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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)13号 判決 1955年11月25日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告理由について。

国税徴収法に基く滞納処分によつて滞納者所有の建物の差押がなされその登記があつた後、所有者に許される建物の利用又は管理は、公売処分による徴収の目的を害しない範囲内に限られるべきものであるから、差押登記の後に、公売処分後まで継続する賃貸借をしても、公売処分により建物の所有権を取得した者に対抗できないのであつて、かように賃貸借自体が建物の所有権を取得した者に対抗し得ないものとせられる場合には、たとえ賃借人がすでに建物の引渡を受けていても、その賃貸借については借家法一条の適用はないものと解するのが相当である。従つて右と同趣旨の見解により、本件建物の滞納処分による差押登記の後上告人北川との間になされた賃貸借は、公売処分により建物の所有権を取得した被上告人に対抗し得ないものと解し、上告人北川の主張を排斥した原判決は正当であつて、論旨は理由がない。

その余の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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