大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌地方裁判所 昭和51年(手ワ)179号 判決 1976年9月29日

原告 岡本興業株式会社

右代表者代表取締役 岡本繁信

右訴訟代理人弁護士 村部芳太郎

被告 外崎三郎

<ほか四名>

主文

被告らは、原告に対し連帯して

(1)  金三六〇万円およびこれに対する昭和五一年五月三〇日から支払済みに至るまで年六分の割合による金員、

(2)  昭和五一年八月三一日の到来次第金六〇万円、

(3)  昭和五一年九月三〇日の到来次第金六〇万円、

(4)  昭和五一年一〇月三一日の到来次第金六〇万円、

(5)  昭和五一年一一月三〇日の到来次第金六〇万円、

(6)  昭和五一年一二月三〇日の到来次第金九〇万円

を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

第一原告の求めた裁判および主張

一  原告は、

「被告らは、原告に対し連帯して金三六〇万円およびこれに対する昭和五一年五月三〇日から支払済みに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

被告らは、原告に対し連帯して、昭和五一年八月三一日限り金六〇万円、昭和五一年九月三〇日限り金六〇万円、昭和五一年一〇月三一日限り金六〇万円、昭和五一年一一月三〇日限り金六〇万円、昭和五一年一二月三〇日限り金九〇万円および右各金員に対する右各支払日から各支払済みに至るまで各年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は仮に執行することができる。」との裁判を求め、請求原因として次のとおり主張した。

1  原告は、被告らの共同振出による別紙手形目録記載の約束手形七通(以下本件手形(一)ないし(七)という)を所持している。

2  原告は、本件手形(一)(二)を満期に支払場所に呈示したが、いずれもその支払を拒絶された。それで本件手形(三)ないし(七)については、各満期にその支払を受ける可能性がないので、予めその支払請求をする必要がある。

3  なお、被告らは、本件手形(二)ないし(七)の手形金につき、満期にその支払をしなかったときは、通常の金銭債権として原告方に持参払する旨を約した。

よって、原告は被告らに対し本件手形(一)(二)については、手形金合計金三六〇万円および同目録(二)記載の手形の満期日である昭和五一年五月三〇日から支払済に至るまで手形法所定の年六分の割合による利息の支払を、本件手形(三)ないし(七)については、各手形の満期にその手形金の支払と各満期日から各手形金の支払済みに至るまで手形法所定の年六分の割合による利息の支払を求める。

二  甲第一ないし第七号証を提出。

第二被告らの求めた裁判ならびに主張

一  被告らは、本件口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したものとみなされた答弁書には次のような記載がある。

1  移送の申立

「本件を水戸地方裁判所に移送する」との裁判を求め、本件訴訟の管轄は、水戸地方裁判所に属するものである。第3項の合意があったことはない。しかも手形訴訟において手形外の実体関係にもとづく主張や請求は許されない。

2  本案についての主張

(ⅰ) 原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

(ⅱ) 請求原因第1項は不知。

同第2項前段は否認、同後段は争う。なお、満期期日の到来していない手形については、訴求出来ない。

(ⅲ) ≪省略≫

理由

被告らは、本件手形(一)ないし(七)の成立を認めるところであり、又、これと弁論の全趣旨によれば原告が本件手形(一)ないし(七)を所持していること、本件手形(一)および(二)を各満期に支払場所に呈示したが、資金不足を理由に支払を拒絶されたことの各事実が認められ、これを覆えすべき証拠も存しない(原告は、本件手形(二)ないし(七)について満期に支払がないときは、被告らにおいて持参払する旨の合意があった旨主張するが、本件全証拠によるも右合意を認めることはできない。しかしながら、原告の本訴請求は、手形による金銭債権の請求も含まれていると解されるから当庁に管轄の存することは明らかであり、単なる管轄違による移送を求める被告らの主張は理由がない)。

右事実によれば、被告らは、原告に対し本件手形(一)および(二)の手形金を支払う義務を負うことは明らかである。

被告らは、本件手形(三)ないし(七)については、履行期が未到来であるから、本訴請求は許されない旨主張する。ところで原告が、被告らに対し本件手形(三)ないし(七)の手形金の支払を求めるのは、いわゆる将来の給付を求める訴にあたるが、前記認定事実のとおり本件手形(一)および(二)の支払がいずれも「資金不足」を理由として支払を拒絶されている事情に照らすと、未だ満期の到来していない本件手形(三)ないし(七)の各約束手形金についても、原告は被告らに対しあらかじめその支払を求める必要があるものと認められ、右訴は認容される。ただし、支払をなすべき日が未到来の約束手形は、その満期が到来しなければ支払を受けることができず、しかも手形の呈示証券性に鑑みると、約束手形表示の金額に対する利息あるいは遅延損害金の支払を求めるには、手形所持人が、満期日以後において適法に当該手形を呈示して手形債務者を遅滞に付して始めて、右金員の請求をすることができるのである。しかるに、原告は、本件手形(三)ないし(七)につき利息あるいは遅延損害金の請求を理由あらしめる具体的事実を何ら主張しない(手形訴訟の訴状の送達は、これによって手形の呈示に代えることができ、債務者を遅滞に付する効力が生じ、かつ、その効力は当該訴訟の係属中持続すると解されるが、これは訴訟提起前にすでに満期の到来したが未だ呈示してない場合、あるいは訴訟継続中口頭弁論終結時までに満期が到来した場合のことであり、本件のように口頭弁論終結時に満期未到来の場合はこれと異る)。従って、本件手形(三)ないし(七)の手形金に対し無条件に各満期日の翌日から手形金支払済みまで年六分の割合による金員の支払を求める部分は失当といわなければならず、被告らの主張はこの限度において理由がある。

よって、本訴請求のうち、被告らに対し、

(1)  別紙手形目録(一)および(二)の約束手形金合計額金三六〇万円およびこれに対する昭和五一年五月三〇日(同目録(二)記載の約束手形の満期日)から支払済みまで手形法所定の年六分の割合による利息

(2)  同目録(三)記載の約束手形の満期である昭和五一年八月三一日の到来次第金六〇万円

(3)  同目録(四)記載の約束手形の満期である昭和五一年九月三〇日の到来次第金六〇万円

(4)  同目録(五)記載の約束手形の満期である昭和五一年一〇月三一日の到来次第金六〇万円

(5)  同目録(六)記載の約束手形の満期である昭和五一年一一月三〇日の到来次第金六〇万円

(6)  同目録(七)記載の約束手形の満期である昭和五一年一二月三〇日の到来次第金九〇万円

の支払を求めている部分は理由があるのでこれを認容し、その余の部分は理由がないので失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条但書、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 星野雅紀)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例