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最高裁判所第三小法廷 昭和63年(行ツ)107号 決定 1990年4月17日

広島市中区千田町一丁目四番一五号

上告人

中道秋夫

右訴訟代理人弁護士

橋本保雄

広島市中区加古町九番一号

被上告人

広島西税務署長

藤井清治

右指定代理人

末原雅人

右当事者間の広島高等裁判所昭和五九年(行コ)第二号所得税再更正処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和六三年三月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から一部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人橋本保雄の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立つて若しくは原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七法、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 園部逸夫 裁判官 安岡満彦 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 佐藤庄市郎)

(昭和六三年(行ツ)第一〇七号、上告人 中道秋夫)

上告代理人橋本保雄の上告理由

第一点 原判決には重大な理由齟齬がある。

本件譲渡資産は事業用資産である。原判決は、事業用資産の買換の当否については理由齟齬の違法がある。すなわち、

一、原判決では、譲渡益の二分の一に当る額の更正処分を取消した。これは、二分の一に就いては、事業用資産の買換を是認し、その余の二分の一は否認したものと解される。これは、上告人が旧建物(居住用と事務所部分、各それぞれ二分の一)を取り壊して譲渡したから、一方、居住用資産ではなくなつたとして、一千万円までの控除(措置法三五条)を否認し、他方、事業用資産の買換否認については、従前居住用であつたとするのであろうか。

しかし、上告人は昭和四六年八月三日本件敷地上にあつた事務所部分と居住部分の建物全部を撤去して更地としたものであるが、この時点で、居住用の敷地はなくなつた。引き続き、同日から新ビルの建築に着手したのであるから、従前居住用の敷地であつたものは事業の用に供したこととなる。(租税特別措置法通達三七-二三1イ)しかも、右ビルは総面積一三三四・七一平方米であり、八階居住用部分は六九・六八平方米(五・二二%)であり、九〇%以上が事業用建物であるから(一九丁末尾記述)本件敷地は全部が八月三日以降においては、事業用資産とみるべきである。(租税特別法通達三七-四)従つて、譲渡資産は全部が事業用資産である。原判決は、たな卸資産でもなく、居住用でもないと認定しておきながら、(従つて、論理的帰結として、事業用資産となる)かかる場合に租税特別措置法第三七条第一項を適用しE更正処分全てを取り消すべきであるにもかかわらず、前記のとおり、譲渡益の二分の一に当たる額の更正処分取り消しにとどめたのは理由齟齬の違法がある。

二、次に、なお、原判決においては、譲渡資産の全てが固定資産であると認めて居ながら、被上告人らのなした、E更正処分は、その一段階において、すべて、たな卸資産と認定しているのであるから、原判決とは全面的に背反する。よつて、その一部を取り消し、その余を取り消さないことは理由齟齬の違法がある。

第二点 原判決には判決に影響を及ぼすべき法令違背がある。

一、E更正処分は判断を誤り、譲渡資産はすべて、たな卸資産に準ず資産であるとし、(事業用資産当否の基本条件である判定を誤り)措置法三七条一項の適用を否認すると言う法令違背を犯したが、さらに、課税にあたつても、雑所得または、普通所得にあたる、たな卸資産としながら、その違法認定の売却益に対し、長期譲渡所得税率を適用し、さらに、所得税法三三条に違反するという二重の違反をした。

また、償却計算の脱落を治癒するため、除斥期間を経過した後に償却更正処分をしたが、これは、国税通則法七〇条に違反するものである。

なんら法的根拠をあげず、これらを容認した原判決は違法である。

本来、E更正処分はその根幹に重大な過誤があるから、すべて、取り消すべきである。

(最小判昭四八・四・二六)

二、原判決は、国税通則法の解釈を誤る違法がある。

<1> 原判決も認めるごとく、二六条は申告の課税標準または、税額の過大過少を変更するものであつて、自己の判断の誤を更正処分によつて変更出来る法的根拠は無い。それのみで無く、B、C両更正処分で認めておつた一部事業用資産の買換をD更正処分では否認し、自己判断を正反対に変更したことは、一貫性を欠き、権限を乱用し、且つ、信義則に反する重大なる違法行為である。原判決はかかる違法な処分を看過した違法がある。

<2> 国税通則法八三条三項は異議審理庁の決定に対する制限規であり、税務署長が行う再更正、又は、決定に適用されるものではないとしたことは、法の解釈を甚だしく曲げるものである。

法八一条<2>異議申立がされている税務署とある如く、八一条から八三条で明らかな通り、税務署も異議を申し立て、これが棄却された後、国税不服審判所に審査請求できるのであつて、原判決は極めて初歩的な誤をおかしている。

尚、更正処分について法第二六条に規定してあり、異議申立後の不利益処分禁止は八三条で規定してある。異議申立後(第一回異議申立 四八・一一)にしたD更正処分以降は全部不利益処分に当たり、これを支持した原判決は違法である。

第三点 原判決には審理不盡の違法がある。

原判決はE更正決定は上告人に有利な効果をもたらす処分であるから、その取り消しを求める訴えの利益はないとしているが、審理不盡(事実誤認)である。

本来、このE更正処分は事業用資産の買換を認めない誤つた処分である事は既に、立証したところであるが、事業用の資産の買換を認めた場合は零となる所得額にも拘らず違法に決定した額を少しばかり減額したからと言つても、上告人の利益にはならない。また、利益処分であつても、五年の除斥期間経過後にできる法的根拠はないのに、原判決は、国税通則法七〇条に反する違法をおかしている。(利益処分であれば、五年経過後許される規定はない)

付言

原判決二九丁表の三所得金額欄で不動産所得申告額金二一四万〇六五〇について、更正の請求の際、本件ビル賃借部分の昭和四七年分の減額償却費を金一四万四七三八円と改め、これを前提に右不動産所得を金二〇七万九四一二円と算出し直して申告したとあるが、右を計算すると金一九九万六九一二円となることからみても、わかるとおり、原判決及び数額は間違いだらけで審理不盡を証し得るであろう。

以上、いずれの点からみても原判決は違法であつて破棄さるべきである。

以上

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