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札幌高等裁判所 昭和34年(ラ)77号 決定 1961年3月14日

抗告人 有限会社共栄商研

主文

原決定を取消す。

本件を釧路地方裁判所帯広支部に差戻す。

理由

本件抗告申立の趣旨および理由は、別紙記載のとおりである。

原審が、抗告人において債務者渡辺清に対する元利金二三、二〇〇円の金銭債権の強制執行として、右債務者の第三債務者国立帯広療養所より支給を受くべき退職給与金債権のうちその四分の一に相当する額につき債権差押並びに転付命令を申請したのに対し、右債務者の第三債務者に対し有する給与債権は、恩給債権とその性質を同じくする差押禁止債権であることを理由として、抗告人の右申請を却下したことは、記録上明らかである。しかし、国家公務員が退職のとき、国から支給を受ける退職手当金は、使用者である国が一定期間の勤続に対する賞与金の意味をもつて、一方的に負担し支給する給与である性格をもつものと解すべきであり、もちろん退職時における本人および本人の扶養する者の生活資料に充てるという趣旨も含まれないではなかろうが、その全額を一時に請求し得る債権でもあつて、その終身間定期的に支給を受ける恩給債権とは、自ら差異を認めざるを得ない。そうして右退職手当金については、別段にその差押を禁ずる明文がなく(昭和三四年五月一五日法律第一六四号によつて、従来の国家公務員等退職手当暫定措置法が改正せられ、一応恒久法の形をとつた国家公務員等退職手当法となつた現在でも、同法が同時に改正せられた国家公務員共済組合法との関連においても整備せられながら、なお、従来どおり差押禁止の明文を欠き、一方右共済組合法はその第四九条で同法に基く給付については原則として差押を禁じていることもあわせて考えるべきである。)、従つて、民事訴訟法第六一八条第一項第五号所定の国家公務員の職務による収入として債務者渡辺清の第三債務者国に対して有する一身専属の請求権ではあるけれども、同条第二項により、債権者抗告人は支給期の到来する退職手当金につき、その四分の一の額を、金銭債権の強制執行として差押えることができるものと解するのを相当とする。そこで原審が抗告人の本件債権差押並びに転付命令の申請を却下したのは、法律の解釈適用を誤つた違法があるものというべきで、原決定は取消を免れない。よつて、民事訴訟法第四一四条、第三八六条、第三八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 南新一 田中良二 輪湖公寛)

抗告の趣旨

原決定はこれを取消す

との決定を求めます。

抗告の理由

一、抗告人事実上の主張は原決定事実摘示と同一であるからこれを援用する。

二、ところが原裁判所支部は抗告人の右債権差押命令申請に係る退職給与金は執行法上恩給金に準じて同一に取扱われるものでその性質がこれを許さないとし恩給法第十一条の規定を準用して右申請を却下した。

三、しかれども退職金と恩給金をその給付の趣旨に於て同一視する原決定は法律の解釈を誤つたもので退職給与金は必ずしも譲渡禁止の債権となり得ない特質を有し給付の実情によつて異るものと解されるから原決定のように恩給債権に準じ差押譲渡を許されないものとは限らないと思料する。

四、仮に前記恩給法第十一条に準じて執行法上退職金は差押譲渡禁止債権であることが明確としても民事訴訟法第六百十八条第二項を準用すれば執行法上恩給債権たりともその給付額の四分一の限度に於て請求を為す差押譲渡は適法と思料するから抗告人の第三債務者に請求する右差押命令申請は正当で却下の理由なきものと解し本件抗告に及ぶ次第である。

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