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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(あ)467号 判決 1963年9月27日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人植田完治、同上田潤二郎の上告趣意第一、二点について。

所論は要するに、被告人が本件自動車を運転したのは、酔にまかせてたまたま運転したのであって、将来これを継続反復する意思をもって運転したのではないから、原判決がこれを「業務」と認定したのは事実を誤認し、ひいて法令の適用を誤ったものであり、右運転が「業務」であるとしても、業務上過失傷害罪における「業務」は、構成要件上の主要な事実であるから、かかる事実についての自白には補強証拠を要すると解するのが相当であり、原判決が「業務」の認定につき、被告人の供述又は供述記載のみによってなしたとしても、憲法三八条に違反しないと判示しているのは、憲法の解釈を誤ったものであるというのである。

しかし、所論前段は、単なる事実誤認、法令違反の主張であって、適法な上告理由とならないのみならず、被告人が将来継続反復の意思をもって運転した事実は、第一審判決挙示の証拠により明らかに認定できるのである。つぎに所論後段について判断するに、本件において、被告人の運転上の過失により本件傷害事故が発生した客観的事実が裏書される以上、被告人の右運転が将来継続反復の意思をもってなされたという事実を被告人の自白だけで認定しても、憲法三八条三項に違反しないことは、当裁判所大法廷判例(昭和二二年(れ)第一五三号同二三年六月九日大法廷判決、昭和二三年(れ)第一四二六号同二四年一〇月五日大法廷判決)の趣旨に照らして明らかである。従って原判決には何ら違法解釈の誤はなく、論旨は理由がない。

同第三点について。

所論は単なる量刑不当の主張であって適法な上告理由とならない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

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