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東京地方裁判所 平成11年(ワ)5725号 判決 1999年7月23日

原告

日本ビジュアル著作権協会

右代表者理事長

右訴訟代理人弁護士

藤原宏高

井奈波朋子

掘籠佳典

被告

青葉出版株式会社

右代表者代表取締役

被告

株式会社教育同人社

右代表者代表取締役

被告

株式会社日本標準

右代表者代表取締役

被告

株式会社光文書院

右代表者代表取締役

被告

株式会社新学社

右代表者代表取締役

右被告五名訴訟代理人弁護士

岡邦俊

近藤 夏

前田哲男

被告

株式会社文溪堂

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

石田英遠

前田陽司

湯 光弘

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用はAの負担とする。

事実及び理由

一  本件の事案の概要

本件は、「原告は、別紙著作権者目録記載の各著作権者がそれぞれ著作権を有する、文部省検定済み平成八年度版小学生用教科書に掲載されている各作品を含む著作物について、右の各著作権者との間で独占的利用権を取得する旨の契約を締結したところ、被告らは、右各作品を題材とした補助学習教材を出版して、右の各著作権者の著作権を侵害している。」と主張して、原告の独占的利用権に基づき、又は右の各著作権者に代位して、右補助学習教材の出版発行、販売及び頒布の差止めを求めている事案である。

二  本件の経過

1  原告は、本件の第一回口頭弁論期日において、請求を放棄すると述べ(以下これを「本件請求放棄」という。)、その旨の調書が作成された。

2  その後、被告青葉出版株式会社、同株式会社教育同人社、同株式会社光文書院、同株式会社新学社及び同株式会社日本標準は、原告には当事者能力がないから、本件請求放棄は無効であるとして、期日指定の申立てを行った。

3  その後指定された本件の第二回口頭弁論期日において、原告は、原告が権利能力なき社団であると述べて、本件請求放棄が適法であると主張し、被告らは、原告が権利能力なき社団とはいえないと主張して、主文同旨の判決を求めた。

三  原告の当事者能力について

1  権利能力なき社団の成立要件

民事訴訟法二九条は、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理者の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。」とする。

右にいう法人でない社団とはいわゆる権利能力なき社団のことであるが、権利能力なき社団といいうるためには、構成員が存在し、その構成員による団体としての組織を備え、構成員による多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることを要するものと解するのが相当である。

そこで、まず、原告に、右のような意味での構成員が存するかどうかについて判断する。

2  事実関係

(一)  原告の規約である「日本ビジュアル著作権協会規約」(以下「本件規約」という。)は、第四章において、「役員及び評議員」について、次のとおり定めている。

(1) 原告には理事八人、監事二人の役員が置かれている(第一五条)。理事は理事会を構成して、業務の執行を決定し、監事は民法五九条所定の職務を行う(第一七条)。

理事をもって構成される理事会は、協会の運営に関する重要事項を議決する(第二四条、第二五条)。理事会の運営においては多数決の原則が行われている(第二八条)。

(2) また、原告には、理事長が理事会の同意を得て委嘱する、七人以上一五人以下の評議員が置かれている(第二一条)。

評議員をもって構成される評議員会は、協会の事業運営に関する重要事項について、理事会の諮問に応じて審議し、又は意見を具申する(第三一条、第三二条)。

評議員会の運営においても、理事会の規定が準用され、多数決の原則が行われている(第三三条)。

(二)  本件規約は、第六章において、「会員」について、次のとおり定めている。

「会員」には、正会員、賛助会員及び名誉会員の三種類があり、正会員は「当協会の目的に賛同し、当協会と著作物の権利保護、管理並びに仲介に関する包括契約を交わした個人、法人、又は団体」、賛助会員は「当協会の目的に賛同し、その事業に協力しようとする個人、法人、又は団体」、名誉会員は「当協会に功労のあった者で、理事会の議決をもって推薦された者」とされている(第三四条)。

3  右2で認定した事実によると、本件規約において定められている理事は、原告の執行機関である理事会を構成する者であり、評議員は、理事会の諮問機関である評議員会を構成する者であると認められ、いずれも、原告の構成員とは認められない。また、本件規約において定められている「会員」は、原告と著作物の権利保護、管理並びに仲介に関する包括契約を締結した者、原告に協力しようとする者又は原告に功労のあった者であって、これらの者が原告の意思決定に関与する総会等の機関が存するとも認められないから、これらの者も原告の構成員とは認められない。

なお、原告は、評議員は、会員から選ばれるから、会員は、評議員会を通して原告の意思決定に関与することができる旨主張するが、本件規約には、評議員を会員から選ぶ旨の規定はない上、評議員会は、右認定のとおり理事会の諮問機関であって、原告の意思決定機関ではないから、原告の右主張は採用できない。

その他、原告の構成員となるべき者が存在するというべき事実は認められないから、原告は、構成員を有しないというほかない。

したがって、原告が権利能力なき社団であるとは認められない。

4  本件規約には「当協会は財団法人等の公益法人化をはかる。」(第四条)と定められているが、原告は、第二回口頭弁論期日において、原告は権利能力なき財団ではない旨述べている上、原告が特定の財産を管理していたというべき事実も認められないから、原告が権利能力なき財団であるとも認められない。

四  以上のとおり、原告につき、民事訴訟法二九条による当事者能力は認められない。

当事者能力のない者による請求の放棄は効力を生じないから、本件は本件請求放棄によって終了したものとはいえず、本件訴えは不適法なものであり、却下を免れない。

原告の当事者能力が認められないために、訴えを却下するべき場合の訴訟費用については、同法七〇条、六九条二項を準用して、原告の代表者として訴えを提起したAに負担させるべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 杜下弘記)

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