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札幌地方裁判所 昭和62年(行ウ)8号 判決 1991年10月29日

北海道千歳市清水町四丁目一九番地の四

原告

協同組合千歳日商連

右代表者精算人

近川宗信

北海道千歳市清水町四丁目一九番地の四

原告

株式会社友商クレジット

右代表者代表精算人

井坂由雄

右両名訴訟代理人弁護士

池田雄亮

赤渕由紀雄

札幌市豊平区月寒東一条五丁目三番四号

被告

札幌南税務署長 坂下弘志

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被告

右代表者法務大臣

左藤恵

右指定代理人

中村哲

佐藤隆樹

溝田幸一

高橋徳友

三上隆司

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一原告らの請求

一  被告札幌南税務署長が昭和六〇年九月二日付けで原告らそれぞれの昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度の法人税に係る更正の請求についてした更正すべき理由がない旨の各通知処分を取り消す。

二  被告国は、原告協同組合千歳日商連(以下「原告千歳日商連」という。)に対し、二〇九〇万九三〇〇円及び内金五三万五九〇〇円に対する昭和五六年六月一日から、内金三〇二万一〇〇〇円に対する昭和五七年五月三一日から、内金九四七万三二〇〇円に対する昭和五八年八月三一日から、内金一五八万四一〇〇円に対する昭和五九年六月一日から、内金五九九万七三〇〇円に対する昭和五九年八月三一日から、内金二九万七八〇〇円に対する昭和六一年五月三〇日から各支払済みまで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。

三  被告国は、原告株式会社友商クレジット(以下「原告友商クレジット」という。)に対し、七六三万八九〇〇円及び内金一〇〇万八九〇〇円に対する昭和五八年八月三〇日から、内金五〇万四四〇〇円に対する昭和五九年六月一日から、内金六一二万五六〇〇円に対する昭和五九年八月三一日から各支払済みまで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  事案の要旨

本件事案の要旨は以下のとおりである。

1  原告らは、原告らそれぞれの昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五八年事業年度」という。)の法人税の確定申告には、同申告書記載の課税標準及び納付すべき税額に誤りがあったとして、被告札幌南税務署長に対し、更正の請求をした。これに対し、同税務署長は、昭和六〇年九月二日付けで、更正すべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。そこで、原告らは、右通知処分には、右課税標準、納付税額についての誤りを認めない違法があるとして、それぞれその取消を求めている。

2  原告千歳日商連は、昭和五五年四月一日から昭和五六年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五五事業年度」という。)、昭和五六年四月一日から昭和五七年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五六年事業年度」という。)、昭和五七年四月一日から昭和五八年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五七年事業年度」という。)及び昭和五八年事業年度の各事業年度において、合計二〇九〇万九三〇〇円の法人税を国を納付したが(遅くとも昭和五六年五月三一日までに五三万五九〇〇円を、遅くとも昭和五七年五月三〇日までに三〇二万一〇〇〇円を、遅くとも昭和五八年八月三〇日までに九四七万三二〇〇円を、遅くとも昭和五九年五月三一日までに一五八万四一〇〇円を、遅くとも昭和五九年八月三〇日までに五九九万七三〇〇円を、遅くとも昭和六一年五月二九日までに二九万七八〇〇円を納付したとする。)、右法人税はいずれも納付すべき理由がないとして、被告国に対し、不当利得に基づく右金員の返還を求めている。

3  原告友商クレジットは、昭和五七年四月一日から昭和五八年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五七年事業年度」という。)及び昭和五八年事業年度において、合計七六三万八九〇〇円の法人税を国に納付したが、(遅くとも昭和五八年八月二九日までに一〇〇万八九〇〇円を、遅くとも昭和五九年五月三一日までに五〇万四四〇〇円を、遅くとも昭和五九年八月三〇日までに六一二万五六〇〇円を納付したとする。)、右法人税はいずれも納付すべき理由がないとして、被告国に対し、不当利得に基づく右金員の返還を求めている。

二  争いのない事実

1  関係者

(一) 原告千歳日商連

原告千歳日商連は、友楽商店会商業協同組合と千歳商店会商業協同組合とが昭和四六年に合併して設立された共同組合(内国法人)であり、<1>組合員に対する事業資金の貸付け、組合員を加盟店とするクレジットカードの発行とその売掛金債権の回収、組合員の顧客に対する割賦販売売掛金債権の譲受けとその回収、<2>原告友商クレジットのクレジット貸付金債権の譲受けとその回収を業務としていた。

(二) 原告友商クレジット

原告友商クレジットは、クレジットカードによる商品購入並びにサービス利用者に対する割賦販売斡旋事業等を目的として、昭和四四年に設立された株式会社(内国法人)であるが、実際には、友楽商店会商業協同組合の消費者金融のクレジット事業部門であり、原告千歳日商連成立後も同原告と事務所を共用し、一般消費者に対して金銭を短期間信用貸しすることを主な業務としていた。

(三) 原告千歳日商連と原告友商クレジットとの関係

原告千歳日商連は、原告友商クレジットに対し、その事業運営に必要な資金を融資し、その貸付利息を受け取る一方、原告友商クレジットが消費者に対して融資したクレジット貸付金債権を譲り受けてその回収をすることを建前上の業務としており、譲り受けた右クレジット貸付金債権をクレジット売掛金として会計処理し、その売掛手数料及び歩合金を原告友商クレジットから徴収していた。

(四) 伊藤静子

伊藤静子(以下「伊藤」という。)は、原告千歳日商連の従業員であったが、昭和五一年八月から原告友商クレジットに出向し、原告友商クレジットの貸付け、回収にかかる一切の事務、経理、月次試算表の作成を担当していた。

2  原告らの確定申告、修正申告、更正請求

(一) 原告らは、昭和五八年事業年度について、昭和五九年五年三一日、別表確定申告欄記載のとおり青色の確定申告をし、さらに、原告千歳日商連は、昭和六〇年一二月九日に、交際費の限度超過額の計算に誤りがあったとして、別表修正申告欄記載のとおり修正申告をした。

(二) しかし、その後、原告らは、昭和五九年九月、原告友商クレジットに対して実施された昭和五八年事業年度分の税務調査を契機として、同事業年度分における原告友商クレジットのクレジット貸付金についての架空計上が判明し、欠損金があることが明らかになったとして、昭和六〇年四月三〇日、以下の理由に基づき、更正の請求をした。

(1) 伊藤は、自己が経理担当をしている原告友商クレジットの決算内容をよく見せるため、独断で水増し経理を行い、担当多額の架空クレジット貸付金を計上していた。その状況は、昭和五八年事業年度の決算報告書記載の貸付金三億九三〇一万五六七五円のうち、実際の貸付金は、わずか一三六一万三一二〇円であり、その差額の三億七九四〇万二五五五円は、すべて架空の貸付金というものであった。

(2) そこで、原告千歳日商連は、昭和六〇年四月一三日の理事会決議により、原告友商クレジットから譲り受けていたクレジット貸付金債権のうち、右架空クレジット貸付金債権を全て原告友商クレジットに差し戻した。

したがって、原告千歳日商連については、別表記載のとおり、昭和五八年事業年度の所得はなく、納税すべき法人税もないことになる(なお、原告千歳日商連は、異議申立ての際は、架空益金が三七八九万五三九八円であるから、確定申告の所得金額との差額七五六万九〇九五円が同事業年度の欠損金額と主張していたが、審査請求の審理の過程で、架空益金を六六四六万四五〇〇円《架空売掛手数料三四四〇万七六〇〇円と架空歩合金収入三二〇五万六九〇〇円との合計額》と訂正した。《乙第五、八号証の各1》)。

(3) また、原告友商クレジットについては、伊藤の右不正経理により計上されていた三億七九四〇万二五五五円にのぼる架空クレジット貸付金債権を原告千歳日商連から差し戻されたことによって、別表記載のとおり、昭和五八年事業年度の所得はなく、納税すべき法人税もないことになる(なお、原告友商クレジックは、異議申立ての際は、架空益金《架空貸付金利息等》が一億五〇一万八四三六円であるから、確定申告の所得金額との差額八七五九万八〇三四円が同事業年度の欠損金額と主張していたが、審査請求の審理の過程で、右架空益金のほか、右架空クレジット貸付金との関連で損金経費減として六六四六万四五〇〇円《原告千歳日商連への支払手数料三四四〇万七六〇〇円と支払歩合金三二〇五万六九〇〇円との合計額》が生じたことから、確定申告の所得金額から右架空益金《架空貸付金利息等》額と右損金経費減額との差額三八五五万三九三六円を控除した二〇二八万五六〇七円が同事業年度の欠損金額になると訂正した。《乙第五、八、九号証の各2》)。

3  被告札幌南税務署長の処分の経過

(一) 被告札幌南税務署長は、右各更正の請求に対し、昭和六〇年九月二日付けで、いずれも更正すべき理由がない旨の各通知処分をした。その理由は以下のとおりである。

(1) 原告千歳日商連は、右架空クレジット貸付金の譲り受けに関する過大な売掛手数料及び歩合金収入が昭和五八年事業年度分の益金の額に算入されている旨主張するけれども、被告札幌南税務署長の再三にわたる立証書類の提出要求を受けたにもかかわらずこれを提出せず、具体的な説明もしなかったから、右売掛手数料及び歩合金収入が過大に計上されていたかどうか判然としない。

(2) 仮に、原告千歳日商連の右主張のとおり架空クレジット貸付金の譲り受けに基づく過大な売掛手数料及び歩合金収入があり、後日、これを原告友商クレジットに返還したとしても、右売掛手数料及び歩合金収入は、原告千歳日商連の昭和五八年事業年度分の益金としては確定しており、期間損益課税を建前とする現行の法人税法の下においては、当該貸付金の差戻しをなした事業年度に前期損益修正として処理すべきであって、昭和五八年事業年度分の課税標準には何ら影響を及ぼさない。

(3) 原告友商クレジットは、右架空クレジット貸付金の認定について、被告札幌南税務署長から再三にわたり顧客別又は取引別に架空クレジット貸付金を立証すべき証拠書類の提出を求められたにもかかわらず、これを提出せず、また、具体的事実の主張についても、貸付金発生時に作成する貸付も、貸付金発生時に作成する貸付金内訳明細書、貸付金を管理する貸付金台帳及び貸付金回収時に作成する計算書控の三つの資料が整っているものを正当な貸付金とし、これ以外のものはすべて架空のものであると主張するのみであって、それ以上の説明はないから、架空クレジット貸付金に基づく過大な所得が計上されているかどうか判然としない。

(4) 仮に、原告友商クレジットに右架空クレジット貸付金に基づく過大な所得計上があったとしても、それは原告友商クレジットと原告千歳日商連との譲渡取引により昭和五八年事業年度中に確定しており、架空であったとして原告日商連から差し戻されたのは昭和六〇年四月一三日であるから、期間損益課税を建前とする現行の法人税法のもとにおいては、当該貸付金の差戻しを受けた事業年度で前期損益修正として処理すべきであって、昭和五八年事業年度分の課税標準には何ら影響を及ぼさない。

(二) 被告札幌南税務署長は、原告らからの異議申立て(申立日同年一〇月三一日)を受けて、昭和六一年一月三〇日、いずれの異議申立てもこれを棄却する旨の異議決定をした。

(三) 国税不服審判所長は、原告らからの右異議決定に対する審査請求(請求日昭和六一年二月二八日)を受けて、昭和六二年四月三〇日、いずれの請求もこれを棄却する旨の裁決をした。

4  原告らの解散等

原告らは、それぞれ昭和六〇年五月三一日に昭和五九年事業年度の法人税について、確定申告をなした。

原告友商クレジットは昭和六〇年一〇月三一日に、原告千歳日商連は同年一二月一六日にそれぞれ解散した。

三  争点

本件における主たる争点は、本件各通知処分の違法性と過納法人税の不当利得に基づく返還請求の可否であるが、具体的には以下の三点となる。

1  原告らの主張する架空クレジット貸付金額の具体的確定はできるか。

2  原告らの会計処理は、法人税法一二九条二項を適用すべき仮装経理に当たるか。

3  過納法人税について、法人税法の手続によらず、不当利得に基づく返還請求を認めるべき特段の事情が存在するか。

四  証拠関係

記録中の書証目録、証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第三争点に対する判断

一  原告らの会計処理に関する事実関係

1  伊藤の不正行為

(一) 伊藤は、原告友商クレジットの貸付け、貸付金の回収にかかる一切の事務、経理、月次試算表の作成を担当し始めた昭和五一年年八月ころから、クレジット貸付金の水増し(架空計上)を行ってきた。(証人伊藤静子の証言《以下「伊藤証言」という。》)

(二) 伊藤は、昭和五九年九月一〇日、札幌南税務署の税務調査の際、自己の不正が発覚するのをおそれ、行方をくらました。(伊藤証言、証人茶谷信夫の証言《以下「茶谷証言」という。》)

(三) 伊藤は、その後夫とともに原告らの事務所に現れ、原告友商クレジットの金二三〇万円を勝手に夫に融資していたと告白した。(乙第一〇号証、茶谷証言)

(四) 原告友商クレジットは、昭和五九年一〇月一五日、伊藤との間で、同年九月二五日に弁済された二三〇万円に加え、五〇〇万円を弁済することで、右架空経理の問題を含め一切を解決する旨の合意をした。(乙第一〇号証)

(五) 原告千歳日商連は、その常任理事である茶谷信夫(以下「茶谷」という。)に対し、伊藤が昭和五八年四月から昭和五九年三月までの間にエレガンスアカシアという商店への商品購入代金一一三二万五〇〇〇円を流用したことにつき、伊藤の監督を怠ったとして、昭和年六月一八日、札幌地方裁判所の命令を得て、仮差押えをなした。(乙第一号証の一、乙第一三号各証、茶谷証言)

(六) 伊藤がどのような方法により横領を働いたのか、その金額がいくらになるかはいずれも未だに不明である。(証人森雅夫の証言《以下「森証言」という。》)

2  原告らの会計処理

(一) 原告らは、伊藤が失踪したことから、内部調査を行った。その結果、原告友商クレジット総勘定元帳上の貸付金残高と貸付台帳の合計とが大きく食い違っていたり、現金出納簿に記載がなかったり、不合理な記載がなされており、遅くとも昭和五五年事業年度以降の架空クレジット貸付金の計上が判明した。しかしながら、右架空クレジット貸付については、顧客別又は取引別等、個別的に確定し得る資料を見いだせなかったことから、原告らは、クレジット貸付金として計上されているもののうち、貸付時に作成する三枚一組の複写伝票(入金票、計算書、計算書控え)のうちの計算書控え若しくは入金票が存在するものをもって、実体のある正当なクレジット貸付金(以下「正当なクレジット貸付金」という。)と判断し、それ以外のクレジット貸付金を架空のクレジット貸付金と判断した。(甲第二四号証、森証言、茶谷証言)

(二) 原告友商クレジットは、右の方法により、昭和五五年事業年度については、総勘定元帳記載のクレジット貸付金六〇三六万円のうち、正当なクレジット貸付金を三二〇九万円、架空のクレジット貸付金を二八二七万円とし、昭和五六年事業年度については、総勘定元帳記載のクレジット貸付金一億三六二四万円のうち、正当なクレジット貸付金を三一八〇万五〇〇〇円、架空のクレジット貸付金を一億四四三万五〇〇〇円とし、昭和五七年事業年度は総勘定元帳記載のクレジット貸付金三億四八七九万円のうち、正当なクレジット貸付金を二九二三万円、架空のクレジット貸付金を三億一九五六万円とし、昭和五八年事業年度については、総勘定元帳記載のクレジット貸付金六億五二七七万円のうち、正当な貸付金を二七八七万四〇〇〇円、架空のクレジット貸付金を六億二四八九万六〇〇〇円とした。(乙第五号証の1、乙第七号証の1、2、森証言)

(三) 原告友商クレジットは、以上の会計処理の結果、<1>被告札幌南税務署長がなした更正の理由がない旨の通知に対する異議申立てにおいて、昭和五八年事業年度に四〇七七万二〇〇三円の使途不明金が存在したと主張し、<2>さらに、昭和五九年四月一日から同年九月八日の間に一七三七万三〇九三円の使途不明金があったとして、金銭出納帳の昭和五九年九月八日の支払金額欄に同額を調整勘定(摘要伊藤静子)名目で記帳した。(甲第八号証、乙第五号の2、茶谷証言、森証言)

なお、右使途不明金の個々具体的な内容は全く不明である。(森証言)

(四) 昭和六〇年四月一三日の原告千歳日商連の理事会において、理事の一人から、実際の架空貸付額、横領的性格を有するもの、浮き貸し等の範囲を明確にすべきであるという意見が表明されたが、結局、金銭出納簿自体が全く不完全であり、毎月の試算表及び決算時における貸付残高の数値等は架空一覧表によるものであり、明確な区分は不可能であった旨の説明がなされたにとどまった。(乙第三、五、七号各証)

(五) 原告友商クレジットから貸付けを受けた顧客の中には一度も返済しなかった者が存在した。(伊藤証言)

3  伊藤が架空貸付金を計上するに至った経緯

(一) 原告友商クレジットは、原告千歳日商連の前身である友楽商店会商業協同組合の消費者金融のクレジット事業部門として設立された法人で、原告千歳日商連が設立された後は同原告と事務所を同一にし、かねてから業務執行については、原告千歳日商連に有償で事務を委託していた。(前記争いのない事実、乙第九号各証、乙第一一、一二号証、茶谷証言)

(二) 原告らは、形のうえでは別法人であったが、共同で従業員を使用していたほか、両法人の業務についても、原告千歳日商連の常務理事と原告友商クレジットの取締役とを兼務し、両法人と事実上の事務の最高責任者であった事務長茶谷の管理、監督のもとで一体的に行われていた。(前記争いのない事実、乙第一一号各証、茶谷証言、伊藤証言)

(三) 原告千歳日商連は、原告友商クレジットに対し、その事業運営に必要な資金を融資し、その貸付利息を受け取る一方、原告友商クレジットが消費者に対して融資したクレジット貸付金債権を譲り受けてその回収をすることを建前上の業務としており、譲り受けた右クレジット貸付金債権をクレジット売掛金として会計処理し、その売掛手数料及び歩合金を原告友商クレジットから徴収するというように、貸付業務に係る両社の資金及び経理関係は表裏一体の関係にあった。(前記争いのない事実、乙第一号各証、乙第九号各証、森証言、茶谷証言)

(四) 原告友商クレジットには、伊藤が昭和五一年八月ころに前任者から原告友商クレジットの事務を引き継いだ時点において、既に回収見込みの立たない非組合員に対する浮き貸しが一二〇〇万円ほど存在していたが、伊藤は、茶谷からその赤字を「埋めろ」と指示されたことから、茶谷に指導されたとおりの方法で入出金伝票を利用し、貸付金を水増しして計上するとともに、試算表の関連する勘定科目の金額を合わせるなどした。(伊藤証言)

(五) 伊藤は、また、茶谷がほしいままに行っていた株主貸付金や非組合員に対する浮き貸し等大口の貸付金についても回収不能になることが多く、その穴埋めをする必要に迫られたことから、右と同様の方法で、以後、八年余りの間にわたり貸付金を水増ししていたが、水増し貸付金を記載した帳簿書類については茶谷にも見せ、また、会計監査の時や会計事務所による決算書作成の時においても、これらの処理について何ら指摘を受けることがなかったことから、そのような方法で赤字を埋めればよいものだと考えていた。(伊藤証言)

4  架空貸付に対する茶谷の認識

(一) 茶谷は、原告千歳日商連の経理事務について、自らが日々勘定元帳を記帳し、決算時の帳簿書類の整理も行うなど深く関わっており、また、貸付業務に係る原告ら両社の資金及び経理関係は表裏一体の関係にあることから、計上される貸付金の金額については、遅くとも毎月末には明確に認識していた。(茶谷証言)

(二) 原告千歳日商連から原告友商クレジットに貸し付けられる原資は、金融機関から融資を受けており、その経理については、原告千歳日商連の事務員により真正に記帳され、勘定元帳を記帳する茶谷としても、右融資の金額に対する認識はあった。(茶谷証言)

(三) 原告らの決算については、事実上の事務の最高責任者である茶谷が帳簿書類の整理をし、それに基づき、顧問税理士が決算のための調整を行い、原告らの幹部に説明したうえ、監査役の監査、役員会の決定、総会の承認を受けるなど所定の手続きを経て確定申告書が提出されていた(伊藤証言、森証言、茶谷証言)。そして、その確定申告書には、経理責任者である茶谷の自署押印もされていた(乙第一号各証)。

二  検討

1  被告札幌南税務署長の通知処分の違法性(争点1)について

(一) 架空クレジット貸付金額の確定について

(1) 前認定の事実によれば、昭和五五年事業年度から昭和五八年事業年度における原告友商クレジットの経理処理に際し、架空のクレジット貸付金が計上されていた事実を推認することができる。

(2) しかしながら、貸付時に作成される複写伝票のうちの計算書控えないし入金票の存在するもののみが正当な貸付金であると断定することはできず、他に、昭和五五年事業年度から昭和五八年事業年度における架空クレジット貸付金について、顧客別又は取引別等、個別的に具体的金額を確定し得る証拠資料はない。

(3) そうすると、結局、減額更正すべき過納税額の証明はないものといわなければならないから、昭和五八年事業年度において架空クレジット貸付金が存在したことをもって、直ちに被告札幌南税務署長の本件各通知処分を違法ということはできない。

(二) 法人税法一二九条二項の適用について

(1) なお、原告らは、原告らの会計処理は、法人税法一二九条二項を適用すべき仮装経理に該当せず、また、仮に同項を適用すべき仮装経理に該当するとしても、原告らは既に解散し、同項所定の手続きを取ることは不可能であるから、被告札幌南税務署長は、同項所定の手続きを待つことなく減額更正をすべきであった旨主張する。

(2) しかしながら、本件においては、前認定一の事実によれば、原告友商クレジットの直接の経理担当者であった伊藤のほか、原告ら双方の事実上の事務の最高責任者であった茶谷も、前記架空クレジット貸付金に関する伊藤の不正な会計処理を認識していたと推認できるのであるから、原告らの本件会計処理は、法人税法一二九条二項を適用すべき仮装経理に該当するものと認められる。

(3) また、前記争いのない事実のとおり、原告らは、本件更正の請求をしてから解散をするまでの間に、それぞれ昭和五九年事業年度についての確定申告をしているのであるから、原告らには、昭和五八年事業年度について、法人税法一二九条二項による修正の経理及び確定申告書を提出する機会が存在したものと認められる。

(4) ところが、原告らが、右修正の経理及び確定申告書の提出を行ったことについては、何ら主張立証はないから、結局、法人税法一二九条二項にいう手続きの観点からしても、被告札幌南税務署長が更正を行わなかったことは適法であったというべきである。

(三) まとめ

以上によると、被告札幌南税務署長の本件各通知処分が違法であるということはできない。

2  過納法人税の不当利得返還請求の可否(争点2)について

(一) 利得額の確定について

(1) 本件において、原告らの主張する架空クレジット貸付金のうち法人税の課税対象にならない所得としては、架空貸付に伴う損益金(原告友商クレジットについては架空貸付利息金、原告千歳日商連については原告友商クレジットから受け取った架空売掛取手数料と歩合金収入)に限られるところ、前認定の事実によれば、原告ら主張の架空クレジット貸付金の中には架空貸付そのもののほかに、横領的性格を有するもの及び浮き貸し等が混在していたことが推認される。

(2) ところが、原告友商クレジットの昭和五七年事業年度及び昭和五八年事業年度の各事業年度における架空クレジット貸付金に伴う架空貸付利息金、原告千歳日商連の昭和五五年事業年度から昭和五八年事業年度までの各事業年度における架空クレジット貸付に関連する架空売掛手数料及び歩合金収入については、譲受クレジット貸付債権の顧客別又は取引別等による個々具体的金額を確定するに足りる証拠がない。

(3) そうすると、結局、被告国が不当に利得したと原告らが主張する利得の金額が確定し得ないことに帰すから、原告らの不当利得に基づく返還請求はいずれも失当というべきである。

(二) 不当利得返還請求を認めるべき特段の事情について

(1) なお、原告らは、仮に原告らの本件会計処理が法人税法一二九条二項を適用すべき仮装経理に該当するとしても、原告らは既に解散しており、同項所定の手続きを履践することは不可能であるから、本件過納税額につては、不当利得に基づく返還請求を認めるべき趣旨の主張をしている。

(2) しかしながら、原告らによる本件納付済税額は、いずれも原告らの確定申告に基づくものとして法律上の原因を備えており、かつ、適法に確定しているものであるから、右税額が過納付であったとして、その是正及び返還を求めるには、特段の事情がない限り、税法所定の手続きによってのみこれをなし得ると解するのが相当である。

(3) ところで、原告らの本件会計処理が、法人税法一二九条二項を適用すべき仮装経理に該当すること、また、原告らが、同項所定の手続きによって、右仮装経理に基づく過納税額の返還を求める機会の存在したことは、前判示のとおりである。したがって、原告らの解散が、税法所定の手続きによっては確定申告の誤りを是正し得ない特段の事情に該当するということはできない。

(4) そうすると、右特段の事情の存否の観点からしても、原告らの不当利得に基づく過納税額の返還請求は理由がない。

(三) まとめ

以上によると、原告らの不当利得に基づく納付済の法人税額にかかる各返還請求はいずれも理由がない。

第四結論

以上の次第であるから、被告札幌南税務署長による本件各通知処分はいずれも適法であり、かつ、原告らの不当利得返還請求はいずれも失当であるから、原告らの本訴請求をいずれも棄却する。

(裁判長裁判官 畑瀬信行 裁判官 草間雄一 裁判官 鈴木正弘)

別表

【原告らの昭和58年事業年度の確定申告、修正申告、更正の請求の内容】

<省略>

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