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札幌高等裁判所 昭和38年(ネ)8号 判決 1965年6月28日

控訴人 長沢雄七 外三名

被控訴人 北海道信用保証協会

主文

控訴人香山順次、杉野幸七の各控訴を棄却する。

原判決中長沢雄七、石崎彦二に関する部分を取り消す。

被控訴人の控訴人長沢雄七、石崎彦二に対する請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じ、被控訴人と控訴人香山順次、杉野幸七との間に生じた部分は同控訴人等の負担とし、その余は被控訴人の負担とする。

事実並びに理由

控訴代理人は、原判決を取り消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、認否、援用、当裁判所のなした事実上及び法律上の判断は、左記の点を附加、訂正するほかは、原判決の事実摘示及び理由と同一であるからこれを引用する。

被控訴人の陳述。

一  原判決事実摘示「被告等の抗弁に対し」の二のうち(原判決三枚目裏五行目)「被告長沢雄七、同杉野幸七の両名」とあるを「被告長沢雄七、同石崎彦二の両名」と訂正する。

二  控訴代理人の左記陳述中一、は認めるが、二は否認する。

控訴代理人の陳述。

一  被控訴人が借主である訴外松前陶石株式会社及びその保証人である控訴人等のために貸主である訴外北海道拓殖銀行に代位弁済したのは昭和二六年二月二八日であるからこの日が時効の起算日である。

二  従つて右起算日から満五ケ年を経過した昭和三一年二月二七日本件求償金債務は時効により消滅した。

(時効満了日は昭和三〇年五月三〇日であるとの主張を訂正する。)

控訴代理人主張の時効の抗弁に対する判断。

本件被控訴人は商人たる性格を有するものではないが、本件保証の主債務者である訴外松前陶石株式会社は商人であり、被控訴人の保証が右訴外会社の委託に基くことはその自陳するところである。委託に基く保証においては、保証人自身は商人でなくても主債務者が商人である限り、その保証委託行為が主債務者の営業のためにするものと推定される結果、保証契約の当事者双方に商法が適用されることとなる。もつとも、本件求償権は、本件被控訴人が主債務者に代つて弁済したことによつて発生するのであり、右弁済自体は、被控訴人が商人でない以上商行為とは言えないが、商法第五二二条の「商行為ニ因リテ生シタル債権」は、商行為から直接に発生した債権に限ると解すべきではなく、迅速結了を尊重する商取引の要請に答えた法条の精神に鑑み、保証委託行為が商行為である場合の保証人の弁済に因つて生じた求償権も、また、同条の適用を受ける債権であると解すべきである。故に本件求償権については、商事時効の成否を見るべきである。

被控訴人が主債務者及び連帯債務者等のために代位弁済したのは昭和二六年二月二八日であること争いがないので、同日から起算し満五ケ年を経過した昭和三一年二月二七日本件求償金債務は時効により消滅すべき筋合であるといわなければならない。

しかしながら成立に争いのない甲第一一号証、乙第二号証、原審における控訴人長沢雄七の本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、控訴人長沢雄七、石崎彦二は昭和三〇年六月八日被控訴人に対し右求償権債務を承認したことが認められるから、控訴人長沢雄七、石崎彦二については時効中断の効力を生じたものというべきである。

被控訴人は、控訴人杉野幸七が昭和三〇年六月一〇日右債務を承認したと主張するけれども、成立に争いのない甲第一二号証及び原審における控訴人杉野幸七の本人尋問の結果によるも債務承認の事実を認めることができず、他にこれを認めるに足る証拠がないから控訴人杉野幸七の債務については時効中断の効力を認めるわけにいかない。

そうとすれば、控訴人香山順次、杉野幸七は被控訴人に対し連帯して金一、〇二九、四〇七円及び内金一、〇二九、六七七円に対する昭和二六年七月二六日から昭和三四年三月三一日まで、金一、〇二九、四〇七円に対する昭和三四年四月一日から完済まで、それぞれ金一〇〇円につき一日金五銭の割合による遅延損害金を支払う義務あること明かであるが、控訴人長沢雄七、石崎彦二の債務は時効により消滅したので、同人等に対する本訴請求は失当として排斥を免れない。

よつて民事訴訟法第三八四条、第三八六条、第九六条、第八九条、第九三条に従い主文のとおり判決する。

(裁判官 伊藤淳吉 臼居直道 倉田卓次)

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