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最高裁判所第二小法廷 昭和35年(オ)452号 判決 1962年10月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人土井一夫の上告理由第一の一について。

原判決の確定した事実によれば、上告人所有の本件建物は一棟二戸建であつて両戸の間は柱と壁で区切られているところ、被上告人は昭和四年一二月南側一戸を賃借し、昭和二〇年九月北側一戸を賃借したというのである。このような場合、本件建物が家屋台帳に一個の建物として記載され、二戸の合計面積が三二坪七合七勺であつても、各別個の賃貸借であるから、地代家賃統制令二三条二項三号に該当せず、依然同令の統制を受けるものと解するのが相当である。家賃通帳が一通にまとめられ、二戸一括して家賃が定められるに至つても、集金の便宜のための措置に過ぎないから、右二個の賃貸借が一個の賃貸借に更改されたものと認めることができない旨の原審の判断も肯認しうる。所論は、これと反対の見解に立脚して、原判決の法律上の判断に条理違反の違法があると主張するものであつて、採用しえない。

同第一の二について。

店舗ないし倉庫であるか否かは、建物の外形や構造によつて機械的に決定すべきものではなく、恒常的に店舗ないし倉庫として使用されているかどうかによつて決定さるべきところ、原判決は、所論の部分が恒常的に店舗ないし倉庫として使用されてきたものではないと認定したものであり、該認定は、その挙示する証拠関係に照して肯認できる。所論は、ひつきよう、原判決が適法にした証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、排斥を免れない。

同第一の三について。

甲第二号証に事業用部分十一坪と記載されていること所論のとおりであるが、作成者である京本善弥が如何なる根拠に基づいて事業用部分を認定したのか明らかでなく、結局、同人の意見を記載したものとみるの外はないから、原審が同号証を採用しなかつたのは肯認しえられる。論旨は、ひつきよう、原審が適法にした証拠の取捨を非難するに帰するから、採用しえない。

同第二について。

倉庫として使用しうべき構造を持つていても、恒常的に倉庫として使用しておらなければ、事業用部分とはいえないこと前述のとおりであるから、原判決に理由齟齬は認められない。所論は排斥を免れない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介)

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