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東京地方裁判所 平成3年(フ)1337号 決定 1991年10月29日

債務者

株式会社三輝

右代表者代表取締役

丸西輝男

主文

債務者株式会社三輝を破産者とする。

理由

第一申立債権の存在

一一件記録及び債務者代表者の審尋の結果によれば、以下の事実が認められる。

債務者は、昭和五九年八月ゴルフ会員権の売買、斡旋を目的として設立された会社であるが、昭和六三年一一月ころから多数のゴルフ会員権販売業者を下請け、孫請けとして系列組織化して、茨城カントリークラブ(茨城県高萩市大字大能字材木沢七三三―二他所在)の会員権(以下「本件会員権」という。)の販売を行ったものである。申立債権者らはいずれも、別紙申立債権者購入状況一覧表のとおり、昭和六三年一二月から平成三年一月までの間に本件会員権を一五〇万円ないし二八〇万円で買い受けたものである。

茨城カントリークラブを所有しているのは、株式会社常陸観光開発である。債務者は、右会社を実質的に支配経営していた水野健との間において、債務者が茨城カントリークラブの経営権を掌握したうえ、総販売代理店として本件会員権の販売を行うこと、債務者が入会金、預託金名下に集める金員の二分の一相当額を水野に対し融資名下に交付することを合意し、右合意に沿って、債務者の代表者丸西輝男が昭和六三年四月に常陸観光開発の代表取締役に就任し、同年一一月に同社の本店を債務者と同一場所に移転し、平成元年一二月には債務者が常陸観光開発の全株式をケン・インターナショナル株式会社(代表者水野)から八億円で買い受けるところとなった。債務者が、用地取得費、建設工事費、販売手数料などの膨大な費用を捻出したうえ、水野との右約定を履行し、利益を上げるには、少なくとも約四〇〇億円を会員権販売代金として集めなければならない。そこで、債務者は販売を開始するにあたって、価格を二〇〇万円前後と低額に設定すること、少なくとも二万人の会員を募集することを基本方針として決定した。そして、昭和六三年一一月ころ、超安値を売り物に新聞広告やダイレクトメールの送付などによる大規模な宣伝活動を開始し、二五ないし二七パーセントという高率の販売手数料を支払って、多数のゴルフ会員権販売業者を系列、組織化し、大量の会員権を販売すべく営業活動を展開した。ところが、債務者は、本件会員権の販売に際しては、当初から少なくとも約二万人の会員を募集する予定であったことを秘し、最終募集正会員数一八三〇名と虚偽の事実を販売用パンフレットなどに明示したうえ、営業担当者にもその旨説明させて、販売活動を行わせ、わずか一年位の期間内に約三万五〇〇〇口の会員権を販売した。その期間が経過するころには、債務者は、販売した会員権数などにはもはや関心を払わず、組織した会員権販売業者らを集金マシーンとして督励し、金集めに狂奔するようになり、あくまで最終募集正会員数一八三〇名と偽りつつ募集を続行し、平成三年において正会員約四万九〇〇〇人、平日会員約二〇〇〇人、総会員数合計約五万一〇〇〇人、販売代金総額約一一〇〇億円に達するに至った。

二以上の事実関係のもとにおいて、債務者の債権者らに対する不法行為の成否について、検討する。

ゴルフ会員権を購入した会員の本質的権利は、ゴルフ場の施設を優先的、継続的に利用してプレーすることができるところにあるが、本件ゴルフ場のように、一八ホールの施設に対して、適正な会員数をはるかに超える約五万一〇〇〇人もの会員を有する場合、会員だけの利用を考えた場合でもプレーできる機会が極端に限られたものとなることは明らかであり、施設利用権(プレー権)は絵に画いた餅に等しいといっても過言ではない。また、このようなゴルフ会員権は、流通性をほとんど期待できないと考えられるから、投資対象の財産としての価値も著しく低いものといわざるを得ない。

債務者は、当初から二万人という本件ゴルフ場の施設規模からして過剰な会員を募集することを予定しながら、その事実を秘し最終募集正会員数一八三〇名である旨偽って、債権者らに本件会員権を買受けさせたばかりか、会員数が三万五〇〇〇人に達した後も、あくまで最終募集正会員数一八三〇名であるとして、募集を続け、結局五万一〇〇〇人という膨大な数の会員を集めたものである。適正会員数の限界を超えれば超えるほどプレー権の行使がより一層困難となり、その会員権の財産的価値が減ずることになるのは明らかであって、債務者代表者らは、そのことを充分認識しながら本件ゴルフ場の会員数を約五万一〇〇〇人もの数に増加させたのであるから、債務者は、会員権の大量販売によって、実質的価値の極めて乏しい本件会員権を購入させて債権者らに故意に損害を与え、また、本件会員権を購入した債権者らの会員としての権利を故意に侵害したものというべきである。

本件ゴルフ会員権は、右に見たように、プレー権としても、投資対象財産としても、実質的価値の極めて乏しいものであり、一五年間無利息のまま据え置かれる預託金返還請求権を含めた本件会員権の現在価値が、いわゆる損益相殺の対象となり得るものと仮定したとしても、その評価額は著しく低いものにならざるを得ないと考えられる。したがって、各債権者らが被った損害の額は、同人らが現実に出捐した購入代金額相当額を大きく下まわるものではないと認めるのが相当である。

以上のとおりであるから、債権者らは、債務者に対し不法行為による損害賠償請求権を有する。

第二破産原因

一件記録及び債務者代表者の審尋の結果によれば、平成三年七月、週刊誌に「会員権四万九〇〇〇枚も売った茨城カントリークラブ」と題する特集記事が掲載されたのをきっかけに、各地の弁護士会の相談窓口に、本件会員権を購入した被害者らの相談が殺到し、多数の弁護士会に茨城カントリークラブ会員権購入者の会弁護団が結成されたこと、右弁護団に委任状を提出し、明確に不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する意思を表明している会員の数は、約一万六〇〇〇人余に上り、右の請求金額が、三〇〇億円を下ることはないこと、債務者の資産については、東京都豊島区東池袋及び渋谷区千駄ヶ谷に土地、建物を、茨城県高萩市に土地を所有しているが、いずれにも巨額の担保権が設定されていること、本件会員権販売により集めた膨大な資金も、債務者代表者によれば、水野への貸付金などとして約七一二億円、建設工事代金の支払として約四〇億円、販売手数料及び宣伝費として約二八〇億円、新規事業への投資として約二〇億円が支出されたというのであって、債務者の手元には残っておらず、水野からの貸付金などの早期回収は極めて困難な状況にあること、債務者の熊谷組に対する本件ゴルフ場の建設請負代金の保証債務約七〇億円が未履行であり、工事が未完成のまま停止され再開の具体的目処がたっていないこと、以上の各事実が認められる。そして、債務者が右多数会員らからの損害賠償の請求に直ちに応じることができない状態にあることは、債務者代表者自ら認めるところでもあって、債務者が支払不能の状態に陥っていることは明らかである。

第三結論

よって、本件破産の申立は理由があるから破産法一二六条一項を適用して主文のとおり決定する。

なお、本件について破産法一四二条により左記のとおり定める。

一  破産管財人 弁護士 廣田富男

一  債権届出期間 平成四年一月三一日まで

一  債権者集会の期日 平成四年五月二〇日午後一時

一  債権調査の期日 平成四年五月二〇日午後一時

平成三年一〇月二九日午後一時宣告

(裁判長裁判官金築誠志 裁判官大和陽一郎 裁判官生島弘康)

別紙<省略>

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