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最高裁判所第三小法廷 昭和62年(あ)498号 判決 1990年4月17日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人遠藤誠の上告趣意のうち、憲法三六条違反をいう点は、死刑がその執行方法を含め憲法に違反しないことは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・刑集二巻三号一九一頁、昭和二六年(れ)第二五一八号同三〇年四月六日大法廷判決・刑集九巻四号六六三頁)とするところであるから、理由がない。その余は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

被告人本人の上告趣意のうち、現行の死刑制度につき憲法九条、一三条、一四条、三六条違反をいう点が理由のないことは、当裁判所の判例(前記各大法廷判決及び昭和二四年新(れ)第三三五号同二六年四月一八日大法廷判決・刑集五巻五号九二三頁)の趣旨に徴し明らかであり、その余の違憲をいう点は、原判決に対する論難ではなく、判例違反をいう点は、所論引用の各判例はいずれも事案を異にし本件に適切でなく、その余は、すべて単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

また、記録を精査しても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない(本件は、被告人が米軍基地内でけん銃を窃取し、これを使用して、わずか一か月足らずの間に、東京、京都、函館、名古屋の各地で何ら落ち度のない警備員二名及びタクシー運転手二名を射殺し、右タクシー運転手から売上金等を強取し、更にその約五か月後には、右けん銃を使用して、都内で強盗殺人未遂事件を起こしたという事案である。その犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響等に照らせば、被告人の生育歴、犯行時の年齢等を十分考慮しても、被告人の罪責は誠に重大であって、原判決が維持した第一審判決の死刑の科刑は、当裁判所もこれを肯認せざるをえない。)。

よって、同法四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

検察官逢坂貞夫 公判出席

(裁判長裁判官 安岡滿彦 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 園部逸夫)

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