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札幌地方裁判所 昭和42年(ワ)1078号 判決 1968年9月17日

原告

小柳ハツ

被告

北都運輸株式会社

ほか一名

主文

一、被告らは、原告に対し、各自四六万一、七二四円及びこれに対する昭和四二年九月四日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四、この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一、当事者双方の申立

(原告)「一、被告らは原告に対し各自金七八万九、一九四円及びこれに対する昭和四二年九月四日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。二、訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決ならびに一につき仮執行の宣言。

(被告)「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決。

第二、請求原因

一、本件事故の発生

1  被告高橋清美は自動車による運送業を営む被告北都運輸株式会社(以下被告会社という。)の被傭者であつて、被告会社の自動車運転の業務に従事していたものであるが、昭和三九年八月一二日午後四時一〇分頃被告会社の物品運搬の業務のため被告会社所有の普通貨物自動車(札四あ二八二二)(以下加害車という。)を運転して、札幌市内の通称石狩街道を時速約四〇キロメートルで北進中、同市北一六条東一丁目附近の横断歩道上において加害者の右後部ボデイーを原告に接触させ、このため原告は転倒し、左大腿骨頸部骨折等の傷害を受けた。

2  原告は前記横断歩道を西から東へ向うべく道路中央部附近まで来たが、当時前記石狩街道を北から南へ向う車が多数あつたので、その通過を待つため、身体を東に向け顔をやや北へ向け加害者の進行方向に背を向けるような姿勢で佇立したものであるが、被告高橋は右横断歩道の約三〇メートル手前から右のように佇立している原告を発見した。このような場合、自動車運転者としては、歩行者が道路の横断を断念して引き返すおそれがあるから警音器を吹鳴して自車の接近を警告すると共に減速徐行しその動静に応じて停止、避難の措置がとれるように運転すべきであるのに、被告高橋は右危険がないものと軽信し、なんらの措置をとることなく時速四〇キロメートルのまま直進した過失により、原告が横断を断念し西方へ引返すを認めて、はじめてハンドルを左に切り急制動の措置をとつたが間に合わず、本件事故を惹起せしめるに至つたものである。

二、被告らの責任

このように、本件事故は被告高橋の過失に起因するものであると共に被告会社の所有にかかる加害車の運行によつて惹起されたものであるから、被告高橋は民法第七〇九条により、被告会社は自動車損害賠償保障法第三条により原告に対しそれぞれ本件事故によつて生じた後記損害を賠償する義務がある。

三、原告の損害

1  原告の受傷及び治療経過

原告は本件事故後直ちに市内保全病院に収容されたが左大腿骨頸部骨折と診断され、同病院に昭和三九年八月一二日から同四〇年一月一八日まで入院し、更に同年同月一九日から同年九月二七日まで通院すると共に、自宅治療に専念したが経過が思わしくなかつた。その後、同年九月二八日再度同病院において左大腿骨頸部骨折、左大腿骨頸部骨折後の変形性股関節症、多発生関係ロイマ、左坐骨神経痛と診断され入院手術を受け同年一〇月八日退院し、同年同月九日から同年一二月一六日まで通院すると共に自宅療養に専念したがやはり経過が思わしくなかつた。そこで、同年一二月一七日前記同病名によつて入院し、同四二年四月一日退院し、以後、現在に至るまで通院治療、自宅治療をしている。

2  財産的損害金六二万七、一九九円

右は本件事故による前記受傷の治療のため、原告が支出した治療費(金五三万七、三一五円)、附添婦に対する謝礼(金六万七、二〇〇円)、通院費(金一万二、八五〇円)、療養中の栄養補給費(金九、八三四円)の合算額で、その内訳(期日、金額)は別表(一)のとおりである。

3  精神的損害(慰藉料)金五〇万円

原告は、本件事故当時七〇才であつたが、足腰も達者な健康体であつて幸福な老後を楽しんでいたのであるが、本件事故によつて歩行に著しい支障をきたし、常時患部に痛みを感じ苦痛な毎日を送つているのであつて、原告の蒙つたこの肉体的精神的苦痛を慰藉するに足る金額は金五〇万円をもつて相当とする。

四、原告は被告らより昭和三九年八月一二日から同四〇年一月一八日までの間に、その間の治療費および附添費の合計金二七万八、〇三五円、および、同年一月一八日治療費として自動車損害賠償保険金六万円をそれぞれ受領した。よつて、原告は被告らに対し、本件事故による損害賠償金として被告らから支払を受けた右合計金三三万八、〇三五円を前記財産的損害から控除した残金七八万九、一六四円およびこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和四二年九月四日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三、被告らの答弁及び抗弁

一、請求原因一の1の事実は認めるが、同2の事実は否認する。同二の事実は否認する。同三の1の事実のうち、原告が本件事故直後保全病院に収容され、左大腿骨頸部骨折と診断され昭和三九年八月一二日から昭和四〇年一月一八日まで入院したことは認めるが、その余の事実は否認する。同2および3の事実は否認する。同四の事実のうち、被告が原告主張の金額を支払つたことは認めるが、その余は争う。

二、自賠法三条但書の免責事由の存在

1  被告会社および運転者である被告高橋は加害車の運行に関し、注意を怠らなかつたものであり、本件事故は原告小柳ハツの一方的過失により発生したものである。すなわち、被告高橋は、原告がその主張の日時、場所において横断歩道上中央線をこえその東側(加害車の進行方向からみて右側)の地点に佇んでいるのを認めたので、その附近には信号もなく一時停止の必要もない場所ではあつたが、念のため速度を落して道路中央線西側(加害車の進行方向からみて左側)を通過しようとした。ところが、原告は、右のように中央線をこえていたにもかかわらず突然横断を断念し、石狩街道を北進する車に対し一顧の注意をはらわないで後向きのまま引き返した。そこで被告高橋は急拠避譲の措置をとつたが問に合わず加害車の後部ボデイに原告を衝突させたものであつて、本件事故は原告の右のような不注意な行動に起因するもので、被告高橋にはなんらの過失もない。また、被告会社は被告高橋の選任監督に十分な注意をしていたから、同会社にも過失はない。

2  加害車には構造上の欠陥又は機能の障害は全くなかつた。

三、和解契約の存在

仮に二の抗弁が認められないとしても、昭和三九年八月一三日、原告の代理人である小柳忍と被告らとの間に、「原告は慰藉料請求権を放棄し、被告らは原告の入院費用を負担する。」旨の和解契約が成立し、次いで、昭和四〇年一月中頃、右小柳忍と被告らとの間に、「被告らが負担する治療費は同年一月一八日までの分をもつて打切る。」旨の合意が成立し、右合意に基づき被告らは原告に対し、同年一月一八日までの治療費金二七万八、〇三五円をそのころ支払つた。従つて、原告の有した損害賠償請求権は一切消滅した。

四、時効

仮に慰藉料請求権を放棄した事実が認められないとしても、同請求権については、本件事故発生から三年を経過した現在、時効によつて消滅した。

五、過失相殺

仮に、以上の抗弁が認められないとしても、前記二の1記載の原告の過失は被告らの賠償すべき損害額の算定にあたり斟酌されるべきであり、その過失の割合は九(原告)対一(被告高橋)と評価すべきである。そして、被告らは右割合によつて算定される賠償額を既に支払ずみである。

第四、抗弁に対する答弁および再抗弁

一、第三の二の事実は否認する。同三の事実のうち、原告が被告らから治療費として金二七万八、〇三五円を受領したことは認めるが、その余の事実は否認する。小柳忍は原告の代理人として昭和三九年八月一四日被告らとの間で、「被告らが原告の治療費を負担する。」旨を合意したにすぎない。同三および四の事実は否認する。

二、前記のとおり被告らは原告に対し、昭和三九年八月一二日から昭和四〇年一月一八日までの間に治療費合計金二七万八、〇三五円の支払をなしたのであるが、右支払は本件事故による被告らの損害賠償義務全部の承認を意味するものであるから、慰藉料請求権の消滅時効もこれにより中断された。

三、更に、小柳忍、佐藤武夷は原告の代理人として昭和四二年七月二〇日、被告会社において被告会社の代表取締役益村広に対して本件事故の損害賠償債務の支払を催告し、その後、原告は同年八月三〇日札幌地方裁判所に対し本件訴を提起し、その訴状は同年九月二日被告会社に、同月三日被告高橋にそれぞれ送達された。よつて、本件損害賠償債務の消滅時効は中断された。

第五、再抗弁に対する答弁

第四の二の事実のうち、被告が原告主張のとおりの金員支払をなしたことは認めるが、それは治療費として支払つたものであるから慰藉料についての承認とはならない。同二の事実のうち、原告主張の催告があり、原告により本訴の提起がなされ、被告らに訴状の送達のあつたことは認めるが、催告のあつたのは本件事故の損害賠償債務のうち治療費の支払についてであつたに過ぎないから被告らの主張は理由がない。

第六、証拠 〔略〕

理由

一、被告らの責任、免責要件の不存在、原告の過失

1  請求原因一の1の事実は当事者間に争いがないから、本件事故は被告会社所有にかかる加害車の運行によつて生じたものということができる。

2  〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

被告高橋は、加害車を運転して時速約四〇キロメートルで南北に通ずる石狩街道の西側(左側)をセンターライン寄りに北進中、前方約三〇メートルの地点に原告が本件事故現場の横断歩道の中央附近に佇んで西から東へ横断するため、南進してくる多数の自動車が途切れるのを待ち、身体を自己の進路の東方に向け、顔を北方に向けていて、逆方向(南)から接近してくる加害車に気がついていないことを認めた。このような場合には、自動車運転者としては、横断歩道上の歩行者が老令者(当時七〇才)であり、かつ南進する自動車も多いことから横断を断念して引返して自車の進路前方を通過しようとするおそれもあることを予期し、減速し、また、後続車の状況に応じて進路を更に左側に寄せる等してその動静に応じていつでも一時停止、避護その他接近を避けるべき安全な措置がとれるような態勢で運転すべき注意義務があるにもかかわらず、被告高橋はこれを怠り原告が引返すことなく南進車の途切れるのを待つて横断するものと軽信し漫然と時速約四〇キロメートルの速度のまま、若干西側(左側)に寄つただけで直進し、自車が右横断歩道にさしかかろうとしたとき原告が横断を断念し西側へ小走りに引返すのを認めて、はじめて急速ブレーキを踏みハンドルを左へ切つて避護の措置をとつたが間に合わず、自車の右後部を原告に接触させ、このため、原告は転倒し左大腿骨頸部骨折等の傷害を受けた。右認定に反する被告高橋清美本人尋問の結果は措信することができない。

この事実によれば、本件事故は原告が当初から道路の左側寄りを通行していなかつたこと(道路交通法一八条違反)及び前記注意義務を怠つたことに起因するものであることは明らかである。

3  なお、被告らは自賠法三条但書の免責要件を主張するが、本件事故は被害者である原告の一方的過失に起因するものでないことは右に認定したところにより明らかである。従つて、右免責要件に関する主張は他の点を判断するまでもなく理由がない。

4  しかし、前記認定によれば、原告は横断を断念して引返すにあたり南進車のみに気をとられ、加害車のように逆方向(北)へ向う自動車について全く注意をしなかつたのであるから、この過失もまた本件事故発生の一因をなしていたものというべきである。従つて、原告の右過失は損害額算出にあたつて斟酌されなければならない。

二、原告の損害

1  原告が本件事故後直ちに保全病院に収容され、左大腿骨頸部骨折と診断され、昭和三九年八月一二日から同四〇年一月一八日まで入院したことは当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によれば、請求原因三の1の「原告の受傷及び治療経過」に関する事実を認めることができる。

2  財産的損害

本件事故により原告は次のような損害を蒙つた。

(イ)  治療費金五三万七、三一五円

右は原告が本件事故による前記受傷の治療のため別表(一)の1ないし34記載のとおり支出した費用で、その証拠関係は別表(二)の1ないし34のとおりである。

(ロ)  附添婦に対する謝礼金六万七、二〇〇円

右は原告が前記受傷により別表(一)の35ないし55記載のとおり保全病院(昭和三九年八月一二日から昭和四〇年一月一八日まで及び昭和四〇年一二月一七日から昭和四二年四月一日まで)入院中依頼した附添婦に支払つた謝礼金の合計で、その証拠関係は別表(二)の35ないし55のとおりであるところ、〔証拠略〕によれば、原告は前記受傷の結果人工股関節を入れることとなり、最近では杖をついて歩行ができるが前記入院期間中は身の廻りの世話も自分ですることが困難であつたことが認められるから、右謝礼金の支出は本件事故と相当因果関係に立つ損害であると認めることができる。

(ハ)  交通費金一万二、七三〇円

〔証拠略〕によれば、原告が別表(一)の56ないし89の年月日欄記載の日に前記受傷の治療のため自宅から保全病院にタクシー(片道金一九〇円)で通院し、そのタクシー代が合計金一万二、七三〇円となること、原告の自宅から通院するにはバスの便もあるが、その年令、症状からみてバスを利用することは困難であり、右タクシー代は本件事故と相当因果関係に立つ損害であることが認められる。(なお、別表(一)の86ないし89記載の日に限り交通費が四一〇円となつたことを認めるに足る特段の証拠はなく、同期間のタクシー代も往復三八〇円であつたと認めるのが相当である。)

(ニ)  このほか、原告は本件事故による損害として治療期間中の栄養補給費として支出した金九、八三四円を請求するが、〔証拠略〕によるも治療期間中の肉、魚、果物等の摂取によるいわゆる栄養補給が原告の前記受傷の治療のため必要であつたものとまでは認めることができず、他に右支出が本件事故と相当因果関係に立つ損害であると認むべき資料もない。

(ホ)  以上の認定によれば、原告の財産的損害は(イ)ないし(ハ)を合算した金六一万七、二四五円となるべきところ、本件事故発生につき原告にも前記一の2認定のような過失があるから、この点を斟酌し、右金額の三割を過失相殺するのが相当である。よつて、右過失相殺後の原告の財産的損害は金四三万二、〇七一円であると認められる。

3  精神的損害

〔証拠略〕によれば、原告は七〇才の老令であつたとはいえ健康体であつたが、前記のとおり本件事故によつて左大腿骨頸部骨折の傷害をうけ、このため、入院(三回合計六二七日)通院治療を繰り返し、骨折した左大腿骨を除去し、人工股関節を入れたが、現在も通院を続けているのになお痛みが残り、足をのばしてしかすわることができず、杖なしでは歩行困難な状態で、バスの乗降はもとより、散歩したり生後間もない乳児を抱いたりすることすら容易でないため日常生活にも支障をきたしていることが認められる。従つて、その蒙つた精神的苦痛は少なからぬものがあるというべきであるが、前記認定のように本件事故について原告にもその責任の一半があること、被告らも後記のとおり治療費金二七万八、〇三五円を負担して誠意の一端をみせていること等を考えれば、原告の右精神的苦痛に対する慰藉料は金四〇万円と算定するのが相当である。

4  よつて原告の損害は合計金八三万二、〇七一円となる。

三、和解契約の不存在

被告らは、原告は慰藉料請求権を放棄し、また、原被告間に昭和四〇年一月一八日をもつて治療費負担を打切る旨の合意が成立した旨主張する。しかし、〔証拠略〕によれば、昭和三九年八月一四日、原告の代理人である小柳忍(同人が原告の代理人であつたことは当事者間に争いがない。)及び同小柳一誠が被告らとの間において被告らが原告の前記受傷のための入院費用(治療費、附添料等)を支払う旨合意したことが認められるにとどまり、その際或はその後において右の合意に加えて、原告又はその代理人が前記受傷による慰藉料請求権を放棄する旨の意思表示をしたものと認むべき証拠はないし、また、被告ら主張のような治療費打切りの合意が成立したものと認むべき証拠もない。証人益村広、同高橋清信は被告らの右主張にそう趣旨の証言をするが、右証言はこれと相反する証人小柳忍、同佐藤武美の証言と対比すれば、たやすく措信することができない。

四、時効の中断

被告らは、仮定的に前記受傷による原告の慰藉料請求権につき三年間の消滅時効が完成した旨主張し、原告はこれに対し右消滅時効は中断されている旨主張する。

〔証拠略〕によれば、原告はおそくとも昭和三九年八月一四日には被告らが本件事故の加害者であることを知つたものと認めることができる。従つて、現在に至るまで既に不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間である三年間が経過していることは明らかである。しかし、その間、被告らが原告に対し、昭和三九年八月一二日から昭和四〇年一月一八日までの間に治療費として合計金二七万八、〇三五円の支払をなしたことは当事者間に争いがなく、この事実によれば、被告らは原告に対する本件事故に基づく損害賠償義務(慰藉料も含め)を承認していることにほかならないから、これにより、右消滅時効は中断されたものと解するのが相当である。

もつとも、被告らは右金員は治療費として支払つたに過ぎず、慰藉料請求権については承認していないから時効は中断されない旨主張する。しかし、交通事故により本件のように被害者が身体に重大な損傷を受けた場合は、これにより被害者は財産的損害と精神的損害を同時に蒙るもので、一が発生し他が発生しないということは稀有の事例に属する。すなわち、右の財産的損害に対する損害賠償請求権も精神的損害に対する損害賠償請求権(慰藉料請求権)も共に「身体の損傷」という同一事実に起因する損害賠償請求権であることには変りなく、加害者もその全部を賠償する義務を負うものである。また、その損害の性質上両者は算出方法において差異が存するとはいうものの、現実にこれを算出するにあたつては互に他方の額を全く無視するということはなく、他を考慮しつつ定められる場合が少くない(殊に慰藉料算定の場合)。このように両損害賠償請求権は―形式的には別個の権利であると評価するとしても、―その発生、算定等において密接な関係を有するのであるから、前記のように被告らが財産的損害である治療費を支払うにあたり、原告に対し特に慰藉料請求権の存否を争う態度を外部的に表示したものと認むべき特段の事情の認められない本件においては、右治療費の支払は本件事故による全損害賠償債務の承認として、慰藉料請求権についても時効中断の効果をもたらすものというべきである(そして右承認による中断後三年以内である昭和四二年八月三〇日に本訴が提起されているのであるから、右承認及びその後裁判上の請求によつて時効は中断状態にあるのである。)。

五、ところで、原告は被告らから金二七万八、〇三五円、自動車損害賠償責任保険金六万円を受領しているから(この事実は当事者間に争いがない)、これらを前記金四三万二、〇七一円の財産的損害から控除すると被告らが原告に対し賠償すべき財産的損害は金六万一、七二四円と算出されるから、被告らは原告に対し連帯して本件事故による損害賠償金四六万一、七二四円(財産的損害金六万一、七二四円慰藉料金四〇万円)及びこれに対する事故後である昭和四二年九月四日以降完済に至るまで年五分の割合による損害金を支払う義務がある。

よつて、原告の本訴請求は右の限度において正当であるからこれを認容し、その余は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条、第九三条、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 松野嘉貞)

別表 〔略〕

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