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最高裁判所第二小法廷 昭和36年(オ)422号 判決 1963年6月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人土家健太郎の上告理由および同加藤定蔵の上告理由第一点、第二点について。

原判決(その引用する第一審判決を含む。)が確定した事実によると、上告人は秋田県能代市に本店を有する訴外東北木材株式会社の函館市における営業所である東木木工販売所(内地業者であることを一般に秘匿する目的でとくにこの名称を用いた。)の所長として、右営業所における裁判外の一切の行為(ただし、手形行為を除く。)をなす代理権を付与され、右会社に代つて同営業所の事業(従業員としては訴外小林秀市のほか女子店員二名)を監督すべき地位にあり、右小林秀市は、東北木材株式会社に雇傭され、同会社の右営業所所員として勤務し、被告の指揮監督のもとに同営業所における商品たる家具類の販売、集金、売上金の経理等の業務に従事し、手形振出の権限はなかつたけれども、右営業所の責任者たる上告人が本店の営業課長を兼ねていたので前記秋田県の本店所在地に居住して月に二、三度函館営業所に来るのみで函館市には常駐していなかつたため、右小林秀市が「東木木工販売所代表者加藤清」なるゴム印および加藤なる認印を預り、東木木工販売所代表者加藤清名義による株式会社北海道拓殖銀行地蔵町支店および株式会社北海道銀行函館支店の各預金口座に対する営業取引上の預金の出し入れ、右名義による小切手振出の権限をも任せられて右営業所の業務を担当している間に、前記保管中の上告人のゴム印および認印を冒用して、訴外古屋治と共謀のうえ、原判示のように本件各手形を偽造したというのであるから、右偽造行為は、東北木材株式会社の事業の執行(東木木工販売所なる名称が販売の便宜上用いられ、東北木材株式会社の営業所であることが一般に知られていなかつたとしても)につきなされたものというべきであり、また、このような事実関係のもとでは、上告人において右偽造による不法行為により被上告人らに被らしめた損害につき小林秀市の使用者である東北木材株式会社の代理監督者として民法七一五条二項による賠償の義務があるものとした原判示判断は、正当として是認すべきものである。論旨は、いずれも、独自の法律的見解に立脚して原判決を非難するにすぎず、またその援用挙示する大審院判例は、いずれも、原審の判断の妨げとなるものではない。論旨は、すべて採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介)

《当事者》

上告人 加藤 清

右訴訟代理人弁護士 土家健太郎 加藤定蔵

被上告人 黒田喜好

被上告人 富国商事株式会社

右代表者代表取締役 黒田喜好

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