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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)77号 判決 1951年6月01日

主文

原判決を破棄する。

本件を広島高等裁判所に差戻す。

理由

弁護人小野清一郎、同志方篤及び弁護人末国雅人の各上告趣意第一点について。

本件公訴事実に対し、原判決は挙示の各証拠によって「被告人は…坪井がその約束を果さなかったところからその弁償として金一万円を要求していたが遂に同年三月十七日頃坪井を前記アパートに呼びよせ岩井と共謀の上同人に対し「前から話をしている一万円の弁償金の中五千円を二十日以内に作って来いそれ迄の間服と靴を置いて行け」と要求し同人が之を拒絶するやその場において…交付させて之を喝取したものである」との事実を認定し被告人の所為に対し刑法六〇条第二四九条第一項を適用処断している。

しかし原判決の事実摘示及びその証拠によっては被告人が本件行為当時果して判示坪井に対し判示のような弁償金を要求する権利を有していたのか否か、仮にかかる権利を有していたとしても本件行為が該権利を行使する意思にでたものであるか否かを知ることができない。

もし被告人に判示弁償金を要求する権利があってその権利実行の為、本件行為にでたものでありしかもそれが権利行使の範囲内に属することであるとすれば被告人の本件所為は時に他の犯罪を構成することがあっても直ちに恐喝罪に問擬することはできない。

しかしまた、被告人が単に権利行使に籍口しあるいはこれに仮託して本件行為にでたものであるとすれば該権利の有無にかかわらず、被告人の本件所為は恐喝罪を構成するものといわなければならない。

さすれば敍上の諸点を明瞭ならしめた上でなければ直ちに被告人の本件所為を恐喝罪に問擬することはできない筋合であるにかかわらずこれを明かにしないで被告人を恐喝罪によって有罪と認めた原判決には畢竟審理不尽に基く理由不備の違法があるものといわなければならない。従って原判決は以上の点において既に破棄を免れ得ないから、爾余の上告趣意に対する説明を省略し、刑訴施行法第二条旧刑訴第四四七条第四四八条ノ二第一項により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見によるものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 谷村唯一郎)

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