大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成2年(刑わ)1348号 判決 1990年10月12日

主文

1  被告人Aを懲役一年に処する。

被告人Aに対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

被告人Aから、警視庁麻布警察署で保管中の賭博機械一〇台(平成二年東地庁外領第一六九二号の一ないし一〇)、現金合計五一万九〇〇〇円(同号の一一、一二及び五二)、プリンター一台(同号の四五)、モニターテレビ二台(同号の四六及び四七)並びにモニターカメラ一台(同号の四八)を没収する。

2  被告人Bを懲役一〇月に処する。

被告人Bに対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

3  被告人Cを罰金七万円に処する。

被告人Cにおいてその罰金を完納することができないときは、金五〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

4  被告人Dを懲役四月に処する。

被告人Dに対し、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人A及び同Bは、共謀の上、東京都港区<住所略>のポーカーゲーム店「CLUBピュア」の店内に「ゴールデンポーカー」と称するゲーム機一〇台(平成二年東地庁外領第一六九二号の一ないし一〇)を設置し、常習として、平成二年五月一四日から同年六月二七日までの間、右店内において、Dら不特定多数の賭客を相手方として多数回にわたり、それぞれ金銭を賭け、右ゲーム機を使用し、その画面に表示される絵柄の組合せなどにより勝敗を争う方法により賭博をした

第二  被告人Cは、被告人A及び同Bの右犯行に際し、被告人Aらが賭博行為をしていることを知りながら、平成二年五月一六日ころから同年六月二七日までの間、前記「CLUBピュア」店内において、主として厨房担当従業員として、随時賭客の注文に応じ飲食物を調理・提供し、また客の入りの多いときには、いずれも被告人Bの指示に従って、同被告人から受領した清算金等を、賭客に手渡したり、前記ゲーム機のゲーム開始のセッティングを行ったりし、もって被告人A及び同Bの前記犯行を容易ならしめてこれを幇助した

第三  被告人Dは、常習として、同年六月二七日午後七時一〇分ころ、前記「CLUBピュア」店内において、A及びBを相手方として、金銭を賭け、前記ゲーム機を使用し、前記方法により賭博をした

ものである。

(証拠の標目)<略>

(被告人Cの罪責について)

一  被告人Cの罪責に関し、検察官は、主位的に、被告人Cは被告人A及び同Bと共謀の上常習として判示第一の賭博をしたものであるとして、仮に被告人Cに賭博の常習性が認められない場合には(単純)賭博罪の共同正犯が成立する旨主張しており、これに対し、弁護人は、被告人Cについては(単純)賭博罪の幇助犯の限度で罪責を負うにすぎない旨主張している(以下、判断部分においては「被告人」肩書を省略し、単に「C」「A」「B」という。)。

ところで、判示第一の賭博の主犯がAとBであること、Cが違法を知りつつその賭博に物質的な加功を行ったことは関係証拠上明らかであり、当事者間においてもこの点は争いのないところであるから、結局、本件の争点は、①Aらの賭博に対するCの加功の法的形態は共同正犯なのか幇助犯なのか、②Cが賭博の常習性を有しその発現として右加功を行ったのか、の二点に集約することができる。右①②の争点は内容的に密接に関連するものではあるが、賭博の常習性は刑法六五条二項のいわゆる加重身分に当たるから、共犯形式の問題とは一応別個に、各共犯者ごとに個別的にその存否を決すべきものと思われる(大審院刑事連合部大正三年五月一八日判決・刑録二〇輯九三二頁参照)。そこで、以下においては、まず法律判断の前提となるべき事実関係を確定した後、①②の順に各争点に対する当裁判所の判断を示すこととする。

二  前掲の関係各証拠、殊に、判示第一の期間中終始Cとペアを組んで仕事をしていたBの当公判廷における供述、及びC自身の捜査段階及び当公判廷における各供述等によって、Cが判示「CLUBピュア」(以下「本件ゲーム店」という。)に勤務するに至った経緯、同店での勤務状況及びその仕事の内容等を認定すると、以下の事実を認めることができる。

1  Cは、調理士免許の取得を目指し平成二年五月七日ころから昼間は渋谷区内の飲食店に勤務していたが、同店の給料が安かったことに加え、同年夏に両親と北海道に旅行する計画があったためその資金の一部を稼ぐべく、夜も飲食店でアルバイトをしようと考えていたところ、同年四月下旬に買った就職情報誌に「レストランCLUBピュア調理ホールスタッフ」と載っていたことから、これに応募し、同年五月一一日ころ本件ゲーム店においてBとその後同席したAから採用面接を受けた。その際、同店を訪れたCは、判示の賭博ゲーム機のあるフロア(以下「ゲームフロア」という。)とはカーテンで仕切られた更衣室のような部屋に通され、AやBから、「私たちの言ったとおり調理場をやってくれればいい。」などと説明を受けたものの、本件ゲーム店が違法なゲーム機賭博を行う店である旨の特段の説明はなかったことから、同店は普通のレストランパブであって自己はその厨房担当であると思い込み、時給一〇〇〇円の約束の下、日曜・祝日と火曜日を除く毎日の午後六時から午前一時まで同店で働くこととなった。

2  五月一四日から本件ゲーム店で働き始めたCは、当初はやはり右のような認識で飲み物や軽食を作っていたものの、やがて三日目の五月一六日ころから、同店の構造や客の様子等から同店はレストランとは名ばかりで実は違法なゲーム機賭博をする店であるという実態に気付くようになり、この時点で店を辞めることも考えはしたものの、やはり一度働き始めた以上は少なくとも一か月くらいは勤務し給料等の締めが終わった段階で辞めようと決意するに至り、その後も六月末には同店を辞める意思でずるずると勤務を継続していた。

3  本件ゲーム店における勤務態勢は午後三時から午前一時までを担当する早番(責任者はB)と午前一時から午前一〇時までを担当する遅番(責任者はA)とに分かれており、Cは終始Bとペアを組んで早番(但し、Cに限り午後六時から)を担当していたが、Cが一人で店の番をしたりするようなことは全くなかった。

本件ゲーム店でのCの仕事の内容は、その七割方は厨房での飲食物の調理の仕事であり(同店は、サービスの一つとして、客の注文があれば無料でチャーハン・ラーメン・スパゲッティ等の飲食物を客に提供することとしており、客の約二人に一人はこれを注文する状態であったため、厨房専門の従業員が一人必要であった。)、三割方がゲームフロアでの仕事であった。しかし、Cは、カードゲームとしてのポーカーのやり方(したがってその手役の種類・強弱)や本件ポーカーゲーム機の遊び方自体を知らなかった上、同店のゲームは違法であると認識し、かつ短期間で同店でのアルバイトを辞めるつもりであったため、自ら進んでゲームフロアでの仕事を手伝ったり、またその仕事を積極的に覚えようとしたことはなく、勤務時間中も多くは厨房に引っ込んでいたものの、ただ不意に客が多くなった折など(通常は客の応対はB一人で十分であった。)にBが呼んだ場合にだけ、全て同人の指示に従ってゲームフロアでの仕事を手伝った。

ゲームフロアでの仕事は、Cだけが担当していた飲食物の調理・提供の仕事を除くと、その主なものは、(a)ゲーム用の現金の両替、(b)キーアップ、すなわち店を訪れた客がゲームを開始する際に特定の点数(初めての客には一〇〇点、二回目以後の客には二〇〇点)をサービスするため、ゲーム機の横にキーを差し入れて一〇〇点ごとに点数分だけひねること、(c)客が特殊な手役を作った場合に、その主役の稀少性に応じて定めらた「御祝儀金」を客に交付すること、(d)ゲームの終了後に客に持ち点がある場合には、その点数に応じて一点につき一〇〇円の割合で換金すること、(e)ペイアウト、すなわち客がゲームを終えた後に持ち点を零点にするため、ゲーム機の裏側面にあるペイアウト用のボタンを押すこと、(f)遅番勤務のAと交替する際、早番勤務時の客数・換金額・御祝儀金額を集計表にメモしてAに引き継ぐこと、(g)客に提供する飲食物(及びその材料等)の買入れをすることなどであるが、このうち、全てをCが任されていたのは前述の飲食物の調理・提供の仕事に密接に関連する(g)の仕事だけであり(しかも、その費用はその都度Bから受領していた。)、(a)(e)は極めて単純かつ機械的な作業であって、いずれについてもBの指示に基づいてCはこれを行っていた。また、(b)は客を見分けてサービスする点数を選択する点で、(c)は手役の内容等から判断して「御祝儀金」の金額を決定する点で、(d)は点数から換金額を算出して現金を支出する点で、多少とも実質的な判断を伴う作業であるが、C自身は、厨房にいることが多く客を見分けられないから(b)の判断は無理であり、また手役の内容やこれに対応する「御祝儀金」の額を知らず、また換金割合すらも知らなかったから、(c)や(d)の判断も不可能であって、結局その実質的判断についてはいずれもBがこれを行い(特に(d)については、Bがモニターテレビで客の持ち点を全て把握し、換金額を計算していた。)、Cは単にキーを機械に入れてひねるだけの機械的作業((b)につき)やBから客への現金受け渡しの作業((b)(d)につき)だけを全てBの指示に従って行っていた(なお、(b)の作業の関係で、本件ゲーム店が捜索を受けた当時、Cが換金用の現金約五〇万円の入った財布を所持していた事実が認められるが、右の財布は「Cら他の従業員には金を触らせるな。」というAの指示により平素はBの所持していたものであって、ただ例外的にトイレに行く時などにBがCに預けるにすぎなかったのであり、本件捜索当時もそのような事情の下にあったことが窺われるから、Cが右財布を所持していたことの一事をもって同人が換金用の現金を実質的に管理していたものと推認することはできない。)。まして、(f)のような本件ゲーム店の経営にも関係する作業はCの全く与かり知らぬところであって、Cは、せいぜいBがメモを作成する際、同人が口授する数字をそのままメモに記入するような手伝いを行うにすぎなかった。

4  更に、本件ゲーム店にかかってきた電話はBが全てこれを受けることとなっており、CはBから「電話がかかってきても、電話には出るな。」「Bが電話で話をしているときは、なるべくそばに来るな。」などと言われていた。また、同店の入口ドアは暴力団関係者や警察の手入れを警戒して通常は施錠されており、入口ドア上部に設置されているモニターカメラを通して客と思われる人物が来たことが確認された場合にだけ開錠されていたが、Cは自らの判断で開錠することは許されず、Bの指示があった場合にだけその開錠を行っていた。

しかし他方、Cは、五月中旬ころから前後五回くらい、Bの指示により、六本木交差点付近で通行人に同店のサービス券を配付したこともあった。

5  本件ゲーム店における収益の分配に関しては、Aが経営者としてその収益の大半を取得し、Bにも月給五〇万円を渡していたのに対し、Cは時給一〇〇〇円であって一か月トータルでも一四万円程度を受領するにすぎなかった。

以上の事実を認めることができ、A及びBの捜査官に対する各供述調書のうち右認定に反する部分は、両名の当公判廷における各供述に照らし、たやすく信用することができない。

三 そこで、以上の事実を前提にまず①の争点について判断するに、確かにCはA及びBが違法な賭博行為をしていることを十分認識しながら約一か月間にわたって前記のような物質的加功を行っていたことは認められるものの、反面、右認定事実によれば、(1)Cは、最初から賭博行為に加担すべく本件ゲーム店の従業員になったものではなく、当初は飲食店に勤務するつもりで同店の厨房で働き始めたものの、勤務三日目くらいからようやく同店の実態を認識するようになり、その後は悪いことだとは思いながらも約一か月くらいの短期間で同店を辞める意思でずるずると同店での勤務を続けていたものであり、もともとポーカーのやり方やゲーム機の遊び方を知らなかったことに加え、右のような経緯で勤務していたことから、ゲームフロアでの仕事には関心が薄く、その仕事を積極的に手伝おうという意思もなければ仕事を覚えようという意識もなかったのであって、結局、C自身の内心においては、終始、Aらとともに自己の犯罪として賭博を行っているという意識はなかったものと認められること、(2)この点はAやBの側においても同様であって、もともと採用面接の際からCに対しては本件ゲーム機賭博の実態を知らせておらず、その指示に従って厨房で働くように告げただけである上、その後も、ゲームフロアでの仕事を積極的にCに覚えさせようとした形跡はなく、Cにはできるだけ金は触らせずまた電話にも出ないようにさせ、実質的な内容を伴う仕事は一切させないようにしていたものであって、AやBも、Cと意思を相通じて本件ゲーム機賭博を行っているという意識はなかったと認められること、(3)これを現にCが行った本件ゲーム店での仕事について見ても、その七割方は厨房での飲食物の調理・提供の仕事やこれに関連する仕事であり、残りの三割を占めるゲームフロアでの仕事も、前記二の3、4において詳細に認定したとおり、Bが求めた場合にだけ、いずれも全面的にBの指示に基づいて行われた極めて単純かつ機械的なものであって、正犯意思の徴表とも認め得るような自らの判断で行う実質的な仕事は全くなかったと言わざるを得ないこと、(4)更にこれを本件ゲーム機賭博による利益の分配という観点から見ても、その利益の大半はAとBが取得しており、C自身の給料は単純作業に対するアルバイト報酬の域を出ないものであって、A及びBの報酬とCの報酬との間には格段の差が存在すること、以上のような諸事情が窺われるのであって、これら諸般の事情を総合すると、CとA及びBとの間には、賭博の事前共謀はもとより、判示の期間中も終始、共同して本件ゲーム機賭博を行う旨の意思の連絡は存在しなかったものと認めざるを得ず、結局、CにはAらとの共同正犯は成立せず、幇助犯の限度で(しかも幇助の故意の生じた五月一六日ころ以降に限定して)その罪責を問うことが相当であると考えられる。

四 次に、②の争点について検討するに、そもそも常習賭博罪が成立するためには、賭博の常習性すなわち賭博を反覆累行する習癖を有する者が、その習癖の発現として賭博をしたことが必要であると解されるところ(最高裁大法廷昭和二三年七月二九日判決・刑集二巻九号一〇六七頁、最高裁昭和五四年一〇月二六日決定・刑集三三巻六号六六五頁等参照)、もともとCは賭博や麻雀には全く関心がなく、またトランプ遊びすらもあまり知らないことが窺われる(Cの父親である証人C2の当公判廷における供述並びにC本人の捜査段階及び当公判廷での各供述―同証人によれば、Cは「神経衰弱」と「ばば抜き」くらいしかトランプ遊びを知らないとのことである。)し、同人には賭博罪の前科・前歴も全く存在しないから、本件以前にCが「賭博を反覆累行する習癖」を有していなかったことは明らかである。

そこで、進んで前記昭和五四年一〇月二六日の最高裁決定の事案のように、当該賭博行為の反覆累行を通じて「賭博を反覆累行する習癖」が獲得、形成されたものと認められるか否かについて判断するに、本件におけるCは、既に詳細に認定判断したとおり、自ら主体的に本件ゲーム機賭博を行ったものではなく、前述のような消極的な態様でAらの賭博行為を幇助したにすぎないものであるから、Cの幇助の期間が約一か月間の長きにわたることやゲーム機賭博の賭博類型としての特殊性(営業犯的色彩が強いこと)を十分考慮に入れてもなお、右幇助行為の反覆累行を通じて「賭博を反覆累行する習癖」が獲得、形成されたものとは到底認めることはできない。

よって、Cには「賭博の常習性」を認めることはできず、結局、Cについては判示第二のとおり(単純)賭博罪の幇助犯が成立するにすぎないものと考えられる。

(法令の適用)

被告人A及び同Bの判示第一の所為はいずれも刑法六〇条、一八六条一項に、被告人Cの判示第二の所為は同法六二条一項、一八五条(六五条二項)、罰金等臨時措置法三条一項一号に、被告人Dの判示第三の所為は刑法一八六条一項にそれぞれ該当するところ、判示第二の罪について所定刑中罰金刑を選択し、判示第二の罪は従犯であるから同法六三条、六八条四号により法律上の減軽をし、それぞれその所定刑期及びその金額の範囲内で、後記「量刑の理由」により、被告人Aを懲役一年に、被告人Bを懲役一〇月に、被告人Cを罰金七万円に、被告Dを懲役四月に、それぞれ処することとし、被告人Cにおいてその罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置することとし、被告人A、同B及び同Dについては、それぞれ情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から、被告人A及び同Bについては三年間、被告人Dについては二年間、それぞれその刑の執行を猶予することとし、警視庁麻布警察署で保管中の賭博機械一〇台(平成二年東地庁外領第一六九二号の一ないし一〇)、プリンター一台(同号の四五)、モニターテレビ二台(同号の四六及び四七)、モニターカメラ一台(同号の四八)並びに現金四八万九〇〇〇円(同号の五二)は判示第一の常習賭博の用に供し、又は供しようとした物であり、現金三万円(同号の一一及び一二)は判示第一の常習賭博によって得たものであって、いずれも被告人A以外の者に属しないから、現金三万円(同号の一一及び一二)については同法一九条一項三号、二項を適用し、その余の押収物件については同法一九条一項二号、二項を適用して、同被告人からこれらを没収することとする(なお、検察官は、同署で保管中の現金五万七二六一円〔同号の一九〕についても没収すべき旨の求刑をするが、関係証拠によれば、同金員は、主として賭客に提供する飲食物〔及びその調理前の材料〕の購入費として用いることが予定されており、従として同店の広告用チラシの印刷費として用いることが予定されていたことが認められるのであるから、仮に右金員が刑法一九条一項二号所定の犯行供用物件に当たると解したとしても、右金員と判示常習賭博の犯行との関連性の希薄さや刑法一九条一項二号の保安処分的性格等に鑑み、当裁判所は、その没収を必要なきものと認めた次第である。)。

(量刑の理由)

被告人らの本件の各犯行は、いずれもポーカーゲーム機を用いた極めて射幸性の強い賭博に関わるものであって、社会に及ぼす悪影響を顧みない身勝手な所業と言わざるを得ない上、その個別情状を見ても、被告人Aは、安易に多額の利益を得ようとの動機に基づき、ゲーム機賭博の違法性を十分に認識しながら多額の資本を投下して本件ゲーム店を開業し、その後も経営者の立場から巧妙かつ周到な方法で本件ゲーム機賭博全般を取り仕切っていたものであり、その動機・犯行態様ともに悪質である上、本件共犯者間において中心的役割を果たしたものと認められ、その他被告人Bらが逮捕された後無責任にも逃亡を企てていた事情に鑑みても、その刑事責任は重大であると言わざるを得ず、次いで被告人Bは、被告人Aの違法な目的を十分認識しながら、高額の給料にひかれ、店の開業準備段階から積極的に同被告人に協力し、開業後も交替制勤務の一方の責任者として店の営業にとって不可欠の役割を果たしていたものであり、その刑事責任は被告人Aに準じ重大なものであると言うべきであり、一方、被告人Cは、本件ゲーム店の厨房担当のアルバイトとして雇われたものの、勤務三日目ころからは店の営業内容が、実質は賭博場であって違法なものであることに気付いていながら給料欲しさから、その後もずるずると被告人Bらの手足としてその賭博行為を手伝っていたものであって、その刑事責任を軽視することはできず、更に被告人Dは、本件ゲーム店の賭客ではあるが、被告人Aから依頼されて本件ゲーム店の名義人になったり、自らも他のポーカーゲーム店の店長をしたりして、深くゲーム機賭博に手を染め、日ごろから頻繁に本件ゲーム店に出入りして賭博を行った末に、常習として判示第三の犯行に及んだものであって、その刑事責任は到底看過することができない。

しかしながら、他面、被告人らは、いずれも本件による初めての逮捕・勾留を通じて本件犯行を深く反省・悔悟していること、各被告人とも、未だ前科がないか(被告人B、同C)又は交通関係の略式罰金前科が一犯あるだけ(被告人A、同D)であり、まだやり直しのきく年齢であること、被告人B、同C及び同Dは保釈後既に正業に就いて真面目に働いており、被告人Aも今後正業に就き勤労により生計を立ててゆくことに意欲を示していること、各被告人の近親者がそれぞれの被告人の今後を監督する旨当公廷において誓約していることなど被告人らのために酌むべき事情も窺われる。

そこで、当裁判所は、以上述べたような諸情状を総合考慮した結果、特に本件において各被告人が果たした役割等を重視して、各被告人に対し主文掲記の懲役刑又は罰金刑を量定した上、懲役刑に処した被告人三名についても、なお前述のような酌むべき情状を考慮して、今回に限り社会内において更生する機会を与えるべく、その刑の執行を猶予することが相当であると判断した次第である。(検察官求刑―被告人Aにつき懲役一年二月、賭博機械一〇台・現金五七万六二六一円。モニターテレビ二台・モニターカメラ一台没収、被告人Bにつき懲役一年二月、被告人Cにつき主位的訴因認定の場合は懲役八月、予備的訴因認定の場合は罰金一〇万円、被告人Dにつき懲役六月)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官杉田宗久)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例