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東京地方裁判所 平成3年(カ)14号 判決 1991年11月29日

再審原告

木間ヶ瀬建設株式会社

右代表者代表取締役

久保利仁

右訴訟代理人弁護士

松浦安人

再審被告

セントラルブレイントラスト株式会社

右代表者代表取締役

後久俊明

右訴訟代理人弁護士

小川秀史郎

主文

一  本件再審の訴えをいずれも却下する。

二  再審費用は再審原告の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一再審請求の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  再審被告の請求を棄却する。

3  本案訴訟及び再審訴訟の訴訟費用は再審被告の負担とする。

二再審請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一再審原告

1  再審被告を原告、再審原告を被告とする原判決(東京地方裁判所平成二年(ワ)第九三六一号仲介手数料分配金請求事件)は、平成三年二月二七日言渡され、同年三月一四日の経過により確定した。

2  しかし、再審被告は、再審原告代表者及びその家族がオーストラリア国に移住していることを知りながら、所在が判明しないとして、虚偽の報告書を作成して、公示送達の手続によって訴訟を進行し、勝訴判決を得たものである。

(再審事由)

3  本件は、不実な申立てに基づく公示送達によって判決が確定したものであるが、右公示送達の申立てについて十分な判断がなされておらず、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したときに該当する(民訴法四二〇条一項九号)。

4  再審被告は、再審原告の代表者が、オーストラリア国に移住していることを知っており、その具体的な居所も調査すれば容易に判明することを知りながら、故意に所在が判明しないとして不実の申立てをして公示送達によって確定判決を得たものである(民訴法四二〇条一項三号)。

5  再審被告は、再審原告の代表者がオーストラリア国に移住していることを十分に知りながら、それを奇貨として、不実な申立てをして公示送達手続により原判決を得たものであるが、欺罔行為によって判決を騙取したいわゆる訴訟詐欺で、刑法第二四六条一項の詐欺罪に該当する犯罪行為によって確定判決が騙取されたものであり、「刑事上罰すべき他人の行為によって判決に影響を及ぼすべき攻撃もしくは防御の方法を提出することを妨げられたとき」に該当する(民訴法四二〇条一項五号)。

(再審事由を知った日)

6  再審原告は、平成三年六月二六日、再審原告代理人に依頼して謄写した本件確定記録を閲覧したことにより右再審事由を知った。

よって、再審原告は、再審被告に対し、再審請求の趣旨記載の判決を求める。

二再審被告

1  再審原告の主張1の事実は認める。

2  同2ないし5の事実は否認する。

3  同6の事実は知らない。

第三当裁判所の判断

一民訴法四二〇条一項九号の判断の遺脱とは、当事者が主張した攻撃防御方法の判断、または当事者が裁判所に職権調査事項の調査を促した場合に、その判断を判決理由中に明記せず、そのため判決の主文に影響がある場合をいう。したがって、公示送達の申立てについて原判決裁判所が判断を遺脱していないことは本件原記録上明らかである。

結局、不実の公示送達申立てにより確定判決を得た場合について民訴法四二〇条一項九号の適用をいう再審原告の主張は失当である。

二不実の公示送達申立てにより確定判決を得た場合については民訴法四二〇条一項三号の再審事由に該当しないと解すべきであるから(最高裁判所昭和五六年(オ)一二七七号、昭和五七年五月二七日第一小法廷判決判例時報一〇五二号六六頁)、民訴法四二〇条一項三号の適用をいう再審原告の主張は失当である。

三不実の公示送達申立てにより確定判決を得た場合については民訴法四二〇条一項五号後段の「判決ニ影響ヲ及ホスヘキ攻撃若ハ防御ノ方法ヲ提出スルコトヲ妨ケラレタルトキ」に該当する。しかし、同号の事由の場合、すなわち判決に影響を及ぼすべき犯罪行為があった場合には、刑事手続で有罪の判決が確定したか又は証拠欠缺以外の理由で有罪の確定判決を得ることができない場合でないと再審事由にならないところ(民訴法四二〇条二項)、本件において、再審被告が再審原告の住所を知りながら公示送達の申立てをして確定判決を騙取したことについて、再審被告に有罪の判決が確定した等の事実につき主張、立証は何らなされていないから、結局、民訴法四二〇条一項五号の適用をいう再審原告の主張は不適法である。

四よって、本件再審の訴えをいずれも却下し、再審費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官谷澤忠弘 裁判官古田浩 裁判官細野敦)

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