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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)762号 判決 1956年7月06日

主文

原判決中「控訴人警察長が昭和二四年六月一二日被控訴人に対しなした停職の懲戒処分は無効であることを確認する」とある部分を除くその余の部分を破棄し、右に関する事件を福岡高等裁判所に差し戻す。

理由

(一)  上告理由第一点(イ)について。

原判決は、懲戒申立書に「規律違反の内容」として記載されている事項と懲戒委員会の審理期日呼出通知書に「申立事由」として記載されている事項とが同文であるところから、本件において、仮に規則どおりに予め懲戒申立書の写が上告人に送付されたとしても、審理期日呼出通知書に記載された事項以外のことを知り得なかつたはずであり、右呼出通知書の送付によつて懲戒申立書の写を送付するのと事実上同じ結果が得られたわけであるから、懲戒申立書の写の不送付は、本件懲戒処分を取り消すべき瑕疵とはならないとする。

しかし、懲戒申立書(乙第二号証)と審理期日呼出通知書(甲第一号証)とを対照してみると、前者においては、「規律違反の内容」の欄に、呼出通知書の「申立事由」の欄に記載されたものと同文の抽象的記載があるほか、さらに、「規律違反の年月日及び発見の事由」の欄に「昭和二五年二月一五日。二月一四日付新九州(新聞)に停職理由が署長の感情に依り一方的になされたため福岡法務局に提訴云々の記事に依る」旨の記載があり、懲戒申立の事由がいつそう具体的に記載されていることは明らかである。してみると、原審のいうように、呼出通知書の送付によつて懲戒申立書の写の送付と事実上同じ結果を得られたとはいい得ないわけである。ところで、山田町警察基本規程第九四条が懲戒委員会の審理開始前予め懲戒申立書の写を送付すべきことを定めた趣旨は、これにより被審人に予め自己がいかなる事由により懲戒を申し立てられたかを知らしめ、防御方法の準備をする機会を与えることにあり、この趣旨からすれば、懲戒申立書の写を送付しないで開始された審理の結果は、被審人(上告人)の同意がない限り委員会の判断の資料に供し得ないものと解さざるを得ない。そして、右同意のあつたことは、被上告人の主張しないところであるから、本件懲戒委員会の免職勧告の決議は違法であり、右勧告に基く本件懲戒処分もまた違法として取消を免れないものといわざるを得ない。

(二)  上告理由第一点(ロ)について。

原審は、懲戒委員会が審理期日の通知と右期日との間に所定の期間を置かなかつたことについて、上告人が審理の初めに、抗議した事実を認定しながら、しかし、上告人が「左程これを固執することなく該委員会の……審査の進行に応じた」ところから、右抗議は「後にこれを撤回したもの……と認めるのが相当である」とする。しかし、被審人の立場として、たとえ、この点の違法につき抗議したとしても、委員会が強いて審理を進行しようとする態度を示す限り、事実上、これに応ぜざるを得ず、あくまで審理を拒否すべきことを被審人に要求することは酷というべきであるから、原審の認定するような経緯で上告人が審理に応じたというだけでは、直ちに、抗議を撤回しまたは審理の進行を承認したと解すべきではない。かような審理の結果に基く勧告決議、従つて本件懲戒処分は、この点においても取消を免れないものと解すべきである。

よつて、その他の論旨については判断を省略し、民訴四〇七条に従い主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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