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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)253号 判決 1962年9月18日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人盛川康の上告理由第一点について。

上告会社が訴外大村重吉との間で現在被上告人所有の本件土地建物について賃貸借契約を締結した時期は昭和二九年七月初め頃である旨の原審の認定は、証拠関係に照し、肯認しえないことはない。所論は、原判決を正解しないで、原審の適法にした証拠の取捨判断ないし事実の認定を非難するに帰するから、採用できない。

同第二点について。

被上告人が訴状において所論の請求をしたことおよび昭和三三年一〇月六日の本件一審口頭弁論期日に、所論のとおり、請求の減縮をしたことは、記録上、明らかである。

しかし、建物の明渡および建物の収去ならびにその各建物の敷地である土地の明渡を求め、かつ、右建物および敷地の明渡ずみに至るまでの損害金の支払いを求める場合に、建物の使用による損害金と敷地の使用による損害金とを区分して請求する必要のないことは自明の理であり、原審が、上告会社の自陳により、本件土地、建物の使用による損害金は少なくとも一箇月金二万円であるとしたのは、相当である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原判決を正解せず、独自の見解に立つてこれを攻撃するにすぎないから、採用できない。

同第三点について。

所論引用の原判示は、民訴六四四条の法意に照し、正当である。所論は、右と異なつた見解を前提とし、仮差押の目的物件について賃貸借契約が成立した場合における賃貸人と賃借人との間の内部関係について論議し、原判決を攻撃しているにすぎない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するに帰するから、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐)

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