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最高裁判所第三小法廷 昭和45年(オ)1018号 判決 1972年2月22日

上告人

選定当事者奥田常照

被上告人

加藤茂枝

被上告人

丸八合板株式会社

右代表者

加藤久豊

右両名代理人

田中一男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする

理由

上告人の上告理由第一点について。

借地権の消滅前に建物が滅失した場合において、土地所有者が借地権者の建物の再築に対し遅滞なく異議を述べたときには、借地法七条による更新の規定の適用がなく、借地権は、残存期間の満了によつて消滅するのであるが、その場合においても、同法六条による更新の規定が適用されるのであつて、土地所有者が同条所定の異議を述べたとしても、地上に建物があるときは、同条二項、同法四条一項但書所定の正当の事由の存しないかぎり、借地契約が更新されるとした原審の判断は、正当として首肯することができる。そして、原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、訴外亡奥田きくが、本件土地の所有者として、所論の建物の再築に対し遅滞なく異議を述べた事実を考慮に入れても、上告人がした本件各賃貸借の更新を拒絶する旨の異議につき、前記の正当の事由があるとはいえないとした原審の判断も、また、正当として是認するに足りる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実を前提とするか、独自の見解に基づき原判決を攻撃するものであつて、採用することができない。

同第二点について。

借地法二条一項所定の存続期間を有する借地権につき、借地権の消滅前に建物が滅失し、借地権者が建物を再築し、土地所有者が遅滞なく異議を述べた場合において、残存期間の満了前に右滅失建物の朽廃すべかりし時期が到来したときは、借地権は、その時期において消滅するものと解すべきことは、所論のとおりであるが(最高裁昭和四一年(オ)第三〇〇号同四二年九月二一日第一小法廷判決民集二一巻七号一八五二頁参照)、前記の場合において、残存期間の満了前に右滅失建物の朽廃すべかりし時期が到来することなく、残存期間の満了に伴い同法六条による更新があつた後に、右滅失建物の朽廃すべかりし時期が到来したときには、更新後の借地権はこれによつて消滅するものではないと解するのが相当である。すなわち、一たん借地契約が更新された以上は、更新後の借地権は、現実には、右滅失建物ではなく、再築された建物を保持するために設定されたものとみなされるのであり、更新後の借地権の存続期間は、当該借地権に基づき存置される建物のために保障される必要が存するのであるから、同法六条一項後段、五条一項後段によつて準用される二条一項但書にいう建物は、更新後の借地権に基づき存置される建物、すなわち、右の場合においては再築された建物を指称するものと解すべきであるからである。建物の再築に対し土地所有者が異議を述べた事情や滅失建物の朽廃すべかりし時期等は、借地法六条による更新につき土地所有者の述べた異議の正当の事由の存否を判断するに際して考慮されるべきことがらであつて、前記のように解したところで、論旨のいうように借地権者が合理的な限度をこえてほしいままに借地権の存続期間を延長することができるわけではなく、また、土地所有者のみがいたずらに不利益を強いられるわけでもない。

次に、所論の鑑定があながち不可能の事項にわたるものとはいいがたいことは、所論のとおりであるが、本件記録に徴し、本件訴訟の経緯に鑑みれば、右鑑定の申出を採用しなかつた原審の措置をもつて違法とすることはできず、また、口頭弁論を再開すると否とは裁判所の専権事項であり、裁判所が弁論の再開を命じなかつたため、当事者が証拠を提出できなかつたとしても、これをもつて違法の措置とすることができないことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和二三年(オ)第七号同年四月一七日第二小法廷判決民集二巻四号一〇四頁、同年(オ)第五八号同年一一月二五日第一小法廷判決民集二巻一二号四二二頁参照)。さらに、建物の朽廃時期の立証責任に関する上告人の主張も、独自の見解であつて理由がない。

原判決に所論の違法はなく、論旨は、いずれも採用することができない。

同第三点および第四点について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、右認定判断の過程に所論の違法は存しない。そして、原審の確定した事実関係のもとにおいては、催告を要しないで解除することができる旨の特約があつたとすることはできず、所論の催告および解除がその効力を生じないとした原審の判断は、正当として首肯することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権にに属する証拠の取捨、事実の認定を非難するか、独自の見解に基づき原判決を攻撃するものであつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(天野武一 田中二郎 下村三郎 関根小郷 坂本吉勝)

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