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最高裁判所第二小法廷 平成2年(オ)821号 判決 1990年10月29日

上告人 別所成紀

被上告人 小林亮誠

被上告人 源興院

右代表者代表役員 小林亮誠

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

上告理由第一ないし第四の論旨は、要するに、寺院「源興院」の寺族である上告人は、同寺院の住職の選任手続に連署を求められる者であるから右住職の選任権を有し、又は右住職となる権利を有するところ、被上告法人の代表役員には右住職が就任することになっているので、上告人は右代表役員の選任権を有し、また右代表役員に就任する権利を有することになるが、被上告人小林は、認証期間を三年とする同寺院の兼務住職に選任されたことによって右代表役員に就任した者であるから、右兼務住職の認証期間の経過によって右代表役員たる地位も任期満了により失ったものであるのにかかわらず、なお右代表役員であると僭称しているが故に、上告人は、右代表役員の選任権又は自ら右代表役員となる権利を害されているので、被上告人小林が右代表役員の地位を有しないことの確認を求めるについて、確認の利益を有するというものである。

しかし、確認の訴えにおけるいわゆる確認の利益は、判決をもって法律関係の存否を確定することが、その法律関係に関する法律上の紛争を解決し、当事者の法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められるものである。ところで、宗教上の地位である寺院の住職と法律上の地位である宗教法人の代表役員とは異なる地位であり、右代表役員には右住職が就任することになっているとしても、右代表役員たる地位の存否を確認することにより右住職たる地位の存否が確定されるものではないのであるから、被上告人小林が被上告法人の代表役員でないことを確認しても、上告人主張に係る前記寺院の住職の選任権又は右住職となる権利が確定されるものではなく、ひいては、右各権利に基づくと上告人の主張するところの被上告法人の代表役員の選任権又は代表役員に就任する権利に関する紛争が解決される関係にはないのである。したがって、本件確認の訴えを却下した原審の判断は、結論において正当であって、所論の違法はない。

論旨は、異なる地位である住職と代表役員とを同一視した上、これらを区別して論ずる原判決を論難するものである。

また、その余の論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎないから、論旨は採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤島昭 裁判官 香川保一 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平)

上告人の上告理由<省略>

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