大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 昭和58年(ネ)119号 判決 1984年12月10日

控訴人(第一審甲事件被告、乙事件原告)

岩城松吉

被控訴人(第一審甲事件原告)

寺前音次郎こと寺前音治郎

被控訴人(第一審乙事件被告)

柏谷朝夫

ほか二名

主文

一  原判決中控訴人と被控訴人寺前音治郎に関する部分を次のとおり変更する。

1  控訴人は被控訴人寺前音治郎に対し、金一〇〇万四七五五円及びこれに対する昭和五〇年一一月二〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人寺前音治郎の控訴人に対するその余の請求を棄却する。

二  被控訴人柏谷朝夫、被控訴人株式会社板急及び被控訴人妻倉暁に対する本件控訴をいずれも棄却する。

三  控訴人と被控訴人寺前音治郎との間に生じた訴訟費用は第一・二審を通じてこれを二分し、その一を控訴人の、その余を同被控訴人の各負担とし、被控訴人柏谷朝夫、被控訴人株式会社板急及び被控訴人妻倉暁との間の控訴費用は控訴人の負担とする。

四  この判決は被控訴人寺前音治郎の勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

一  申立

(控訴人)

1  原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。

2  被控訴人寺前音治郎(以下「被控訴人寺前」という。)の請求を棄却する。

3  被控訴人柏谷朝夫(以下「被控訴人柏谷」という。)、被控訴人株式会社板急(以下「被控訴会社」という。)及び被控訴人妻倉暁(以下「被控訴人妻倉」という。)は控訴に対し、各自金一一二五万二一六五円及び内金一〇九五万二一六五円に対する昭和五〇年一一月二〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人らの負担とする。

との判決並びに3項につき仮執行の宣言を求める(当審において右のとおり請求を減縮した。)。

(被控訴人寺前及び被控訴人妻倉)

「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」旨の判決を求める。

(被控訴人柏谷)

控訴棄却の判決を求める。

(被控訴会社)

被控訴会社は適式の呼出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。

二  主張

当事者双方の事実上の主張は、次のとおり訂正、付加するほかは原判決事実摘示と同一であるから、これをここに引用する(ただし、原判決四枚目裏六行目及び同九行目並びに同九枚目表二行目にそれぞれ「慰謝料」とあるのを、いずれも「慰藉料」と、同五枚目表一一行目に「練一一」とあるのを「練馬一一」と、同七枚目表一三行目に「中村脳神経外科病院」とあるのを「医療法人医仁会中村脳神経外科病院(以下「中村脳神経外科病院」という。)」と各訂正し、同九行目の「社会福祉法人北海道社会事業協会岩内病院」の次に「(以下「岩内病院」という。)」を加える。)。

(被控訴人寺前)

1  原判決三枚目裏一四行目に「六〇日」とあるのを「三六日」と訂正する。

2  同四枚目表末行冒頭から同裏五行目末尾までを次のとおり改める。

「被控訴人寺前は青果物卸売商を営んでいたものであるところ、本件事故により、次の得べかりし利益を失つた。

(1) 休業による営業利益の喪失(金五八万二〇〇〇円)

本件事故当日から昭和五一年五月三一日までの一九四日間休業を余儀なくされ、一日当り三〇〇〇円合計金五八万二〇〇〇円相当の営業利益を失つた。

(2) 商品の売上利益の喪失(金九五万六九三〇円)

本件事故当時柏谷車に積載してあつた馬鈴薯三〇〇俵を東京の市場で一俵当り一五〇〇円で売却する予定であつたところ、その運搬が不可能となつてこれを函館の同業者に合計八万八八七九円で売却することを余儀なくされ、その差額分三六万一一二一円相当の売上利益を失つた。

また、右事故当時余市の倉庫に保管中の馬鈴薯五六三俵を京都の市場で一俵当り一五〇〇円で売却する予定であつたところ、その運搬も不可能となつてこれを札幌の同業者に合計二四万八六九一円で売却することを余儀なくされ、その差額分五九万五八〇九円相当の売上利益を失つた。」

3  控訴人の後記付加抗弁事実中、自賠責保険からその主張の各金員の支払がなされた事実(ただし、渋谷整骨院治療費分は、右整骨院に直接支払われた。)は認めるが、その主張は争う。

(控訴人)

1  被控訴人寺前の前記2の主張事実は知らない。

2  原判決六枚目表五行目の次に、次のとおり抗弁(原審甲事件抗弁)を付加する。

「3 損害の填補

被控訴人寺前は本件事故による損害につき、自賠責保険から次のとおり合計金八八万四六四五円の支払を受けたので、これを損益相殺すべきである。

(一) 渋谷整骨院治療費 金六七万九四〇〇円

昭和五一年三月六日 四九万二六〇〇円

同年四月二一日 一八万六八〇〇円

しかして、右整骨院における治療は、医師の指示によるものではないから、右金員は本件損害の一部に充当されるべきものである。

(二) 入通院慰藉料 金二〇万五二四五円

昭和五一年三月六日 九万二〇四五円

同年四月二一日 一一万三二〇〇円」

3  原判決一〇枚目表一行目に「一一二五万四一六五円」とあるのを「一一二五万二一六五円」と、同二行目に「一〇九五万四一六五円」とあるのを、「一〇九五万二一六五円」と各訂正する。

三  証拠関係

本件訴訟記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  当裁判所は被控訴人寺前の請求を主文第一項記載の限度で正当として認容し、その余はこれを棄却し、また、控訴人の被控訴人柏谷、同株式会社板急、同妻倉に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは原判決の理由説示(第一及び第二)と同一であるから、これをここに引用する。当審における新たな証拠調の結果によつても、右認定判断を左右するに足りない。

1  原判決一三枚目表八行目に「事故当事」とあるのを「事故当時」と訂正する。

2  同一四枚目裏八行目に「四トン」とあるのを「四・五トン」と訂正する。

3  同一六枚目裏一行目と二行目の間に、「(一) 休業による営業利益の喪失について」を加える。

4  同一七枚目表六行目の次に、次のとおり加える。

「(二) 商品の売上利益の喪失について

前示甲第八ないし第一一号証によれば、被控訴人寺前が本件事故後の昭和五〇年一二月一日と同月二日の両日、いずれも札幌青果株式会社に馬鈴薯合計五六三俵を、また、同月一〇日函館青果株式会社に馬鈴薯三〇〇俵を、その都度一俵当り一五〇円ないし七〇〇円で売却した事実を認めることができるけれども、本件全証拠によるも、同被控訴人においてその当時、右馬鈴薯を一俵当り一五〇〇円で売却することができたことを認めさせるに足りないから、売上利益喪失による損害は認められない。」

5  同表七行目に「慰謝料」とあるのを「慰藉料」と、同八行目に「慰謝する」とあるのを「慰藉する」と、同一〇行目に「抗弁2」とあるのを「抗弁2及び3」と各訂正し、同一一行目の冒頭に「1」と番号を付する。

6  同裏四行目の次に、次のとおり加える。

「2 被控訴人寺前が自賠責保険から合計金八八万四六四五円の支払を受けたこと、その内容が渋谷整骨院治療費六七万九四〇〇円及び入通院慰藉料二〇万五二四五円であることは当事者間に争いがない。

そこで、右保険金による本件損害の補填について考えるに、この中、右渋谷整骨院治療費の支払分については、右被控訴人は本訴請求において治療費を除外しているところ、前顕丙第二号証及び弁論の全趣旨によると、同被控訴人は、本件事故による受傷のため入院加療を要する状態であつたが、診察を受けた渋谷整形外科医院には空室がなかつたため、同医院の紹介で渋谷整骨院に入院したものであることが認められ、これに反する証拠はないから、これを本件損害に補填されたものと認めることはできない。従つて、控訴人の抗弁3は、入通院慰藉料についてのみ、前認定の慰藉料額の一部弁済と認めて同額を控除する(その残額は金三九万四七五五円となる。)限度で理由がある。」

7  同裏一行目に「追突」とあるのを「衝突」と訂正する。

8  同裏六行目に「一二一万円」とあるのを「一〇〇万四七五五円」と訂正する。

二  よつて、被控訴人寺前の控訴人に対する本訴請求は、金一〇〇万四七五五円及びこれに対する本件不法行為の日である昭和五〇年一一月二〇日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余は失当として棄却すべく、これと異なる原判決を右のとおり変更することとし、控訴人の被控訴人柏谷、被控訴会社及び被控訴人妻倉に対する本件控訴は理由がないからこれをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法九六条、八九条、九二条を、仮執行の宣言につき、同法一九六条一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 瀧田薫 吉本俊雄 和田丈夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例