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最高裁判所第三小法廷 昭和60年(あ)215号 判決 1990年10月16日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人伊藤まゆ、同幣原廣、同小川原優之、同土田五十二の上告趣意のうち、被告人の自白に関して憲法三八条二項違反、判例違反をいう点は、記録によると、被告人の自白の任意性を疑うべき証跡はないとした原判断は相当であるから、所論はその前提を欠き、その余は、憲法三一条違反、判例違反をいう点を含め、その実質はすべて事実誤認、単なる法令違反の主張であり、被告人本人の上告趣意は、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

また、所論(弁護人宮本智の弁論を含む。)にかんがみ記録を精査しても、同法四一一条を適用すべきものとは認められない(第一審判決を維持した原判決の事実認定は正当であると認められる。また、本件は、金策のため乙川二郎方を訪れた被告人が、話のもつれから激情の余り、乙川二郎(五三歳)のほか、入浴中の妻春子(四九歳)及び二階にいた長女夏子(一七歳)を鋭利な刃物で次々に殺害した事案である。犯行の態様はすこぶる残虐で、結果は重大であり、遺族に与えた影響には極めて深刻なものがあることなどに照らすときは、被告人の刑責はまことに重大というほかなく、原判決の維持した第一審判決の科刑は、やむをえないものとして当裁判所もこれを是認せざるをえない。)。

よって、同法四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 園部逸夫 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)

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