大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)1243号 判決 1969年3月25日

上告人

森川株式会社

被上告人

富士繊維株式会社

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由一ないし三について。

上告人が被上告人に売り渡した繊維製品の返品については、当初特段の期限が定められず、被上告人に売り渡された後三、四カ月、おそいときには半年以上も経つてから返品がされ、上告人がこのような返品を異議なく受け取つていたものであること、上告人は昭和四一年一一月末頃事実上倒産し、そのため、返品につき、その後に売り渡される品物の代金との差引で決済することができなくなつたので、昭和四一年一二月二日および七日協議の結果、同年四月一日以後売渡しの物についても、被上告人が返品した場合には、上告人の有する品代金額から差し引くことができることとし、右返品のできる期限については特に定めなかつたこと、上告人から被上告人に売り渡されたが、また被上告人の手許にあつて消費者に売れていない品物については、同年の年末の販売好調時を利用してできるだけ被上告人が売却換金し、残金を返品として上告人が受けいれる旨の暗黙の了解が上告人と被上告人との間にされたこと、ところが、上告人は昭和四二年一月一二日付で被上告人に対し、これまでの慣習による返品、支払期限は所定の期限を相当徒過しているとして全部の金員の支払を求めたこと、その直後である同月一五日被上告人が金四一九万九四〇円相当分の品物を返品のため日本通運株式会社をとおして提供したところ、上告人がこの受領を拒絶したことは原判決(その引用する第一審判決を含む。)挙示の証拠関係に照らして首肯できる。そうとすれば、被上告人のした返品は、右上告人の全額の金員の支払請求の意意表示にもかかわらず、適法にされたものというべきであり、かつ、この返品が信義則に反するものとはいえない。したがつて、一被上告人には右返品分に相当する代金額の支払義務はないものといわなければならず、これと同趣旨の原判決の判断は相当である。よつて、原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(田中二郎 下村三郎 松本正雄 飯村義美 関根小郷)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例