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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)126号 判決 1951年4月13日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告訴訟代理人弁護士東本紀方、同佐伯静治、同小沢茂の上告理由第一点について。

裁判上の和解により建物を収去しその敷地たる土地を明渡すべき義務のある者から建物を借受け建物の敷地たる土地を占有する者は民訴二〇一条一項にいわゆる承継人と解するを相当とする、論旨は建物賃借人の敷地に対する占有は建物占有の効果であつて賃借人からその敷地の占有の引渡を受けこれを承継したがためではない、このことは賃貸人が賃借人に建物を引渡した後も依然建物所有者としてその敷地に対する占有を失わないのをみても極めて明瞭であると主張する、なるほど建物賃借人の敷地に対する占有が建物占有の結果であること及び賃貸人が建物所有者としてその敷地に対する占有を失わないことは所論のとおりであるが建物賃借人の敷地に対する占有は賃借人の敷地に対する占有と無関係に原始的に取得せられるものでなく、賃借人の敷地に対する占有に基づき取得せられるものであるから占有の関係からみると一種の承継があるとみることができるのであり賃借人が建物所有者としてその敷地に対する占有を失わない場合でもこの種の占有の承継を認めることを妨げるものではないのである、然らば原判決が上告人等は山崎弥太郎から本件建物を賃借居住することによつてその敷地を占有するものであるから上告人等が各空家であつた本件建物を賃借占有したとはいえその敷地に対する右山崎の占有を承継したものというべく従つて民訴二〇三条、二〇一条の規定により本件和解調書の効力は上告人両名が右調書の存在を知つていたか否かに係りなく承継人としての上告人等に及ぶものと解したことは正当であつて論旨はその理由がない。

同第二点について。

上告人は原審において「仮りに上告人等が債務者の承継人であるとしても民訴五一九条に所謂債務者の一般の承継人に該当しない、よつて同調書正本に上告人等を債務者の特定承継人として執行文が付与されたのは違法である」と主張したのである。そして民訴五一九条一項は「執行力アル正本ハ判決ニ表示シタル債権者ノ承継人ノ為ニ之ヲ付与シ又ハ判決ニ表示シタル債務者ノ一般ノ承継人ニ対シ之ヲ付与スルコトヲ得」と規定するから債務者の承継人については一般の承継人に対してのみ執行文を附与することが許され特定承継人に対しては許されないと解すべきであるようにみえるのである。しかし民訴二〇三条、二〇一条によつて和解調書の効力は債務者の特定承継人に及ぶのであり民訴四九七条の二の規定に基づき和解調書の効力の及ぶ特定承継人に対しても執行文の付与を請求し得るものと解せられるから民訴五一九条において債務者の承継人を一般の承継人に限るということも前示民訴二〇三条、二〇一条、四九七条の二等の規定に準拠して自ら判決の効力の及ぶ特定承継人を含む趣旨に修正して解釈されなければならないのである、然らば原判決が論旨摘録の如く判示して上告人の前記主張を排斥したことは正当であつて所論のような違法なく論旨は理由がない。

よつて民訴四〇一条、八九条、九五条により主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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