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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)277号 判決 1958年6月10日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人等代理人岡沢完治の上告理由第一点について。

所論は違憲をいうけれども、原判決は、上告人徳重良夫ほか原判示の一五二名が居住してここに住所を有する大阪府朋来住宅中判示六〇戸の存する地域(係争地域)が大東市に属せず、従つて、これらの者は同市の住民ではないとの事実を認定した、そして同市に合併前の住道町においては右地域が同町に属するものとしこれらの者を同町住民として判示基本選挙人名簿に登録しまた従来住民登録、戸籍、徴税等の行政事務を行つて来た事実は認められるがこれら行政事務の実際より本件係争地域が同町同市の区域に属すると推認することはできない旨判示し、もつて、同町同市がこれら登録その他の行政事務を行うについて右係争地域を同町同市に属するものと認め右一五三名をその住民と認めたのは事実の認定を誤まつたものであるとの趣旨を明らかにしたものであること、判文上明白である。してみれば、所論は、原判決が認定しなかつた事実を認定したものであるとし原判示にそわない主張をなしこれを前提として違憲、違法をいうもので前提を欠き採用することができない。

同第二点について。

所論は、右一五三名は大東市において住民登録法により登録されており、同市民であることが確証されているから、本件係争地域についての境界確定訴訟の判決により境界が確定されるまでは大東市民であると主張する。しかし、住民登録は住民の居住関係を公証する効力を持つけれども反証により登録と異る事実を認めることが許されないものではなく、原判決は、証拠によつて右地域は大東市の区域に属しないとの事実を認定し、右一五三名は同市の市民でないとしたのであるから、原判決には違法の点はない。論旨末段は判断遺脱をいうが、所論の点は原判決の当否に影響を及ぼさない。論旨は理由がない。

同第三点について。

第一は判決理由のくいちがいをいうが、大東市選挙管理委員会は選挙管理の立場から判示選挙につき判示一五三名が住民として選挙権を有するか否かを判断する前提として、これらの者の住居の存する本件係争地域が住道町大東市の区域に属するか否かを判断する必要あるときは、その境界について境界確定訴訟における確定判決のない以上、同町市もしくはその長が各種行政処分をなすに当りこの係争地域を同町市の一部と認定したことには必ずしも拘束されるものではないから、原判決の所論の説示は相当である。原判決によれば、第一点で説示したように、右一五三名を住道町大東市の住民として権利義務を認めた住民登録、選挙人名簿登録、徴税その他の行政事務は事実を誤認して違法に行われたということになるのであり、従つて同市選挙管理委員会が右一五三名に投票させなかつたのは違法とはいえない。原判示は何ら理由のくいちがいはない。

第二は当選無効の請求を排斥したことの違法をいうが、本件係争地域が大東市に属しないことが認定された以上右一五三名がその住民でなく本件選挙につき投票させられなかつたことは当然であつて当選の効力にも影響しないこというまでもない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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