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札幌地方裁判所 昭和42年(わ)169号 判決 1967年10月25日

本店所在地

北海道美唄市字美唄八〇番地

株式会社 まるせん

右代表者代表取締役

千葉語郎

本籍

北海道美唄市字美唄一二七一番地

住居

北海道苫小牧市錦町一番地

会社役員

千葉一

昭和三年八月一五日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官加藤泰也出席のうえ審理を終え、次のとおり判決する。

主文

1  被告会社を罰金一、五〇〇、〇〇〇円に、被告人千葉を罰金三〇〇、〇〇〇円にそれぞれ処する。

2  被告人千葉が右罰金を完納することができないときは、金五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

3  訴訟費用は、その二分の一ずつを被告会社および被告人千葉の各負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社(昭和四〇年七月三一日以前の商号は「株式会社千葉商店」)は、美唄市字美唄八〇番地(同年八月一日以前は、同字一二七一番地)に本店を置き、苫小牧市他三か所に支店を有し、衣料品の販売などを目的とする資本金一、〇〇〇万円(昭和三九年五月二〇日以前は二〇〇万円、昭和四〇年八月一六日以前は五〇〇万円)の株式会社であり、被告人千葉は、同会社の専務取締役としてその業務全般を統轄していたものであるが、同被告人は、法人税を逋脱して右会社の支店増設資金を捻出しようと企て、右会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、売上げの一部を計上せず、これを仮空名義口座による簿外預金として預け入れるなどの不正な方法により右会社の所得の一部を秘匿し、

第一、昭和三八年三月一日から昭和三九年二月二九日までの事業年度における右会社の真実の所得金額が九、五三九一〇〇円であつたのにかかわらず、同年四月三〇日所轄の岩見沢税務署において同署長に対し、所得金額が二、一三七、五〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて同会社の右事業年度における正規の法人税額三、四四六、五三〇円と右申告税額六三九、七三〇円との差額二、八〇六、八〇〇円の法人税を免れ、

第二、昭和三九年三月一日から昭和四〇年二月二八日までの事業年度における右会社の真実の所得金額が八、六〇一、九〇〇円であつたのにかかわらず、同年四月三〇日前記税務署において同署長に対し、所得金額が三、〇二二、〇〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて同会社の右事業年度における正規の法人税額二、九八五、五八〇円と右申告税額八七七、〇六〇円との差額二、一〇八、五二〇円の法人税を免れ、

第三、昭和四〇年三月一日から昭和四一年二月二八日までの事業年度における右会社の真実の所得金額が一一、八七六、八〇〇円であつたのにかかわらず、同年四月三〇日前記税務署において同署長に対し、所得金額が五、一五一一〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて同会社の右事業年度における正規の法人税額四、〇〇四、五一〇円との差額二、四七五、三一〇円の法人税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人千葉および被告会社代表者千葉語郎の当公判廷における各供述

一、被告人千葉の大蔵事務官に対する質問てん末書(五通)

一、同人の検察官に対する供述調書

一、同人作成の上申書

判示冒頭の事実につき

一、千葉語郎の検察官に対する供述調書

一、札幌法務局美唄出張所登記官作成の登記簿謄本

判示第一、第二、第三の各事実につき

一、千葉幹治の大蔵事務官に対する質問てん末書(用紙二五枚のもの)

一、三上手貞行の大蔵事務官に対する昭和四一年一一月八日付質問てん末書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(脱税額計算書説明資料および参考資料添付)

一、大蔵事務官堀川浩作成の調査事績報告一綴

一、前田勝広作成の確認書

一、押収してある法人税決定決議書綴一綴(昭和四二年押七五号の一)

判示第一の事実につき

一、高橋友治・大川裕一作成の各答申書(後者は昭和四一年一一月二五日付)

一、押収してある昭和三九年度総勘定元帳一冊(昭和四二年押七五号の二)および建物賃貸借契約書二通(押同号の三)

判示第二の事実につき

一、白山与三吉の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、山崎利之・藤田富美作成の各上申書

一、伊藤芳三郎・中本新作成の各答申書

一、大蔵事務官菅原作次郎作成の調査事績報告書(二綴)

一、押収してある土地家屋権利書綴(苫小牧表町支店関係)一綴(昭和四二年押七五号の四)

判示第三の事実につき、

一、岡崎与作・磯野純一・千葉和夫の大蔵事務官に対する各質問てん末書(千葉については二通)

一、福田健・中村哲雄・武田武二作成の各上申書

一、林太一・大川裕一作成の各答申書(後者は昭和四一年一一月二四日付)

一、押収してある土地家屋権利書綴(小樽支店関係)一綴(昭和四二年押七五号の五)・車輛注文請書(領収証添付)一通(押同号の六)・約束手形一〇通(押同号の七)・個人不動産書類綴一綴(押同号の八)・領収証一通(押同号の九)

(法令の適用)

被告人千葉の判示第一・第二の各所為は法人税法(昭和四〇年法律三四号による改正前のもの。同法律附則一九条による。)四八条一項に、判示第三の所為は法人税法(昭和四〇年法律三四号により改正されたもの。)一五九条一項にそれぞれ該当するので、各所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告人を罰金三〇〇、〇〇〇円に処し、同被告人が右罰金を完納することができないときは刑法一八条によつて金五〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する

被告会社に対しては、その専務取締役である被告人千葉が判示のように被告会社の業務に関し本件各犯行をなしたものであるから、判示第一・第二の各事実については法人税法(昭和四〇年法律三四号による改正前のもの。同法律附則一九条による。)五一条一項・四八条一項を、判示第三の事実については法人税法(昭和四〇年法律三四号により改正されたもの。)一六四条一項・一五九条一項をそれぞれ適用し。刑法四五条前段・四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金一、五〇〇、〇〇〇円に処する。

訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文により被告会社および被告人千葉にその二分の一ずつを負担させる。

なお、量刑にあたつては、被告人千葉の性行・経歴・本件犯行の動機・態様・逋脱額等の情状に加えて、同被告人が、事件後卒直に非を認め、将来違反をくり返さない態勢をととのえると共に、被告会社が、本件に関し政府に納付すべき金額(合計約一八六六万円)のうち、昭和四二年八月末現在、約七七五万円の納入を終え、その余についてはすべて約束手形をもつて納付を委託し、一意専心その完納に努めようとしている事実をとくに考慮した。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 深谷真也 裁判官 龝原孟 裁判官 根本真)

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