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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)1394号 判決 1965年7月16日

上告人 島根県知事

訴訟代理人 別所忠次郎

被上告人 福田政寛

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人別所忠次郎の上告理由一ないし四について。

原判決は、被上告人と訴外加田亀吉との間の本件農地の使用貸借の解約の後右加田が被上告人の右土地の返還の請求について諾否を曖昧にしたまま耕作を続けたのに対し被上告人、おいて、昭和二九年暮帰省した際加田がなお耕作していることを知り、訴外水野幸太郎を通じて速かに土地を返還するよう申し入れた事実および昭和三二年初項大田市農業委員会委員戸構貞太郎が右土地返還の紛争について和解を試みた際にも加田の代理人として出頭したその子幸吉に対し強く返還を求めた事実を認定し、これら事実に基づき、加田の本件農地における耕作は、本件買収当時には平穏に行なわれていたものと認めがたく、従つて本件農地は、農地法六条五項にいわゆる準小作地に該当しないものと判断したのである。その判示の趣旨は、前叙の事実により、本件農地の使用貸借と判断したのの解約後被上告人は一貫してその土地返還の要求を持続していたのであり、加田もまた右の要求を無視して耕作を継続し、かかる状態において本件買収手続のなされたことを推認したものであることは明らかであり、その認定に違法と目すべき点は存しない。また土地所有者の許容によつてはじめられた耕作であつても、前叙のように、所有者から正当に土地返還を求められたのにかかわらず応じない状態にあるときは、これを農地法六条五項にいう「平穏」を欠く耕作と解するのを妨げない(昭和三七年一月三〇日第三小法廷判決、民集一六巻一号一三〇頁参照。論旨引用の裁判例は適切でない)。してみると、本件買収手続開始の公示および通知の当時はもちろん、その前後にわたつて一貫して加田が被上告人の土地返還の請求に応ぜず平穏を欠く耕作を継続していたことは、原判決において判定されているのであるから、同判決に所論の違法は認めがたい。論旨は、被上告人が加田に長期にわたり本件農地を貸与して平穏かつ公然耕作せしめていたものとし、農地法の趣旨に照し本件買収を正当のもののごとく主張するが、原判決認定の事実関係のもとにおいて、到底右六条五項の適用を肯認するに足りない。論旨はいずれも採用しがたい。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおりである。

(裁判官 奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 域戸芳彦 石田和外)

上告理由書<省略>

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