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最高裁判所第三小法廷 昭和47年(オ)248号 判決 1975年2月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉田士郎、同山代積の上告理由第一点の一、二、第二点について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第一点の三について。

原審の適法に確定するところによれば、本件建物は、おそくとも昭和二四、五年ころまでに建てられた作業場兼資材置場用の建物で、その構造も、丸太を素掘で土に立て、その上にたる木を置き、野地板を打ち、木端を敷いて屋根を葺いた簡素なものであつたが、長年の風雪や移築等を経たことにより、昭和四二年三月ころには、屋根の木端はすべて損耗して全面的に葺き替えねばならなくなり、骨組みである丸太の損傷もはげしく、特に土と接している根元部分は腐触して自ら立つて他を支える柱としての効用を失ない、古材による添木をしたりぬき板をわたしたり一部の柱を取り替えるなどしてかろうじて倒壊を免れている状況で、いつ倒壊するかわからない危険な状態となつていたというのであり、右の事実関係に徴すれば、本件建物は昭和四二年三月ころ既に朽廃に達していたとする原審の判断は、正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 高辻正己)

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