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札幌高等裁判所 昭和54年(行コ)1号 判決 1981年5月28日

札幌市中央区宮の森一条一五丁目一二四七番地

控訴人(原審原告)

金本正

右訴訟代理人弁護士

江沢正良

同市同区大通西一〇丁目

被控訴人(原審被告)

札幌中税務署長

酒田光義

右指定代理人

辻井治

羽生隆次

畑中勇吉

松井一晃

右当事者間の昭和五四年(行コ)第一号課税処分取消請求控訴事件につき、当裁判所は次の通り判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、申立

(控訴人)

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が控訴人に対して昭和四三年四月二日付でした昭和三八年度、昭和三九年度、昭和四〇年度の各所得税についての重加算税賦課決定(但し、昭和三八年度分については昭和四五年四月二八日付裁決により取消された部分を除く)を取消す。

3  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

との判決を求める。

(被控訴人)

主文と同旨の判決を求める。

一、主張及び証拠

次の通り附加するほかは原判決事実摘示の通りであるからこれを引用する。

(一)  主張

(被控訴人)

控訴人のいわゆる協定総額主義なる主張(原判決五枚目表一三行目から同裏一四行目まで)につき、次の通り被控訴人の主張を補足する。

(1) 控訴人主張の「協定総額」又は「総額協定」とは一種の賦課課税方式を意味していると解されるが、この賦課課税方式は昭和二二年四月一日施行された所得税法によって導入された申告納税制度により法制度上から放遂され、税制度は昭和二二年四月一日以降自主申告制度に移行した。従って、それから二〇年近く経た本件係争年分のころにおいて、なお賦課課税方式的行政が行われることなど到底あり得ないことである。ちなみに、昭和三一年当時において、既に北海道における営・庶業納税者の青色申告の普及率は五〇パーセントを超えていたものであるから本件係争年ころにおいて自主申告制度は一般にほぼ定着していたと言える。

(2) 税務署では、納税組合ないし組合員が、税申告をどのように考え、どのように処理しているかにかかわらず、法の趣旨にのっとり、その申告を課税単位たる個人の自主申告であるとして取り扱ってきたものである。従って、個別の申告額が過少であると認めるときは、法の定めに従って必要な調査その他の手続を採るのであって、被控訴人は、控訴人に対しても、その自主申告額が過少と認められたので所得税法の定めるところにより一般納税者と同様税務調査を行ない、また控訴人自身もこの調査の結果を容認し、適法な修正申告書(賦課課税方式には修正申告という制度はない)を提出しているのである。

(3) 右の通りであるから、控訴人の本件係争各年分の確定申告は自主申告でなく、一種の賦課課税方式による税務署の指示額であるが如き主張は、事実に反することが明らかであり、かえって、控訴人ら納税組合の幹部実力者が自らの利益を図って内部的に申告額の分配をしていたことをうかがわせるものですらある。

(4) 従って、係争各年分の確定申告書は所得税法一二〇条の規定による控訴人の自主的判断に基づく計算による自主申告であり、これが修正申告による正当な各計数(売上高、仕入額等)を隠ぺいし又は仮装した過少な申告であることは明らかである。

(二)  証拠

(控訴人)

甲第四ないし第八号証を提出し、乙第四七号証の一、二の成立は不和と述べ、証人米沢政男の証言、控訴本人尋問の結果を援用した。

(被控訴人)

乙第四七号証の一、二を提出し、甲第四ないし第八号証の成立を認め、証人畑中勇吉の証言を援用した。

理由

当裁判所は、当審における新たな証拠調の結果を斟酌しても、控訴人の請求は理由がないと判断するものであるが、その理由は原判決がその理由において説示するところと同一であるからこれを引用する。当審における証人米沢政男の証言、控訴本人の供述中には、控訴人は同人を中心とする金本正友会、牛馬会、園遊会などいくつかの親睦団体をつくり控訴人の経営する「宮の森ガーデン」で右団体の会員がしばしば会合して飲食したが、昭和四〇年当時で右飲食の実費は会員から徴収する会費五〇〇円ないし一〇〇〇円の三倍ないし六倍であったところ、その差額分は控訴人個人が負担し、右飲食に使用する酒類、肉類等の仕入については、酒類は金本商会名義をもって鍵谷商店から購入し、肉類等は「宮の森ガーデン」仕入分を使用していた趣旨の各供述があり、当審において成立に争いない甲第四ないし第八号証(前記親睦団体の会員名簿)が提出されているが、原判決の援用する乙第一一、第一二、第一七号証、第四五号証の一ないし三、原審証人坂下弘志、同岩城秀晴の各証言によれば、控訴人は、同人に対する税務調査の段階において、右のような説明を全くしていないのみならず、むしろ、昭和四〇年に「金本商会」名義による仕入額が急増していることについては控訴人又は従業員がそれに関係していないとの趣旨を述べていることが認められること、また当審証人畑中勇吉の証言及び右証言によって真正に成立したものと認められる乙第四七号証の一、二に照らすと、前記親睦団体の会費が当時原価割れであったものとたやすく認めることは出来ず、従って前記の点に関する米沢証人の証言及び控訴本人の供述部分はいずれも信用出来ない。またその余の同証人の証言及び控訴本人の供述中原判決認定事実に反する部分は原判決援用の各証拠に照らし採用できず、他に控訴人主張の事実を認めるに足りる証拠はない。

よって、原判決は相当で本件控訴は理由がないから民事訴訟法三八四条一項によりこれを棄却し、控訴費用につき同法九五条を適用して主文通り判決する。

(裁判長裁判官 安達昌彦 裁判官 渋川満 裁判官大藤敏は転補のため署名捺印できない。裁判長裁判官 安達昌彦)

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