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東京地方裁判所 平成3年(特わ)1071号 判決 1991年11月26日

本店所在地

東京都大田区大森中二丁目一番一八号

カドヤ繊維株式会社

(右代表者代表取締役 原昌三)

本籍

東京都大田区大森中二丁目一番

住居

東京都大田区大森中二丁目一番一八号

会社役員

原昌三

昭和一一年六月九日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官立澤正人、西村逸夫、弁護人内藤隆、山崎惠各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人カドヤ繊維株式会社を罰金二〇〇〇万円に、被告人原昌三を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人原昌三に対しこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社カドヤ繊維株式会社は、東京都大田区大森中二丁目一番一八号に本店を置き、作業服、事務服及び白衣の製造等を目的とする資本金一二〇〇万円(昭和六一年一〇月一四日以前は六〇〇万円)の株式会社であり、被告人原昌三は、右会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人原は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六〇年八月一日から同六一年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六八六四万三八九六円(別紙一の1修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同六一年九月二七日、同都大田区中央七丁目四番一八号所轄大森税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六四三万九八六三円であり、これに対する法人税額が一六九万二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二八四三万二五〇〇円(別紙二の1の脱税額計算書参照)と右申告税額との差額二六七四万二三〇〇円を免れ

第二  昭和六一年八月一日から同六二年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億七五〇万一七五四円(別紙一の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同六二年九月二九日、前記大森税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三〇〇万三一〇一円であり、これに対する法人税額が五一万九七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四三八〇万九二〇〇円(別紙二の2の脱税額計算書参照)と右申告税額との差額四三二八万九五〇〇円を免れ

第三  昭和六二年八月一日から同六三年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得額が八三四〇万三一二八円(別紙一の3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同六三年九月二九日、前記大森税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二九四万五八三九円であり、これに対する法人税額が六〇万五六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三三七九万一四〇〇円(別紙二の3の脱税額計算書参照)と右申告税額との差額三三一八万五八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実の全部について

一  被告人原の当公判廷における供述

一  被告人原の検察官に対する供述調書八通

一  原和江の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の総売上高調査書、期首商品棚卸高調査書、当期仕入高調査書、期末商品棚卸高調査書、公租公課調査書、雑費調査書、受取利息調査書、有価証券売却益調査書、雑収入調査書、支払利息調査書、事業税認定損調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書三通(平成三年五月二四日付、同月二五日付《二通》)

一  登記官作成の登記簿謄本、役員欄閉鎖登記簿謄本、商号・目的欄閉鎖登記簿謄本

一  大森税務署長作成の証拠品提出書

判示第二、第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の給料調査書、給付補てん備金調査書

判示第一の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成三年押第九五〇号の1)

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

被告会社の判示各行為は、法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するので、情状によりそれぞれ同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪につき定めた罰金刑を合算し、その範囲内で被告会社を罰金二〇〇〇万円に処し、被告人原の判示各行為は、法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択して、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、その刑期の範囲内で懲役一〇月に処し、情状により刑法二五条一項を適用して、この裁判確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

(量刑の理由)

本件は、作業服の製造等を目的とする被告会社における法人税ほ脱事案であり、三年分合計で一億三〇〇万円余というほ脱額は必ずしも小さくなく、ほ脱率も三年分平均で九七パーセントに及んでおり、その犯行の動機も、取引先の労使紛争による倒産等に備えて被告会社の財政基盤を安定させるためというもので特段酌むべきところはなく、所得秘匿の手段も、売上除外、架空仕入等という計画的なものであったこと等を考慮すると、犯情はよくなく、被告会社及び被告人の刑責を軽視することはできない。

しかしながら、被告人原は、本件発覚後はその非を認め、起訴対象年度分の被告会社の法人税につき、その本税、加算税、延滞税をいずれも完納しており、かつ、本件起訴事実以前の年度分についても自主的に修正申告をし、納税をしていること、被告人原は本件を契機として被告会社の経理処理を改善し、二度と本件のような犯行に及ばないように態勢を改めて、反省の意を表明していること、被告人原の今日までの稼働状況、年齢、これまで交通事故による罰金刑の外には前科前歴もないことなど、被告会社及び被告人原のため酌むべき事情が認められる。

以上の諸事情を勘案して、主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 松浦繁)

別紙一-1 修正損益計算書

<省略>

別紙一-2 修正損益計算書

<省略>

別紙一-3 修正損益計算書

<省略>

別紙二-1 脱税額計算書

<省略>

別紙二-2

<省略>

別紙二-3 脱税額計算書

<省略>

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