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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)853号 判決 1966年11月18日

上告人

金玉仙

右訴訟代理人

被上告人

伊藤利次

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

上告人は金二万円を国庫に納付せよ。

理由

上告代理人甲の上告理由について。

一件記録によれば、上告人は、適式の呼出を受けながら第一、二審を通じて本件各口頭弁論期日に出頭せず、かつ答弁書その他の準備書面をも提出しなかつたことが認められるから、被上告人の主張事実について、自白したものとみなした原審の措置および判断は、相当である。

所論は、これと異なる事実または原審において主張しない事実を前提として、原判決を非難するものであり、採用することができない(なお論旨中には、被上告人が上告人の攻撃防禦方法の提出を妨げた旨の主張もあるが、これを認むべき事情は記録上窺われないから、この点の論旨も採用しがたい。)。

そして、一件記録に徴すれば、上告人は、第一審において、昭和三九年一二月八日の第一回口頭弁論期日から同四〇年一〇月二六日の第七回口頭弁論期日まで、前記第一回口頭弁論期日および同四〇年九月二八日の第六回口頭弁論期日を除き、すべて上告人の高血圧症を理由とする期日変更申請にもとづいて、弁論期日が延期され、同四〇年一二月一四日の第八回口頭弁論期日においても、上告人は、前同様の病気を理由とする期日変更申請をしたが、第一審は、被上告人の代理人に訴状を陳述させ、同日口頭弁論を終結して、同四一年一月二六日の第九回口頭弁論期日に判決を言い渡したこと、右第一審判決に対し、上告人は、控訴を申し立てるとともに、その控訴状には第一審において出頭できなかつたのは長期の病床にあつたためで上告人の主張および答弁などの機会を与えないで審理不十分のままでした第一審判決は失当である旨を記載していること、第二審は同四一年四月一三日第一回の口頭弁論期日を指定し、上告人を呼び出したが、上告人から口頭弁論期日の変更申請もでなかつたため、第二審は、上告人不出頭のまま、控訴状の陳述を擬制して、被上告人の代理人に第一審判決の事実摘示のとおり第一審の口頭弁論の結果などを陳述させたうえ、同日口頭弁論を終結して同四一年四月二七日の第二回口頭弁論期日で判決を言い渡したこと、なお、第二審は第二回口頭弁論期日(判決言渡期日)呼出状などを上告人に送達したが、上告人からなんらの書面の提出もなかつたことの諸事実が認められる。

右訴訟の経過および上告代理人甲名義の上告理由書中の上告理由の記載に徴すれば、本件上告は、上告人が訴訟の完結を遅延させる目的のみをもつてこれを提起したものと認めることができるから、当裁判所は、上告人に対し本件上告状に貼用すべき印紙額の一〇倍以内である金二万円を国庫に納付すべきことを命ずるのを相当とする。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、三九六条、三八四条の二に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

上告代理人甲の上告理由

原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の違背がある、すなわち、被告の本件土地の占有は正当な権原に基くものである。原告は昭和三五年九月二四日訴外盧述容に対し本件土地を賃貸し、同訴外人は本件土地上に本件建物建築所有するに至つたが、昭和三六年四月二八日訴外金照夫に本件建物を賃借権と共に原告の承諾を得て譲渡し、更に訴外金は昭和三八年六月七日被告に対し本件建物を賃借権と共に、原告の承諾を得て売渡し、被告は原告に対し訴外金を介して、名義書換料として金二〇万円及び地代一年分金三万六千円を支払つた。従つて被告は原告の承諾を得て本件土地を訴外金から転借したものであるから、正当の権原に基き本件土地を占有するに至つたものである。仮りに右が理由なしとするも、昭和四〇年一二月原告代理人弁護士横溝貞夫と被告との間に、訴外内田兼男こと金龍出(川崎市境町二六番地の四)の斡旋によつて和解が成立し被告は原告に対し、あらためて名義書換料金五〇万円、地代一ケ月坪当り(三・三平方メートル)金二〇円の割合によつて支払うこと、及び本件土地のうち四坪を原告に返還することとし、ここに賃貸借契約を締結した。よつて被告の本件土地占有は正当な権原に基くものである。然るに被告において、同月名義書換料金の内二〇万円を原告代理人弁護士に対し交付しようとした処、「暫く預つておけ」と申し向け訴訟を進行し、「いずれ話をつけてやる」と被告に申し向け被告をして口頭弁論期日に欠席させ、遂に原判決言渡となつたわけである。被告は結局原告側の詐術により、攻撃又は防禦の提出を妨げられ、勝訴の判決を逸したもので、右は公序良俗に反する法令違背があるものと云わなければならない。よつて原判決は破棄されるべきである。

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