほどけない、物が拾えない、ズボンがはけない、しやがめない、足を投げ出して座れない等の障害が残つた。

(四) 原告の右大腿骨及び下腿骨には、プレート、スクリユーが入つているが、右症状固定時においては抜去は予定されておらず、内固定が障害になるようならばその時点で抜去を考慮することとされた。

以上の事実を総合して考慮すれば、従前の身体障害分を除外した。本件事故により原告に生じた後遺障害は、自賠法施行令二条の後遺障害別等級表の併合八級に相当し、その労働能力喪失率は四五パーセントであるとするのが相当である。

2  損害項目

(一) 近親者付添費 八三万七〇〇〇円

原告の前記1の受傷の程度からすれば、原告は、その入院期間中、付添介護が必要な状態であつたと認められるところ、甲一九及び原告本人によれば、原告の妻である訴外美奈恵が、駿河台日本大学病院への入院期間一六二日間は泊り込むことなく、日本大学医学部付属稲取病院への入院期間中は一〇五日間は泊り込んだうえ、原告の付添介護をしたことが認められる。近親者の付添費用一日当たり四五〇〇円とするのが相当であるから、原告の請求どおり、駿河台日本大学病院入院期間中は、一六二日間の二分の一の付添費を、日本大学医学部付属稲取病院入院期間中は一〇五日間の付添費を認める。

(162×0.5+105)×4,500=837,000

(二) 自宅療養近親者付添費 一五二万円

原告の前記1の後遺障害の程度からすれば、原告の介護が必要なのは、排便、着替え、起き上がる場合、しやがむ場合等であり、随時の介護で足りると認められるから、一日当たりの付添費を二五〇〇円とし、退院日から症状固定時までの六〇八日間の付添費を認める。

2,500×608=1,520,000

(三) 将来治療費

(1) 右大腿骨プレート抜去及び左下腿骨プレート抜去手術関係費

前記1のとおり、原告の右大腿骨及び下腿骨には、プレート、スクリユーが入つているが、症状固定時においては抜去は予定されておらず、内固定が障害になるようならばその時点で抜去を考慮するということであり、将来右手術を受けることが確実であるとはいえない。したがつて、右大腿骨プレート抜去手術関係費及び左下腿骨プレート抜去手術関係費については、これを損害として認めることはできない。

(2) 左膝人工関節手術関係費

甲一四及び原告本人によれば、原告の左膝は、症状固定時において、軟骨損傷のため、変形性膝関節症となつており、原告は、駿河台日本大学病院に入院した際、医師から、将来は人工関節手術が必要となるかもしれないと告げられたことが認められるが、右事実をもつてしても、原告が将来確実に左膝人工関節手術を受けるとはいえない。したがつて、左膝人工関節手術関係費については、これを損害として認めることはできない。

(四) 将来付添費 一三三六万一七三七円

原告本人及び原告の前記1の後遺障害の程度によれば、原告は、将来にわたつて、排便や着替えをする場合、起き上がる場合、しやがむ場合等に介護が必要とされること、平成五年三月以降は、訴外美奈恵は半日パートに出ていることが認められ、これらの点を総合すると、原告は、将来にわたつて、介護が必要とされるが、その程度は随時の介護で足りると認められる。原告は症状固定時には五一歳であるから、右当時の平均余命までの二七年間にわたり、一日当たりの付添費は二五〇〇円とし、中間利息の控除につきライプニツツ係数を用いて、計算すると、次の各金額となる。

2,500×365×14.643=13,361,737

(五) 自動車改造費 五八万五九三六円

甲六及び二二によれば、原告は、昭和四二年三月二二日、普通乗用自動車の運転免許を取得していたところ、本件事故後である平成三年一二月九日にその更新をした際には、免許の条件として眼鏡等のほか、原付車は三・四輪に限るとの条件が付されたが、平成六年一二月七日に更新した際には、眼鏡等のほか、アクセル・ブレーキは手動式のオートマチツク車に限るとの条件が付されたこと、平成七年一二月一四日の時点で、身障者手動式運転装置の代金は一八万円と見積もられたことが認められる。原告は、本件事故により前記1の後遺障害を負つたことから、平成三年の更新時には、手動式運転装置使用の条件が付されなかつたにせよ、右運転装置に要する費用は、本件事故による損害であると認めるのが相当である。平成七年一二月一四日以降、平均余命までの二四年間にわたり、五年に一度の割合で、右運転装置を必要とするものと認め、中間利息の控除については、ライプニツツ係数を用いて計算すると、右金額となる。

180,000×(1+0.7835+0.6139+0.481+0.3768)=180,000×3.2552=585,936

(六) 家屋改造費 なし

甲二一によれば、原告の自宅を改造する費用として、一四八九万〇五七〇円が見積られたことが認められるが、原告は本件事故前からも杖を二本用いて歩行していたのであつて、事故後も同様であること、右見積書に添付された図面には、車椅子で移動する人の絵が記載されているが、原告は車椅子を用いていないこと等、右自宅の改造と本件事故との因果関係が明らかでないといわざるをえないから、これを本件事故による損害として認めることはできない。

(七) 休業損害 一九〇〇万〇四四九円

証拠(甲一五ないし一八、原告本人)によれば、原告は、本件事故当時、司法書士の資格を有し、自ら司法書士事務所を開業して経営していたところ、本件事故による傷害の治療のため、平成二年一〇月一八日までは入院し、その後は、事実上司法書士業を行わず、本件事故前に有していた事務所は東京都の都市計画により取り壊されたことが認められる。右事実からすれば、原告が退院する平成二年一〇月一八日までは、同人は働くことができなかつたのであるから、一〇〇パーセントの休業損害を認め、その退院の翌日である同月一九日から症状が固定した平成四年六月一七日までは、実通院日数が二二日に過ぎないことを考慮すると、前記1の労働能力喪失率四五パーセントにしたがつた休業損害を認めるのが相当である。

この点、原告は、杖なしの歩行が不可能となつたこと、トイレでの大便の単独処理が不可能となつたこと、特殊車両しか運転が不可能となつたこと、座る、かがむ等の動作を単独で行えなくなつたこと等から、出張による司法書士事務や迅速なデスクワークが不可能となり、司法書士業を事実上廃業を余儀なくされたとして、一〇〇パーセントの休業損害を主張する。なるほど、原告は、本件事故による後遺障害の結果、従前よりも下半身の行動等に不自由を来すこととなつたことは明らかであるが、原告は本件事故前にも杖をついて歩行しながら司法書士業をこなして後記認定のとおり相当の収益を上げていたのであり、司法書士業における労働の性質は、基本的に頭脳労働であること、トイレの問題は、携帯用のウオツシユレツトを持つことにより、出張は、改造車両を運転し、本件事故前よりも時間的に余裕をもつて行動することにより、迅速なデスクワークは、手持ち件数を減ずることにより、いずれも克服し得ることからすれば、原告は、前示の後遺障害のために司法書士業を廃業しなければならないものとは認めがたい。原告は、本件事故後、司法書士業を一切行つていないが、原告は、その主張にかかる問題点があることから司法書士業を行うことができないものと判断してこれを実施していないに過ぎず(原告本人により認める。)、事実上廃業状態にあることは、右判断を左右するものではない。

そして、原告は、昭和六一年には、その所得金額を一三三二万八三五四円として確定申告を行つており、同様に、昭和六二年には九〇五万六一九三円として、昭和六三年には六四四万八二二一円として、それぞれ確定申告を行つていたことが認められるから、右過去三年間の収入の平均額である九六一万〇九二二円を基礎として休業損害を認めるのが相当である。

この点、原告は、公租公課、人件費のうち親族に支払われたもの及び専従者給与については原告の収入から控除すべきでないと主張する。しかしながら、これらの費用は、右認定にかかる所得金額を得るために必要な経費であるから、これを控除すべきは当然である。公租公課につき、原告は、最高裁昭和四五年七月二四日判決を引用して、原告の収入から控除すべきでないと主張するが、同判決は、営業収益に対して課せられるべき所得税その他の租税額を控除すべきでないとし、右認定にかかる所得金額に対して課せられるべき所得税(昭和六一年度でいえば、一一七万六二〇〇円。甲一五により認める。)や住民税を控除すべきではないとしているのであり、司法書士業務遂行のために必要とされる公租公課(例、事務所の固定資産税)については判示していない。また、原告本人によれば、原告の父母が電話番等に従事していたことが認められ、訴外美奈恵はアルバイト程度の労働をしていたことを自認しているのであつて、親族に支払われた人件費や妻の専従者給与は、それが一般の従業員の労働に対する給与と比較して高額であつても、実際に就労したことから人件費や専従者給与が支払われた以上、著しく高額であつて贈与と認められない限りは、必要経費として原告の収入から控除すべきは当然である。そして、甲一五ないし一七によるも、原告がその両親や妻に対して支払つた給与は著しく高額であるとは認められない。そうすると、原告の右主張は、いずれも理由がなく、右九六一万〇九二二円を基礎として一日当たりの収入を二万六三三一円とし、平成二年一〇月一八日までの四四八日間は一〇〇パーセントの、同月一九日から平成四年六月一七日までの六〇八日間は四五パーセントの休業損害を認めることとし、これを計算すると、右金額となる。

(26,331×448)+(26,331×0.45×608)=19,000,449

(八) 後遺障害逸失利益 四六八七万二一三〇円

前記1のとおり、原告は、本件事故による後遺障害により、その労働能力を四五パーセント喪失したと認められる。

原告は、本件事故に遭わなければ、病状固定時から六七歳に達するまでの一六年間、前記(七)の過去三年間の収入の平均額を得ることができたと推認されるので、その額を基礎として、ライプニツツ方式により中間利息を控除して一六年間の逸失利益の本件事故時の現価を求めると、右金額となる。

9,610,922×0.45×10.8377=46,872,130

(九) 慰謝料

(1) 入通院慰謝料 三二〇万円

原告の入院日数は四八四日、通院期間は一年八カ月で通院実日数は二二日であることからすれば、原告の入通院慰謝料として三二〇万円を認めるのが相当である。

(2) 後遺症慰謝料 八〇〇万円

原告の1記載の後遺障害の程度のほか、本件事故が訴外北島眞弓の一方的な過失によるものであること、将来再手術をしなければならない可能性があること、その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると、同人の右後遺障害に対する慰謝料としては、八〇〇万円を認めるのが相当である。

3  小計 一億〇六八九万五九四四円

前記2の損害項目の合計に、前記第二、一2の当事者間に争いのない損害額を加えた額である。

4  損害の填補 四五六一万九九六二円

5  合計 六一二七万五九八二円

二  弁護士費用

本件の事案の内容、審理経緯及び右認容額等の諸事情に鑑み、原告の本件訴訟追行に要した弁護士費用は、六一二万円を認めるのが相当である。

三  以上によれば、原告の本件請求は、六七三九万五九八二円及びこれに対する本件事故の日である平成元年六月二二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、右の限度でこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言について同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 南敏文 竹内純一 波多江久美子)

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