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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(あ)2226号 決定 1959年2月09日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人落合修二の上告趣意は、量刑不当の主張であるが、被告人は自動車を利用する大規模の倉庫荒しを行って保釈中再び同様の大規模の窃盗を行ったものであって、原判決の刑が重いということはできない。

被告人の上告趣意は、憲法違反を主張する点もあるが結局刑法四五条の解釈適用を誤ったというに尽きる。刑法四五条後段が「或罪ニ付キ確定裁判アリタルトキハ止タ其罪ト其裁判確定前ニ犯シタル罪トヲ併合罪トス」と規定したのは、その前段が「確定裁判ヲ経サル数罪ヲ併合罪トス」と規定したのを受けて、併合罪となるのは確定裁判を経た罪とその裁判確定前に犯した罪即ち併合審判の可能性が原則として存在した罪についてであって、その後に犯した罪は併合罪とならないという趣旨を規定しただけであって、その処断刑をどのようにするかを定めたものではないと解するのを相当とする。そのような場合は刑法五〇条により未だ裁判を経ない罪だけが改めて審判され、確定裁判を経た罪について更に審判するものではない(昭和二四年(れ)一四〇四号同二五年三月一五日大法廷判決・刑集四巻三号三六六頁参照)。前の確定裁判の刑と新に審判された併合罪たる罪の刑との関係は、執行の面で調整されることになる(刑法五一条)。そして確定裁判を経ない罪が数個あって同時に審判すべき場合にあっては、刑法四五条前段が適用され、その処断刑は同四六条から四九条を適用して定められるべきであって、刑法四五条後段が適用されることによって直ちに同四六条から四九条が当然に適用されるものではないと解すべきである。従って本件所為につき刑法四五条後段のほか同前段をも適用した原判決は正当であって、所論のような違法は全く存しない。

以上のように所論は何れも刑訴四〇五条の上告理由に当らないし、また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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