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東京地方裁判所 平成5年(特わ)1435号 判決 1993年11月16日

本店所在地

東京都狛江市和泉本町二丁目一番三号

株式会社

山良商店

(右代表者代表取締役 佐藤良一)

本籍

秋田県平鹿郡平鹿町上吉田間内字田の植四八番地の六

住居

東京都世田谷区喜多見一丁目一二番一三号

会社役員

佐藤良一

昭和二三年四月二三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官富松茂大、弁護人土屋東一各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社山良商店を罰金三〇〇〇万円に、被告人佐藤良一を懲役一年二月に処する。

被告人佐藤良一に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社山良商店(平成三年三月二四日以前の商号は有限会社山良商店。以下「被告会社」という)は、東京都狛江市和泉本町二丁目一番三号に本店を置き、土木工事請負等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人佐藤良一(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役(平成二年九月二七日以前は、取締役で実質的経営者)として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空代車料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和六三年七月一日から平成元年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億七六二五万六一八四円(別紙1~3の修正損益計算書、修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成元年八月二九日、東京都府中市分梅町一丁目三一番地所在の所轄武蔵府中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七七一万八二九三円で、これに対する法人税額が一六四万七九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成五年押第一〇六一号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額七二四〇万円と右申告税額との差額七〇七五万二一〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成元年七月一日から平成二年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六〇五八万〇五九二円(別紙3の1~3の修正損益計算書、修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成二年八月二八日、前記武蔵府中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二四六五万〇〇八五円で、これに対する法人税額が八六一万一一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二二九八万三一〇〇円と右申告税額との差額一四三七万二〇〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成二年七月一日から平成三年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億六四八三万〇三七五円(別紙5の1~3の修正損益計算書、修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成三年八月二二日、前記武蔵府中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四二九七万六三六三円で、これに対する法人税額が一四七〇万三八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前記同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額六〇三九万九〇〇〇円と右申告税額との差額四五六九万五二〇〇円(別紙6のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の目標)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通

一  登記官作成の登記簿及び閉鎖登記簿(二通)の各謄本

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、退職金調査書、交際費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、住民税利子割調査書、交際費損金不算入調査書、外注加工費調査書、代車料調査書、減価償却費調査書、残土処分費調査書及び現場経費調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書

判示第一及び第二の事実について

一  大蔵事務官作成の支払利息調査書

判示第二及び第三に事実について

一  大蔵事務官作成の旅費交通費調査書、売却資産超過額認容調査書及び厚生費調査書

判示第一の事実について

一  押収してある法人税確定申告書等一袋(平成五年押第一〇六一号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の雑費調査書

一  押収してある法人税確定申告書等一袋(前同押号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の給料手当調査書

一  押収してある法人税確定申告書等一袋(前同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示第一ないし第三の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項(第一、第二の各事実の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)、二項(情状による)

2  被告人

判示第一ないし第三の各所為につき、法人税法一五九条一項(第一、第二の各事実の罰金刑については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第一の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、土木工事請負等を業とする被告会社の実質的経営者ないし社長であった被告人が、個人的に新事業を起こすための資金や、被告会社の経営が悪化したときに備えての資金を備蓄することを目的として脱税を企て、被告会社の取引先の関係者や被告会社従業員等の協力者に依頼して、架空・水増しの外注加工費等の請求書を作成させたり(架空・水増し分を現金で戻させるなどの方法により簿外資金を蓄積)、被告人本人や被告会社従業員らが退職したように装って退職金名義の金員を被告人の手元に留保したりした上、確定申告においては右のような架空・水増し外注加工費や架空退職金等を計上するなどして三事業年度にわたり、被告会社の所得を合計三億二六三二万円余少なく見せかけ、合計一億三〇八一万円余の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率も通算約八四パーセントに達している。このような脱税額、ほ脱率、犯行の計画性等のほか、この種事案については一般予防の必要性が高いことにかんがみると、被告人及び被告会社の刑事責任は相当重いといわざるをえない。

他方、被告人は、国税庁の査察を受けて以来、事実を認めて査察及び捜査に協力し、かつ税理士等に相談して二度と同種事犯を犯さないように努めており、当公判廷において真摯な反省の態度を示していること、被告会社は、関係当局の指導に従い、本件三事業年度分の法人税及び地方税を、過少申告加算税、重加算税、延滞税等を含めて完納していること、被告人には前科前歴がないことなど、被告人及び被告会社のために有利に斟酌すべき事情も認められる。

当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮して、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金四〇〇〇万円、被告人・懲役一年六月)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1の1

修正損益計算書

<省略>

別紙1の2

修正損益計算書

<省略>

別紙1の3

修正製造原価報告書

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

<省略>

別紙3の1

修正損益計算書

<省略>

別紙3の2

修正損益計算書

<省略>

別紙3の3

修正製造原価報告書

<省略>

別紙4

ほ脱税額計算書

<省略>

別紙5の1

修正損益計算書

<省略>

別紙5の2

修正損益計算書

<省略>

別紙5の3

修正製造原価報告書

<省略>

別紙6

ほ脱税額計算書

<省略>

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