最高裁判所第二小法廷 昭和63年(オ)1783号 判決 1989年3月24日
兵庫県芦屋市親王塚町三番九-四〇七号
上告人
平松毅
愛知県渥美郡赤羽根町大字赤羽根字東瀬古八番地の二
被上告人
タイヨー化学工業株式会社
右代表者代表取締役
山本尚男
同 幡豆郡吉良町大字富好新田字下川並二八番地
被上告人
スズヨ化繊工業株式会社
右代表者代表取締役
鈴木敏彦
大阪府吹田市広芝町七番一五号
被上告人
大豊化学工業株式会社
右代表者代表取締役
山岡義博
和歌山市江南三六一番地
被上告人
芝本敏恒
右当事者間の名古屋高等裁判所昭和六三年(ネ)第二八一号実用新案権侵害差止め並びに損害賠償請求再審事件について、同裁判所が昭和六三年九月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
記録に照らすと、本件再審の訴えを不適法として却下した原審の判断は正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤島昭 裁判官 牧圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 香川保一 裁判官 奥野久之)
(昭和六三年(オ)第一七八三号 上告人 平松毅)
上告人の上告理由
第一、 原判決は結果的に争訟を解決する裁判義務を放棄し、未解決のまま放置するもので承服することはできない。
民事訴訟法第四二〇条第一項但書は文言どおりに解釈すべきものである。
上訴審において主張した場合及び再審事由を知りながら上訴審において主張しなかった場合に限って、再審の訴を提起することは出来ないというのが成文の規定である。
上訴を提起しないで判決を確定させた場合も含むと解釈すれば上告審で確定したものだけが再審の訴の対象となることになり、再審の訴えは最高裁判所に対してのみ出来るという結果となる。
再審の訴えは再審の事由のある判決をした裁判所に提起するのが原則であり、民事訴訟法第四二〇条第三項は例外規定である。
仮に原判決のとおり、上訴しない場合も含むものと解釈すれば第四二〇条第三項は不必要の規定となる。
法律は不必要のことを成文で規定する筈がない。
上訴しない場合も含むと解釈すれば、本来自由であるべき控訴手続きを強制することになり、成文にない解釈が、解決すべき争訟を手続上未解決のまま放置する結果となり、裁判の目的が果たされないことになる。
第二、 民事訴訟法第四二〇条第一項第一〇号の再審事由の場合は但書後段の「又は之を知りて主張せざりしとき」の規定は適用されないものである。
前記第一〇号の再審事由による訴の場合は民事訴訟法第四二五条により、同法第四二四条の再審提起期間の規定は適用されないから、「知りて主張せざりしとき」も当然適用されないものである。成文部分が適用されないのであるから、成文に包含されているとした解釈も適用されないと解釈すべきである。
そもそも前の確定判決に抵触するか否かは職権調査事項であり、裁判所は既に昭和五四年一一月三〇日の大阪高裁の判決時点に充分知っていたものであり、知っていなければならないことである。
知つていながら昭和五八年一月特許庁の抵触審決を理由に、悪意とも取れる「裁判中断」の暴挙を敢行したのである。
終局判決も裁判中断の責めを回避するために、再度違法判決を敢行したものであり、それらは裁判所として、してはならない判決であるから本来の再審裁判の趣旨に基き、訴を提起したのである。中断により十年裁判となっている。
勿論法第四二五条の規定は期間に関係なくいつでも訴を提起できるとした規定であり、いつ知ったか(期間の始期)は問題にならない。
第三、 再審上告人が昭和六二年一二月二四日提出した再審訴状二の判断遺脱の(一)(二)(三)の対象事実は本件昭和五一年(ワ)第九三号事件において攻撃方法として主張した事項ではない。
同事件の判決が特許庁の審決を無条件容認している点について判断遺脱を主張したものである。
前記(一)(二)(三)の事実は原審裁判において主張したものでないから本件終局判決を入手した時に知ったと即断すべきものではない。
又本件事件と直接関係のない事項であり、控訴して主張すべきことではない。
以上