大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)1417号 判決 1968年9月27日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人下向井貞一の上告理由について。

旧民法(昭和二二年法律二二二号による改正前のもの)九八八条による女戸主の財産留保は、入夫との合意のもとになされたときは、確定日付けがなくとも、当事者間においては効力があるものと解すべきである(当裁判所昭和二七年(オ)第三六八号同二九年一二月二四日第三小法廷判決、民集八巻一二号二二七一頁参照)が、第三者に対する関係においては、確定日付けのある証書によつてのみ、その効力を生ずるものと解すべく、原判決(その引用する一審判決を含む)の確定するところによれば、昭和五年一〇月一三日、鈴木頼三は上告人と入夫婚姻をしたが、その際、財産留保に関する確定日付けのある証書を作成しなかつたというのであるから、たとえ所論のように、右両者間に財産留保の合意がなされたとしても、第三者たる被上告人に対する関係においては、なんらその効力を生じないものといわなければならない。

したがつて、上告人がその所有権に基づいて本件不動産に存する被上告会社の登記の抹消を求める本訴請求は、失当とするほかなく、本件の事実関係のもとにおいては、被上告会社が上告人の所有権を否認することが、所論禁反言の法理および信義則に反するものとは認められない。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例