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札幌地方裁判所 昭和38年(ワ)264号 判決 1966年9月29日

原告 川口三一郎

被告 谷内ミシン株式会社

右代表者代表取締役 谷内義信

右訴訟代理人弁護士 小関虎之助

主文

被告は原告に対し金二〇万五〇〇〇円およびこれに対する昭和三六年一月一日から右金員完済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告は主文同旨の判決を決め、被告は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

(原告の事実上の主張ならびに答弁)

一、(手数料内金の積立)原告は昭和三二年四月から家庭用電気器具等の販売を業とする被告会社に外交販売員として勤務し、原告のあっせんにより被告が家庭用電気器具等を顧客に販売する毎に、原告が被告から受けるべき販売手数料のうちテレビの場合は一台毎に金二、〇〇〇円、その他の電気器具(冷蔵庫、洗濯機等)の場合は一台毎に金一、〇〇〇円あてを被告会社に預託し積立金として積立てることとなり、昭和三三年六月から同三五年一一月までの間別紙手数料積立金明細表(A)欄記載のとおり合計金二三万二、〇〇〇円を被告会社に積立てた。

二、(返済の定め)右積立金は毎年六月および一二月にその月分までを合算して原告が被告会社から返済を受ける約定であった。

被告の主張事実は争う

三、(返済の請求)原告は被告会社から明細表(C)欄記載の合計金二万七、〇〇〇円の返済を受けたから、その残金二〇万五、〇〇〇円およびこれに対する最終弁済期の後である昭和三六年一月一日から右金員完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被告の答弁ならびに事実上の主張)

一、認める。

二、否認する。原告主張の積立金は原告あっせんの顧客からの割賦代金が遅滞なく被告会社に支払われた場合に、原告主張どおりの金額で返済するものであり、右割賦代金の支払が遅れた場合は積立金から一月につき金五〇〇円あての金員を減額し、代金完済の時なお積立金に残余があればこれを原告に返済する約定であったが、原告あっせんの顧客については、明細表(B)欄記載のとおり割賦代金の支払が遅延したから、これらの顧客に対する販売あっせん手数料の積立金はこれに応じて減少し或いは消滅した。

三、明細表(D)欄記載の合計金一万三、五〇〇円の支払義務あることを認め、その余の請求は争う。

≪証拠関係省略≫

理由

原告の事実上の主張第一項(手数料内金の積立)については当事者間に争いがない。

同第二項(返済の定め)についてみるに、≪証拠省略≫を綜合すると、昭和三二年一〇月頃本件積立金の制度が採用された当初は、それまで被告会社の外交販売員には六月、一二月のいわゆる期末賞与の制度がなかったので、これに代るものとして、従来販売手数料として原告ら外交販売員が得ていた金員のなかから、一、〇〇〇円あるいは二、〇〇〇円を原告らが被告会社に積立てて、六月、一二月ごとに賞与がわりにまとめてその支払を受ける、という趣旨のもとで積立が行われるようになったものであるのに、その後、被告会社の社長から、販売会議の席上、顧客が割賦代金の支払を遅滞したときには、原告らの積立金のなかから一月につき金五〇〇円の割合で金員を差引くことにする、という一方的な発言があったこと、が認められる。≪証拠判断省略≫しかしながら、右のごとき社長の一方的な発言に対して原告がこれを承諾したか否かについては、原告を含む外交販売員が皆これを承諾したとする≪証拠省略≫はにわかに信用できず、当時の外交販売員の一人であった小玉俊雄が右差引の取扱に異議を唱えずまた差引かれた分について返済を求めなかった、という同人の証言も原告の承諾の事実を認めさせるに至らず、その他にこれを認めさせるに足る証拠はない。従って、原告の積立金は当初の趣旨どおり、毎年六月、一二月に、その月分までの積立金全額につき弁済期が到来したものと認めるほかはない。

当事者間に争いのない積立金合計額金二三万二、〇〇〇円のうち、金二万七、〇〇〇円の返済を受けていることは原告の自白するところであり、その余の内金一万三、五〇〇円につき被告会社に支払義務あることは被告会社の自白するところであるが、その余の残金一九万一、五〇〇円についても被告会社に支払義務があり、その全額について昭和三五年一二月末日までにその弁済期が到来していることは以上の認定から明らかである。

よって原告の本訴請求は全て正当であるからこれを認容し、訴訟費用につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 三宅弘人)

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