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最高裁判所第三小法廷 昭和43年(し)100号 決定 1969年3月18日

決定

申立人 東京地方検察庁検事正代理次席検事

高橋正八

申立人 警視庁公安部公安第一課司法警察員警部

佐藤英秀

被疑者阿部博幸に対する騒擾、建造物侵入、威力業務妨害、公務執行妨害被疑事件について、国学院大学映画研究会代表者肥田進の申立により昭和四三年一一月二二日東京地方裁判所がした右佐藤英秀の差押にかかる目録番号四の一六ミリフイルムに対する差押処分を取り消す裁判に対し、右申立人両名から特別抗告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

検察官の抗告趣意第一点は、憲法三五条、一二条違反をいうが、その実質は、単なる訴訟法違反の主張であり、第二点は、単なる訴訟法違反の主張であり(刑訴訟二一八条一項によると、検察官もしくは検察事務官または司法警察職員は「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」に差押をすることができるのであるから、検察官等のした差押に対する処分に対して、同法四三〇条の規定により不服の申立を受けた裁判所は、差押の必要性の有無についても審査することができるものと解するのが相当である。そして、差押は「証拠物または没収すべき物と思料するもの」について行なわれることは、刑訴法二二二条一項により準用される同法九九条一項に規定するところであり、差押物が証拠物または没収すべき物と思料されるものである場合においては、差押の必要性が認められることが多いであろう。しかし、差押物が右のようなものである場合であつても、犯罪の態様、軽重、差押物の証拠としての価値、重要性、差押物が隠滅毀損されるおそれの有無、差押によつて受ける被差押者の不利益の程度その他諸般の事情に照らし明らかに差押の必要がないと認められるときにまで、差押を是認しなければならない理由はない。したがつて、原裁判所が差押の必要性について審査できることを前提として差押処分の当否を判断したことは何ら違法でない。)、第三点は、事実誤認の主張であつて、いずれも抗告適法の理由とならない。

司法警察員の抗告趣意について。

司法警察職員は、事件を検察官に送致した後においては、当該事件につき司法警察職員がした押収に関する処分を取り消しまたは変更する裁判に対して抗告を申し立てることができないものと解すべきである。したがつて、司法警察員の本件抗告の申立は不適法として棄却すべきものである。

よつて、刑訴法四三六条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。(下村三郎 田中二郎 松本正雄 飯村義美)

特別抗告申立書<省略>(本誌二二八号二五五頁以下に掲載)

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