大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成2年(ワ)3323号 判決 1990年10月30日

主文

一  被告は原告に対し、金五〇万五〇〇〇円、及びこれに対する平成元年七月一日から支払い済みに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれは二分し、その一を被告の、その余を原告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

被告は原告に対し、金二〇〇万円、及びこれに対する平成元年七月一日から支払い済みに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、経営幹部や特殊技術者等の人材を探し、スカウトして、それを必要とする企業に紹介して就職せしめる、いわゆるヘッドハンティング等を業とする者であり、被告は「メルズクリニック」なる名称の下に、主として風俗営業に従事する女性を対象として婦人科及び内科の診療を行う診療所を経営する者である。

2  原告は、被告から昭和六二年七月八日、右診療所に勤務する医師を探索して紹介し就職させることの依頼を受けた。

3  原告は尽力の末、平成元年三月一八日、漸やく吉田武彦医師を被告に紹介して就職させることができ、被告は同医師を年俸金一〇〇〇万円の条件で採用した。

4  被告は原告に対し、平成元年三月三〇日、右紹介等に対する報酬として金二〇〇万円(調査活動費金五〇万円の他、吉田の年俸金一〇〇〇万円の一五パーセント金一五〇万円の報酬の合計)を平成元年六月末日までに支払うことを約した。

5  原告は右合意に基づき被告に対し約定の報酬金の支払を求めている。

二  争点

1  右に掲げた事実は被告も認めているが、被告は原告が右約定報酬金を請求できない理由として次のとおり主張している。つまり、原告は職業安定法三二条一項に基づき労働大臣の許可を得て、特別の技術を必要とする職業に従事する者の職業をあっ旋する業務を行っている者であり(原告が右許可を得ていることについては当事者間に争いがない。)、本件の紹介等は右許可にかかる業務に該当するものであるところ、右許可業務に対して受けることができる紹介手数料については職業安定法三二条六項、同法施行規則二四条一四項によって、その上限が定められており、その制限によれば、本件においては吉田医師の六ヶ月分の賃金の百分の一〇・一相当である五〇万五〇〇〇円を越える手数料を受けてはならないとされている。従って原告は右金額を超える報酬請求権を有しない、と被告は主張した。

2  これに対して、原告は、原告の業務は企業の幹部や特殊の技能者を探し出し依頼者たる企業に就職させるいわゆるヘッドハンティングであって、本件の吉田医師の紹介等もそれに該るが、いわゆるヘッドハンティングは、依頼企業が必要とする人材を探し出して、これを説得し就職させるものであって、単なる職業紹介ではないし、このようなヘッドハンティングに対する需要は、経済社会の発展によって正当に生じたものであり、職業紹介にまつわる弊害の生じるおそれもないから、職業安定法三二条等による規制の対象ではなく、紹介手数料についての制限にも服することはない、と反論した。

第三  争点に対する判断(省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例