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東京地方裁判所 平成6年(ワ)19061号 判決 1997年3月31日

原告

ハワード株式会社

右代表者代表取締役

早川豪彦

右訴訟代理人弁護士

建入則久

窪田英一郎

被告

カイタック株式会社

右代表者代表取締役

貝畑雅二

被告

株式会社カイタックインターナショナル

右代表者代表取締役

貝畑雅二

被告ら訴訟代理人弁護士

寺澤正孝

主文

一  被告会社カイタックインターナショナルは、原告に対し、金八六六万九八〇〇円を支払え。

二  原告の被告株式会社カイタックインターナショナルに対するその余の請求及び被告カイタック株式会社に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用は、原告に生じた費用の五分の三、被告株式会社カイタックインターナショナルに生じた費用の五分の一及び被告カイタック株式会社に生じた費用を原告の負担とし、原告に生じたその余の費用と被告株式会社カイタックインターナショナルに生じたその余の費用を被告株式会社カイタックインターナショナルの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

被告らは、原告に対し、連帯して金一〇〇〇万円を支払え。

第二  事案の概要

本件は、原告が、被告らに対し、後記一1の商標権に基づき、被告らが、平成六年三月から八月までの間に、後記一2のとおり、業として販売する商品(ポロシャツ及び紳士用パンツ(スラックス)。以下、「被告商品」という。)に、別紙二1記載の標章(以下「被告標章1」という。)及び別紙二2記載の標章(以下「被告標章2」といい、被告標章1と併せて「被告標章」ということがある。)を付し、被告商品を販売したことが、右商標権を侵害するものであるとして、不法行為に基づく損害賠償として、商標法三八条一項所定の被告らが侵害行為により得た利益の額若しくは同条二項所定の使用料相当額、及び弁護士費用相当額の合計額の内金一〇〇〇万円の支払を請求している事案である。

一  基礎となる事実

1  原告は、左記の商標権(以下、「本件商標権」といい、その対象たる登録商標を「本件登録商標」という。)を有している(争いがない)。

(一) 出願日 昭和五七年一月五日

(二) 出願公告日 昭和六二年一一月七日

(三) 登録日 昭和六三年六月二四日

(四) 登録番号 第二〇五三一一九号

(五) 指定商品 第一七類(平成三年政令第二九九号による改正前の区分、以下「旧商品区分」という。)

被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)

(六) 登録商標 別紙一のとおり

2  被告株式会社カイタックインターナショナル(以下「被告カイタックインターナショナル」という。)は、業として販売する被告商品につき、平成六年三月から八月までの間に、被告標章1を印刷した付け札をポロシャツ及び紳士用パンツに付し、被告標章1をポロシャツの襟札に付し、被告標章2をポロシャツの胸ポケットに付し、これらの被告商品を販売した(争いがない)。

3  ポロシャツ及び紳士用パンツは、本件商標権の指定商品「被服」に含まれる(弁論の全趣旨)。

4  前記2の被告標章1及び同2を付したポロシャツの売上額は一億三九一〇万円、被告標章2を付した紳士用パンツの売上額は一億一六五六万円、合計額は二億五五六六万円をいずれも下らない(争いがない)。

5  被告カイタック株式会社(以下「被告カイタック」という。)は、左記の商標権(以下、「被告商標権」といい、その対象たる登録商標を「被告登録商標」という。)を有しており(争いがない)、被告カイタックインターナショナルは、被告カイタックから被告登録商標の使用につき許諾を得ている(乙四の1、弁論の全趣旨)。

(一) 出願日 平成四年二月一七日

(二) 出願公告日 平成五年八月二六日

(三) 登録日 平成六年五月三一日

(四) 登録番号 第二六六八〇三四号

(五) 指定商品 第一七類(旧商品区分)

被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)

(六) 登録商標 別紙三のとおり

二  争点

1  本件登録商標と被告標章1、被告標章2はそれぞれ類似するか。

2  被告カイタックインターナショナルによる被告標章2の使用は、被告商標権の行使といえるか(同被告の抗弁の主張の成否)。

3  被告カイタックは、被告カイタックインターナショナルと共同して、被告標章を被告商品に付し、被告商品を販売したか。

4  本件商標権の侵害により原告の受けた損害額はいくらか。

三  争点についての当事者の主張

1  争点1(本件登録商標と被告標章の類否)

(一) 原告の主張

(1) 被告標章1および同2のうち「COLLECTION」という語は、被服の分野においては、特定の商標の中で「特に選ばれたもの」、「厳選されたもの」などの意味を有し、ある特定の商標と、その後に「COLLECTION」という文字を組合わせた商標は、同系列下の商標として、同じ出所を表す機能を有しており、ある商標が商標登録されるとともに、その商標と「COLLECTION」という文字が組み合わされた商標が連合商標として登録される例は多い(甲六ないし三九の各商標公報の該当欄記載のとおりである)。また、「COLLECTION」という語自体は、自他商品の識別機能を全く有しないか、これが極めて低いものである。したがって、被告標章1及び同2のうち自他商品の識別機能を有するのは「UNITED」の部分である。

(2) 本件登録商標は「UNITED」と「ユナイテッド」とを二段書きにしたものであり、このうち「UNITED」の部分が、被告標章1及び同2のうち識別性を有する部分と同一の文字からなるので、本件登録商標と被告標章は、いずれも類似するものである。なお、被告標章が本件登録商標と類似することは、原告の依頼を受けて中谷和夫専修大学教授及び株式会社流通情報センターにより実施されたアンケート調査の結果(以下「中谷アンケートの結果」という。)からも明らかである。

したがって、被告標章を本件商標権の指定商品に当たる被告商品に付し、販売する行為は、商標法三七条一号により本件商標権を侵害するものとみなされる。

(二) 被告らの主張

被告標章1及び同2は、その構成部分全部によって他人の商標と識別するために考案されたものであり、みだりに右標章の構成部分の一部を抽出してその部分を分析的に比較して商標の類否を判定するべきではない。

被告標章1及び同2は、同じ書体の英文字を大小の区別なく等間隔に並べたものであり、外観は、全体が一体感あるものであり、全体としてユナイテッドコレクションと平滑かつ流暢に呼称され、観念は全体で一連不可分であるから、本件登録商標との類否の判断にあたり、これを原告主張のように分離して観察すべきではない。

「ユナイテッド」又は「UNITED」を構成部分として、その前又は後に他の言葉を結合した商標は、旧商品区分第一七類の指定商品についてみると、登録済みのもののほか、出願後出願公告前のものを含めると、本件登録商標を除いても九〇を超え、この中には、世界的アパレルメーカーのベネトンの「UNITED COLORS OFBENETTON」やサッカーのJリーグチームとして著名な「ジェフ・ユナイテッド市原」の「JEF UNITED」などがあり、また、被告標章2と同様に「UNITED」の後に文字を付した構成の登録商標としては「United Inspection」、「UNITED RENTALL」、「UNITED AIRLINES」、「UNITED STYLES」、「UNITED WORKERS」がある。「UNITED」を構成部分とする多くの商標が、これまで類似を問題とされることなく並存していることからすると、商品の取引者及び需要者間においては、このような商標に接した場合、全体を不可分一体として把握することにより、十分に自他を識別しているものと解することができるし、特許庁も、本件登録商標とこれらの商標が非類似であることを前提としてこれらの商標を登録しているものと解される。このような多くの登録商標の存在により、自他識別力が弱められ、単に「UNITED」のみをもっては、観念のうえからも類似であると積極評価される可能性は極めて少ない。

また、旧商品区分第一七類について「COLLECTION」と「コレクション」を二段書きとした商標(商標登録第〇五八六二〇九号、商標登録第〇六九五五七五号)が登録されているので、「COLLECTION」という語には識別機能がある。

さらに、被告標章1は、平成六年一月一二日、被告カイタックにより、被告登録商標の連合商標として出願され、同七年九月二一日、出願公告をすべき旨の決定を受けているものであり、被告標章1が本件登録商標と類似しないことが特許庁審査官により認められている。

したがって、本件登録商標と被告標章1、本件登録商標と被告標章2は、いずれも外観、観念及び称呼を異にし、これを同一又は類似の商品に使用しても商品の出所の混同を生じることはないので、非類似である。なお、被告標章がいずれも本件登録商標と類似しないことは、被告カイタックの依頼を受けて株式会社電通リサーチにより実施されたアンケート調査の結果(以下「電通アンケートの結果」という。)からも明らかである。

2  争点2(被告カイタックインターナショナルの被告商標権の行使の抗弁)

(一) 被告カイタックインターナショナルの主張

被告カイタックインターナショナルは、被告カイタックから被告登録商標の使用の許諾を受け、被告商標権の行使として、被告標章2をポロシャツの胸ポケットに付し、右商品を販売した。

(二) 原告の主張

被告標章2は、本件登録商標と類似するものであり、被告登録商標と同一のものではなく、被告カイタックインターナショナルの被告標章2の使用が被告商標権の行使に当たることはない。

3  争点3(被告カイタックの被告標章の共同使用の有無)

(一) 原告の主張

被告カイタックは、被告カイタックインターナショナルと共同して、被告標章を被告商品に付し、これを販売している(なお、原告は、被告カイタックが、被告カイタックインターナショナルに対して、被告標章の使用を教唆若しくは幇助し、又は被告カイタックインターナショナルと共謀して被告標章を使用したとの主張をするものではない。)。

(二) 被告カイタックの主張

被告カイタックは、被告カイタックインターナショナルが若年層を対象とする新商標として被告カイタックが有する被告登録商標を採用することにしたために、被告カイタックインターナショナルに対し被告登録商標の使用の許諾をしたもので、被告標章を付した被告商品は、いずれも被告カイタックインターナショナル自らが製造し、販売したものであって、被告カイタックが製造販売した事実はない。

4  争点4(本件商標権の侵害により原告の受けた損害の額)

(一) 原告の主張

(1) 被告標章を付した被告商品の売上額は前記一4のとおりであり、その合計金額は、二億五五六六万円であるところ、被告らの衣類の売上に対する純利益率は一〇パーセントを下るものではなく、商標法三八条一項規定の被告らが本件商標権の侵害行為により得た利益の額は、二五五六万円を下るものではないから、原告が受けた損害の額は、右同額と推定される。

(2) 仮に右1の主張が認められないとしても、同法三八条二項規定の本件登録商標の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額は、被告標章を付した被告商品の右売上合計額二億五五六六万円に対し、通常使用料率として五パーセントを乗じた金額である一二七五万円を下るものではない。

(3) 原告は、被告らが本件商標権の侵害行為を行ったために、本訴及び本訴に先立つ仮処分事件の提起及び遂行を余儀なくされたものであり、その弁護士費用は少なくとも三〇〇万円である。

(4) 以上によると、原告が被告らの本件商標権の侵害行為によって受けた損害の合計金額は、二八五六万円か、少なくとも一五七五万円であり、その内金一〇〇〇万円を本訴において請求する。

(二) 被告らの主張

前記一4の被告商品の売上額から、実際の純利益の額を計算すると、次のとおりマイナスとなるものであり、原告の被告商品の売上額についての純利益額及び通常使用料率の主張は、いずれも争う。

まず、被告標章1及び同2を付したポロシャツの売上額は、正確には一億三九一〇万二五三九円であるところ、この粗利益は右商品の単独での決算額である二四一一万円であり、これから同じく経費二三三八万円を差し引いた七三万円が純利益となる。

次に、被告標章2を付した紳士用パンツの売上額は、正確には一億一六五六万五一五〇円であるところ、右紳士用パンツ単独での決算はなされていないことから、右販売期間の月毎の売上額に紳士カジュアル部門の月毎の平均粗利率(総平均粗利益16.4パーセント)をそれぞれ乗じた粗利益合計額が、一九一七万五一一九円となり、同じく月毎の売上額に紳士カジュアル部門の月毎の平均経費率(総平均経費率20.8パーセント)をそれぞれ乗じた経費合計額が、二四四八万九五六二円となることから、右商品の純利益はなく、五三一万四四四三円のマイナスとなり、結局、被告商品の純利益は全体としてマイナスとなっている。

第三  争点に対する判断

一  争点(本件登録商標と被告標章との類否)について

1(一)  本件登録商標の構成は、別紙一のとおりであり、「UNITED」の文字を上段とし、「ユナイテッド」の文字を下段とし、ほぼ同一の大きさの文字によって、二段に横書きしたものであり、このうち、「ユナイテッド」は「UNITED」の発音を片仮名で表記したものと認められる。

(二)  被告標章の構成をみると、被告標章1は、別紙二1のとおり、「UNITED」の文字と「COLLECTION」の文字を、それぞれ同一の大きさ、同一の書体によって、二段に横書きしたものであり、被告標章2は、別紙二2のとおり、「UNITED」の文字と「COLLECTION」の文字を、その間に間隔をあけて、それぞれ同一の大きさ、同一の書体によって、一行に横書きしたものと認められる。

そして、被告標章1及び同2のうち、「COLLECTION」という語は、英和辞典には、①集めること、収集、②集めたもの、収集物などを意味するものとして記載されていること、「COLLECTION」の読み方を片仮名で表記した「コレクション」という語は、国語辞典には、①集めること、収集、②収集品、特に美術品、書物などの収集を意味するものとして記載されており、外来語として日常的に広く用いられていること、及び、衣料品業界においては、特定の商標に「COLLECTION」又は「コレクション」の語を組合わせた商標は、特定の商標が付された複数の商品の集合又は特定の商標と同じ出所の商品を表示するものとして用いられていることは、いずれも当裁判所に顕著である。また、証拠(甲六ないし三九)によれば、旧商品区分第一七類においては、「MICALADY ミカレディ」に対し「MICALADY COLLECTIONミカレディコレクション」、「KANEBO」に対し「Kanebo International Collection」、「DAITOBO」に対し「Daitobo Execellent Collection」、「LAZY SUSAN」に対し「LAZYSUSAN COLLECTION」、「MIKI HOUSE」に対し「MIKI HOUSE COLLECTION」、「IS」に対し「IS COLLECTION」、「PIERRE BALMAIN」に対し「PIERREBALMAIN COLLECTION」、「MAMMINA」に対し「MAMMINA COLLECTION」のように、ある特定の商標が登録されている場合に、その商標又は類似の商標に「COLLECTION」等の文字を組合わせた商標が、元の商標の連合商標として登録されている例が複数認められる。

他方、被告標章1及び同2のうち、「UNITED」という語は、本件登録商標の「UNITED」と書体は少し異なるが同一の文字からなる商標であり、本件登録商標と同一であることは明らかである。

そして、右「UNITED」という語は、英和辞典には、①結ばれた、②共同でなされた、③連合したなどを意味する形容詞として記載されているが「ユナイテッド」という語は、国語辞典には、アメリカ合衆国を意味する「ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ」などの語の一部として記載されていることはあっても、「ユナイテッド」のみで記載されていることはまれであること、及び、今日の我が国における英語の知識の普及度を考慮に入れると、一般国民である需要者が「UNITED」の語から特別の意味、観念を明確に認識できない場合も少なくはないものの、アメリカ合衆国を意味する「UNITED STATES OFAMERICA」の冒頭の一文字であり、比較的我が国の国民にもなじみの深い言葉でもあることは、当裁判所に顕著である。そして、原告のパンフレットに実際に本件登録商標の上段の「UNITED」が被服に使用されている写真が掲載されているが(本件登録商標の上段の文字と書体は若干異なるが同一の文字であり本件登録商標の使用の一態様と認められる。甲四)、その態様からも明らかなように、本件登録商標の「UNITED」という語は、その外観及び称呼からして需要者に独特の印象、記憶、連想を与え、自他商品識別機能を十分に保持しているものであることが認められる。

したがって、被告標章1及び同2に接する取引者及び需要者は、「COLLECTION」の部分は、いずれも特定の商標が付された複数の商品の集合又は特定の商標と同じ出所の商品を表示するものであると認識するにとどまり、「UNITED」の部分を自他商品の識別機能を果たす部分であると把握し、被告標章を「UNITED」商標の商品の集合、又は、「UNITED」商標の商品と同じ出所の商品を表示するものと認識することが多いものと推認することができる。

(三) 以上によれば、被告標章1及び同2は、いずれも取引者及び需要者によって、「UNITED」の部分が自他商品識別機能を果たす部分であると把握されることが多いのであるから、その構成文字全体に対応して「ユナイテッドコレクション」の称呼を生じるほか、自他商品の識別機能を果たさない「COLLECTION」の部分が省略されて、「UNITED」の部分に従って「ユナイテッド」という称呼も生じるものであって、これが本件登録商標の称呼と同一であることは明らかであり、また、その外観においても、自他商品の識別機能を果たさない「COLLECTION」の部分よりも、「UNITED」の部分が自他商品の識別機能を果たす商標として取引者及び需要者により把握されるのであるから、本件商標と被告標章1、本件商標と被告標章2は、いずれも類似の商標であるということができる。

2(一) 甲四三は、中谷アンケートの結果であるが、これによれば、別紙四記載の標章と別紙五1記載の標章、別紙四記載の標章と別紙五2記載の標章の類否について類似性を肯定する旨の回答をした者は、いずれも回答者の七割を超えていること、別紙四記載の標章と別紙五1記載の標章、別紙四記載の標章と別紙五2記載の標章の関係について、同じ会社のシリーズ品か、何かの関係がある商標である旨を回答した者は、合計で回答者の約六割に達していること、「UNITED COLLECTION」にあるような「COLLECTION」の語の意味や印象について、「ブランドの中から選んだ一部の品、系列のもの」という内容の回答が最も多かったこと、右と同じく「COLLECTION」の語がサブタイトルのようなものと思うかとの問いに対し、「そう思う」と「ややそう思う」の回答を併せると約六割となることがそれぞれ認められる。

別紙四記載の標章は、本件登録商標の上段の表示と比較して、書体は若干異なるが、文字は同一であり、したがって、別紙四記載の標章は本件登録商標の使用の一態様ということができ、また、別紙五1記載の標章は、被告標章1と比較して、書体は若干異なるが、文字は同一であり、構成をほぼ同じくするということができ、別紙五2記載の標章は、被告標章2と比較して、書体が若干異なり、「UNITED」と「COLLECTION」の間隔が被告標章2よりも若干広いが、文字は同一であり、構成をほぼ同じくするということができるので、中谷アンケートの結果は、本件登録商標と被告標章1、本件登録商標と被告標章2とがそれぞれ類似するという前記の判断を裏付けるものであるということができる。

(二) この点につき、被告ら提出の電通アンケートの結果である乙三六をみると、その調査結果のまとめの記載欄には、商標申請状態のロゴデザインとして、別紙四の標章と、別紙五2の標章とを比較すると、似ているという人が似ていないという人よりやや多いとの記載があり、これは、原告提出のアンケートの結果とも符号するものといえるものである。

他方、本件登録商標のうちの「UNITED」の文字からなる構成の標章が表記されたタグ(付け札)と、別紙五1の標章が表記されたタグとを比較して質問した回答の調査結果として、両者が違うものと明確に認識される、別のメーカーと十分に差別化されているとの記載があることが認められる。

しかしながら、右の質問に使用された前者のタグは、その紳士用パンツを大形鞄の上に置き、さらにその商品の上に眼鏡を置くという構成のイメージ的写真がその大きな部分を占めるというデザイン上の大きな特徴があり、そのタグ自体の大きさも、後者と比較して大きいものであるのに対し、後者のタグは、文字と線のみからなる簡潔なデザインに特徴があるなど、両者は一見して、異なるイメージを表現したものと看取できるものであり、しかも、質問に当たり、これらを示しながらその記入を求められた調査票の記載によると、その質問事項も、それぞれ、2種類のタグ(札)は、どの程度似ていると思いますか、これらのタグ(札)は、同じメーカーのブランドという印象をお持ちになりますか、というものであり、かつ、右の「タグ(札)」との記載部分には下線が付記されて強調されたものであって(その前の商標申請状態でのロゴデザインについての質問事項では、「ブランド」と記載があるだけで、そこにこのような下線は付されていない)、これらの質問に回答した者の中には、右のタグの全体のデザインを比較して、そのタグの全体のデザインについての類似性やその印象を問われたものと理解して回答した者も含まれているのではないかという疑問を生じるのを禁じ得ず、右のアンケート部分は相当とはいえない手法によるものといわざるをえない。

なお、電通アンケートの結果において、本件登録商標と被告登録商標とを対比させてアンケート調査をしている部分及び原告のタグと被告登録商標を使用した被告のタグとを対比させてアンケート調査をしている部分があるが、後記二のとおり、被告登録商標は、そもそも被告標章2とは異なる構成の商標であると認められるから、右のアンケートは、本件登録商標と被告標章1及び同2との類否について十分な資料とはなり得ない。

右によれば、被告ら提出の電通アンケートの結果によって、本件登録商標と被告標章が類似するとの先の当裁判所の結論は何ら否定されるところはない。

3(一)  次に、被告らの主張について検討を加えると、まず、被告らは、「ユナイテッド」又は「UNITED」を構成部分として、その前又に後に他の言葉を結合した商標が旧商品区分第一七類の指定商品について多数登録又は出願されており、これらの多くの商標が並存していることから、商品の取引者及び需要者間においては、このような商標に接した場合、全体を不可分一体として把握することにより、十分に自他を識別しているものと解することができるし、特許庁も、本件登録商標とこれらの商標が非類似であることを前提としてこれらの商標を登録しているものと解されるとし、このような多くの登録商標の存在により、自他識別力が弱められ、単に「UNITED」のみをもっては、観念のうえからも類似であると積極評価される可能性は極めて少ないと主張する。

たしかに証拠(乙六の1ないし20、22ないし33)によれば、「UNITED」を構成の一部分として、その前又は後に他の言葉を結合した商標が旧商品区分第一七類の指定商品について多数登録又は出願公告されていることが認められる。

しかし、これらの商標は、「UNITED」と結合された言葉が、被告標章1及び同2の「COLLECTION」とは異なっており、「UNITED」と結合された言葉がどのようなものかによって、商標全体を不可分一体のものとしてみるべきか否か、商標のどの部分が自他商品の識別機能を果たすとみるべきかに関する判断が異なるので、仮に本件登録商標とこれらの商標が非類似であると判断されたとしても、それによって直ちに、本件登録商標と被告標章1、本件登録商標と被告標章2が非類似であると判断されるべきであるとはいえないし、「UNITED」について自他商品の識別機能が弱められるとはいえない。

(二)  また、被告らは、旧商品区分第一七類について「COLLECTION」と「コレクション」を二段書きとした商標が登録されているので、「COLLECTION」という語には自他商品の識別機能があると主張する。

たしかに、証拠(乙二六、二七の1、2、二八、二九)によれば、旧商品区分第一七類について、「COLLECTION」と「コレクション」を二段書きとした商標(商標登録第〇五八六二〇九号、商標登録第〇六九五五七五号)が登録されていることが認められる。

しかし、同じ「COLLECTION」という語でも、被告標章1及び同2のように、これと異なる「UNITED」という語とともに用いられる場合と、右商標のように単独で用いられる場合とでは、商標中において果たす機能を異にするので、右の商標が登録されているからといって、必ずしも被告標章1及び同2のうちの「COLLECTION」という部分に自他商品の識別機能があるということはできない。

(三)  さらに、被告らは、被告標章1は、平成六年一月一二日、被告カイタックにより、被告登録商標の連合商標として出願され、同七年九月二一日、出願公告をすべき旨の決定を受けているものであり、被告標章1が本件登録商標と類似しないことが特許庁審査官により認められている旨主張し、証拠(乙三五の1ないし4)によれば、被告標章1について右出願公告がなされた事実は認められるが、原告は、現在、これに対し、被告標章1が本件登録商標に類似することを理由として、登録異議の申立てをしているところであり(甲四二)、また、そもそも、当裁判所は特許庁の審査官の右判断に拘束されるものではないから、右の出願公告は、本件登録商標と被告標章1及び同2の類否について具体的に検討した先の当裁判所の判断を左右するものでない。

4  以上によれば、被告標章1及び同2は、いずれも本件登録商標と類似する商標であると認められるから、被告標章を本件商標権の指定商品に当たる被告商品に付し、販売する行為は、商標法三七条一号により本件商標権を侵害するものとみなされる。

二  争点2(被告カイタックインターナショナルの被告商標権の行使の抗弁)について

被告登録商標の構成は、別紙三のとおりであり、各文字の間隔を等しくして「UNITEDCOLLECTION」と一連に横書きしたものであるのに対し、被告標章2の構成は、前記のとおり、「UNITED」と「COLLECTION」を、その間に間隔をあけて一行に横書きした標章である。被告標章2における「UNITED」と「COLLECTION」との間隔は、一文字分に満たないが、その他の文字間の間隔と比較して大きく、「UNITED」と「COLLECTION」が別個の語として記載されていることを看取するに十分足りるものである。

したがって、被告標章2は、「UNITED」と「COLLECTION」の二語からなることが明らかな標章であって、「UNITEDCOLLECTION」という全体で不可分一体をなしている被告登録商標とは構成を異にし、この点で、その外観や称呼、観念に影響が及ぶものと解されるから、被告登録商標の同一性の範囲内にあるということはできず、被告標章2の使用をもって被告商標権の行使ということはできない。

したがって、被告カイタックインターナショナルの被告標章2についての被告商標権の行使の抗弁の主張は理由がない。

三  争点3(被告カイタックの被告標章の共同使用の有無)

被告カイタックが、被告カイタックインターナショナルと共同して、被告標章1若しくは同2をポロシャツ若しくは紳士用パンツに付し、又は、これらのポロシャツ若しくは紳士用パンツを販売した事実については、いずれもこれを認め得る証拠はないので、被告カイタックが本件登録商標を使用した事実は認めることができず、原告の被告カイタックに対する請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない(なお、原告は、被告カイタックが、被告カイタックインターナショナルに対して、被告標章の使用を教唆若しくは幇助し、又は被告カイタックインターナショナルと共謀して被告標章を使用したとの主張はしていない)。

四  争点4(本件商標権の侵害により原告の受けた損害の額)について

1  以上のとおり、原告は、被告カイタックインターナショナルに対して、原告の本件商標権を侵害する被告商品の販売によって、原告が受けた損害について、不法行為に基づく賠償請求をすることができる。

2  まず、商標法三八条一項規定の被告カイタックインターナショナルが本件商標権の侵害行為により得た利益の額についての原告の主張について検討すると、この点について、原告は、被告商品の売上額に対する純利益率は一〇パーセントを下るものではないと主張するが、右の原告の主張する事実を認め得る証拠はなく、他に、被告カイタックインターナショナルが被告商品の売上によって得た利益の額について、次の3の金額を超える金額であることを認めるに足りる証拠はない。

3  そこで、同法三八条二項規定の、本件登録商標の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額について検討すると、本件登録商標の使用に対する通常使用料率は、原告の規模、売上高及び本件登録商標を付した商品の販売予定額(甲三の2・3、五、乙七の3及び弁論の全趣旨)、本件登録商標の認知度(甲四三)、被告標章の前記認定の構成及び使用の態様(乙三の1・2、二一)、被告商品の売上とその利益の状況(乙三〇、弁論の全趣旨)など諸般の事情を総合して考慮すると、被告商品の売上額の三パーセントであると認めるのが相当であり、甲四〇、四一は、右の認定を左右するものではない。

そうすると、被告カイタックインターナショナルが平成六年三月から八月まで販売した被告標章1及び同2を付したポロシャツと被告標章1を付した紳士用パンツの売上額の合計は二億五五六六万円であるから、その三パーセントに当たる合計七六六万九八〇〇円が、原告が本件登録商標の使用に対し通常受けるべき金銭の額と認められる。

4  原告が被告カイタックインターナショナルの本件商標権の侵害に対して要した弁護士費用相当の損害額については、本件事案の内容、審理の経緯などに鑑みると、一〇〇万円と認めるのが相当である。

5  右のとおり、本件商標権の侵害により原告の受けた損害の額は、合計八六六万九八〇〇円であると認められる。

五  よって、原告の被告らに対する本訴請求は、被告カイタックインターナショナルに対し、不法行為に基づき八六六万九八〇〇円の支払を求める限度で理由があり、その余は失当であるから、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官設樂隆一 裁判官橋本英史 裁判官中平健)

別紙

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