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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)416号 判決 1958年3月07日

主文

原判決を破棄する。

本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人富田政儀の上告理由について。

論旨は違憲をいう点もあるが、結局判断遺脱の主張に帰する。

本件記録によれば、上告人が原審に提出した所論の準備書面には、論旨の指摘するとおり「上告人が陳述したものと看做された答弁書記載の自白は、内山良夫が訴外東一郎の刑法二四六条二項に該当する詐欺行為に因りなされた点において無効であり少くとも取消し得るものである」旨の記載があり、右準備書面は原審における昭和三〇年二月二一日の口頭弁論で陳述されていることは明白である。そして、右訴外人の「刑法二四六条二項に該当する詐欺行為」によりて自白するに至つた旨の主張は民訴四二〇条一項五号の事由を主張するものであると認められるから、もし、証拠上右主張事実が肯認されるならば、原審としては本件自白の効力を認むべきでなかつたものといわねばならぬ。(昭和一五年九月二一日大審院判決民集一九巻一六四四頁参照)しかるに、原判決の事実摘示には上告人の右主張についての記載があるものとは解し難く、また、判文の全趣旨に照しても、この点について判断を与えているものとは認め難いから原判決は上告人の右主張について判断遺脱の違法があり破棄を免れない。

よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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